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Indonesia インドネシア

日系企業のインドネシア進出状況2019

【2019年9月25日】公開

インドネシアは、人口2億6,000万人強と、世界第4位を誇り、国民の85%以上がイスラム教を信仰しています。
2070年まで人口が増加、生産年齢人口も2055年まで増えるとの見通しがあり、非常に魅力的なマーケットです。

ただ、期待されていた経済成長は、近年5%台前半に鈍化しており、ジョコ政権が掲げた「7%の経済成長を実現」の公約は達成できていません。
こうしたなか、現政権は、さらなるインフラ整備を進めています。また、2018年には『Making Indonesia 4.0』を発表しました。
輸出競争力のある製造業を育成して、純輸出によるGDP貢献度10%の実現を掲げています。



日系企業のインドネシア進出状況
2018年に、日本とインドネシアは国交樹立60周年を迎えました。
日系企業は、2019年現在、約1,500社が進出しています。

インドネシアの日系企業進出の歴史を紐解くと、製造業の動きが特に際立っています。
1973年にトヨタが進出し、1977年にインドネシア初のファミリーカー「KIJANG」が誕生。
以後、続々と日系自動車メーカーが進出し、ジャカルタ周辺には、自動車やバイク向けの部品製造の工業団地が形成されました。

自動車関連では、日系企業以外に、中国、韓国、ドイツ勢も積極的に進出しています。
中国メーカーでは、Wuling (上海通用五菱)とDFSK(東風小康汽車)が、2017年に操業を開始しており、インドネシアで売れ筋のMPV(3列シート7人乗りのミニバン)を中心に、攻勢をかけています。
ただ、2018年の実績をみると、日本ブランドのシェアは97.5%と圧倒的で、確固たる地位を築いています。

自動車以外でも、あらゆる業界からインドネシアへの進出が進んでいます。

食品業界では、ヤクルト、グリコ、日清食品、キューピー、雪印メグミルクなどが進出しており、現地スーパーでも見慣れた商品を多く手に入れることができます。

1975年に、いち早く現地法人を設立した大塚製薬は、1989年からポカリスエット缶の販売を開始。
はじめはなかなか定着しませんでしたが、病院での無償提供や小さな屋台の販売網を獲得するなどの地道な活動を経て、現在はどこでも見かける商品となりました。
大塚製薬主催のマラソン大会も現地で人気があり、世代を問わず愛されるブランドとなっています。

インフラ業界でも日本企業の動きが目立ちます。
2019年5月、インドネシア政府は、インフラ計画として、2020年から2024年までに、記録的な5,957兆ルピア(4,120億ドル)の投資の必要性を掲げました。
その内訳は、交通網(60%)、エネルギー(17%)、用水路(10%)、通信(8%)、給水・下水(5%)となっています。

このように今後も旺盛なインフラ投資計画が見込めるなか、道路整備では2014年にNEXCO 西日本および JEXWAY(日本高速道路インターナショナル株式会社)が、インドネシア共和国における道路PPP事業に参入を発表しました。

鉄道では、首都ジャカルタから第2都市のスラバヤまでの特急専用線路、ジャワ島横断鉄道に関して同国と日本で協力し、2020年の着工を目指して計画が動き出しています。

ソフトバンクグループも、2019年7月に出資先の配車大手Grab(グラブ/シンガポール)を通じて、20億ドル(約2,160億円)を投資すると発表するなど、動きが活発です。

エネルギー分野では、双日ガスがGas-to-Powerプロジェクトを手掛け、エネルギー・インフラ事業分野へ参入、東芝は電力供給事業計画で再生可能エネルギーや離島向け自立型水素エネルギー供給システムを計画しています。



新たなビジネスチャンス
『Making Indonesia 4.0』のもと、インドネシア政府は、電気自動車(EV)などエコカー普及のための振興策を、近く発表する予定としています。
バッテリー駆動車の普及を加速させるため、インドネシアでニッケルの製錬所を建設するなど、電気自動車(EV)に使うリチウムイオン電池の材料への需要が高まっています。

住友金属鉱山は投資額2,000億円超とみられるニッケルの製錬所を建設、阪和興業は、インドネシア・スラウェシ島にて、合弁工場の建設工事を始めました。

これら以外にも、サービス業や電子マネー、化粧品などのコンシューマー関連商品・サービスはさらに伸びると予想されています。

インドネシアの電子マネーはGoPay、OVO、Danaなどがあり、首都のジャカルタ付近では、スーパーやコンビニはもちろん、屋台などでも電子マネー決済ができ、ほぼキャッシュレスの生活も不可能ではありません。

また、海外旅行も人気が出ています。
渡航先としては、格安航空券が多く、ビザが簡単に取得できるタイや香港が人気です。
RedDoorzやOYOなどのホテル予約サイトも人気があります。

化粧品業界も、人口の増加や経済発展により明るい兆しが出ています。
2017年のインドネシアの化粧品産業の市場規模は、前年の36兆ルピアから46.4兆ルピアに達するなど、非常の勢いのあるマーケットとなっています。
日本のSKⅡは以前から人気がありますが、若い世代の間では価格の安いインドネシア製の化粧品が人気です。
若い世代向けのプロモーションには、インスタグラムの活用や美容関連のインフルエンサーの起用が目立ちます。
ただし、進出の際には必ず、ハラル認証要件に関する考慮が必要であることは留意すべきでしょう。

現地社員の雇用の難しさには留意
インドネシアでは、外国人労働者1人に対して雇用すべきインドネシア人労働者の人数が一定数必要となるため、日系企業で働くインドネシア人が多くいます。
経営が安定していて、従業員を大切にする風土がある日系企業は人気があります。
しかし、中国企業、韓国企業、欧米企業も多く進出しており、待遇面の不満や、日本基準を押し付けることで、優秀なスタッフが転職してしまうこともあるようです。

さらに、近年の最低賃金の急騰は著しく、生産拠点としての魅力が薄れつつあります。
インドネシア中央統計庁によりよると、1997年から2016年までの間で平均毎年13%増加しています。
特に工業団地では、トヨタ工場がある西ジャワ・カラワン州で最低賃金が420万ルピアと、2019年現在で一番高いエリアとなっています。

労働組合の活動も活発であり、工場前での座り込みなど操業を妨害するような賃上げデモも頻繁に起こります。
団結力の強い、仲間思いのインドネシア人ですが、周囲に影響されやすい傾向もあるようです。
このほか、労働者の確保はできても、管理職の採用は一般的に困難です。また、一度雇用すると、退職金の支払いや労働移住省の承認など、簡単に解雇することができないような制約があり、慎重な採用が求められます。

有効な情報収集法
インドネシアのジャカルタには、多くの日本人コミュニティがあります。
初めて現地に赴任した人でも、情報を収集する機会を見つけられます。
新しく赴任した場合、まずは興味のある集まりに参加し、気の合う人を探すことをお勧めします。
慣れない海外勤務の中、日本人同士の交流は心強くもありますし、最新の現地情報を知る上でも重要な情報源となるでしょう。

■JJC(Jakarta Japanese Club)https://jjc.or.id
1970年に創設されたインドネシア最大の日本人コミュニティです。
日系企業を代表する組織(商工会議所・日本人会)として活動しています。

■Lifenesia(現地情報が掲載されたフリーペーパー)https://lifenesia.com/community/
フリーペーパーには、業界別の集まり、世代別の集まり、趣味の集まり、出身大学の集まりの情報も掲載されています。
該当する集まりに参加することで、インドネシアにおける業界の情報や、現地の経験談を聞くことができます。

インドネシアにおける日系製造業等の動向と今後の予測(2019)
引き続き中間層人口が増えるなかで、インドネシア経済は、特に内需を中心に堅調な推移が続くと見られています。

2019年4月の大統領選挙でジョコ大統領が再選し、製造業も含めた国内外の投資を呼び込む計画を発表しました。

2019年8月には、同国の首都を、現在のジャワ島西部のジャカルタから、カリマンタン島(ボルネオ島)の東カリマンタン州に移転させる計画が公表されました。
移転費用は466兆ルピアで、移転にともなって大規模なインフラ整備が必要とされており、開発が遅れている地域を活性させる起爆剤にしたいとの思惑もあるようです。

世界でも有数の人口を抱える国として、市場の堅調な伸びが見込めるインドネシア。
インフラ投資もさることながら、特に内需を中心にビジネスチャンスはさらに有望視されます。
ぜひ、インドネシアの情報をいち早くキャッチして、現地へ進出するタイミングを逃さないようにしていただければと思います。


 

参照:


ジェトロ『2018年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査(2018年12月)』

ジェトロ『外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用』

Bloomberg『MUFG:インドネシア・ダナモン銀に追加出資、連結子会社化』

Bloomberg『Indonesia Has a Grand $412 Billion Plan to Rebuild the Country』

日本経済新聞『住友鉱山、インドネシアにニッケル製錬所を建設へ』

日刊工業新聞『阪和興業、インドネシアに合弁工場 リチウム電池向け材生産』

Indonesia’s Cosmetics Industry: The Rise of Halal Cosmetics

日本道路会議『インドネシアにおける 道路インフラ投資の方向性』

インドネシア高速道路事業に参入します~ビンタロー スルポン ダマイ社の株式取得~

デロイトインドネシア『2018年インドネシア投資ガイド』

Digima『インドネシア経済の最新状況 | 第2期ジョコ政権が促進する外資誘致』

Indonesia picks Borneo island as site of new capital
 

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