【2020年2月13日】公開
マレーシアの人口は、2018年現在で3,239万人。
イスラム教を信仰している方が全人口の61.3%を占めますが、多民族・多宗教・多言語の国家として知られています。
2018年に前政権の汚職疑惑によって国民の後押しを受け、かつての首相マハティール氏が92歳で政権のトップに返り咲きました。
輸出立国型の発展モデルで経済成長率は1970年代から2000年まで約7%を記録しており、2020年も4.8%になるとの見通しが示されています。(2020年2月10日現在)
財務省では、中国で感染が拡大している新型コロナウイルスによる経済への影響を和らげるために、景気刺激策を提案しています。
日系企業のマレーシア進出の流れと展望
2018年9月時点で、日本企業の1,385社(内製造業691社、非製造業681社)がマレーシアに進出しています。
▼日本企業が進出しやすい風土
現首相のマハティール氏が提唱した「ルック・イースト政策(東方政策)」により、マレーシアと日本は30年以上の長い間友好的な協力体制を築いてきました。
これは、イギリス統治下の影響を色濃く受けた従来の姿勢を見直し、日本の集団主義や勤労倫理を学んで、過度の個人主義や道徳や倫理での荒廃につながる西欧的な価値観の修正のために実施されました。
人材教育の一環としてマレーシアから日本に多くの留学生が来日、日本からは製造業や建設業界が相次いでマレーシアに進出しました。
そのため、公用語はマレー語ですが、英語や中国語そしてタミール語だけではなく、日本語を話すことができる人も少なくありません。
また、諸外国よりも日本の風土やメンタリティそしてモラルなどを理解しており、ビジネスをスムーズに進めやすい環境です。
日本企業と現地企業の協業が盛ん
マレーシアで最大の事業領域を手掛けているのが「ベルジャヤ・グループ」です。
マレーシア最大のコンビニチェーンであるセブン・イレブンの運営を行っており、マツダとの合弁会社である自動車の組み立て・販売を行う「マツダ・マレーシア」など、幅広いグループ展開をしています。
また、銀行と不動産に強みを持つ「ホンリョン・グループ」では、二輪販売でYAMAHA、銀行でSMBCとの提携を行っています。
このように、マレーシアのローカル企業と日本企業の協業も多くみられます。
▼注目したい産業別トピックス
小売業では、マハティール首相の招請によって1984年にイオンがマレーシアに進出しています。
2019年11月には旗艦店を増床リニューアルし、アセアンで初のイオンスタイルである「イオンスタイルマルリSC」がグランドオープンしました。
イオンマレーシアでは、ターゲットを中国系マレーシア人の中流層とし、スーパーではなくデパートとしての位置づけです。
イスラム教の方々にも配慮をし、イスラムの教義に適合するHARAL食品も多く扱っています。
イオンマレーシアの2018年通期(1~12月)の決済は、売上高が前期比5.6%増の43億5,364万リンギ(約1,188億円)で、純利益も同0.1%増の1億512万リンギと好調です。
建築業では、2019年に多額の政府債務軽減のため大型公共事業の見直しが進められています。
しかし、産業の高付加価値化を推進するために、政府は「IBS工法」の普及を後押ししています。
マレーシアでは、日系ゼネコンと現地企業が連携を行って「IBS工法」を使用しているケースが多いです。
そのため、日系企業の技術供与や提携が期待されており、今後も活躍のフィールドが広がっているといえます。
政府はIT産業やイスラムの教えに則った金融取引をする「イスラム金融」を後押ししているほか、教育機関や医療分野も成長を続けています。
▼出資比率について
注意したいのが、「国家権益に関わる事業」です。
マレーシアでは、水やエネルギー・電気供給、防衛、保安、放送などの事業に対して、外資出資比率の上限を30%もしくは49%としています。
原則として民間企業に対する外国資本の出資比率は、所轄官庁の許認可やライセンスで付与された出資条件によって定められています。
製造業や流通・サービス業では、一部を除いて100%外国資本による出資が認められています。
マレーシアの「民族による違い」
ご紹介したようにマレーシアは多民族国家です。
民族によって生活習慣や食習慣、そして使用しているSNSなどが異なります。
更に、住む地域によっても民族の人口比率や所得そして経済成長率が異なるのです。
そのためマレーシアでビジネスを成功させるには、ターゲットとする民族にあった効果的なマーケティングが必要不可欠です。
マーケティングツールとして活用されるSNSも日本とは違い、マレーシアでは主にYouTubeやWhatsapp、そしてFacebookが利用されており、LINEに類するメッセージアプリのWhatsappが普及しています。
注目したいマレーシアの最低賃金の変化
マレーシアの最低賃金は、2013年の導入当時、マレー半島で月額900リンギ・時給4.33リンギ、東マレーシアでは月額800リンギ・時給3.85リンギでした。
2019年には3度目の改訂が行われ、全国一律で月額1,050リンギになりました。
1リンギは約27円(2020年2月現在)なので、最低賃金は月額約2万8,350円です。
新政権は5年間の任期中に、最低賃金を段階的に引き上げ、1,500リンギを目指しています。
賃金上昇によるビジネスコストの上昇を加味するだけではなく、2023年以降の最低賃金の引き上げにも注目する必要があります。
知っておきたいサービス
マレーシアでビジネスをする際に活用したいサービスをご紹介します。
JACTIMには600社近い企業が加入しており、定期的に会員同士の交流会を開催しています。
また、情報提供や政府への提言だけではなく、中小企業支援も行っています。
2020年2月にスタートした、東南アジア最大級のデータベースを持つプレスリリースの配信サービスです。
マレーシアを中心として、東南アジア各国各言語の主要メディアをカバー。
6,000以上のニュース媒体や、20,000人以上の編集者やインフルエンサーにリーチすることができます。
マレーシアにある日系企業やローカル企業をまとめたビジネスマッチングサービスです。
「製造業」「IT/マーケティング」など、業種別に検索をすることができます。
マレー語の新聞で国内首位を誇っています。
英字紙の中で首位を誇っています。
共同通信系列のアジアニュースです。
ビジネスの話題が日本語で配信されています。
マレーシアの今後の予測(2020)
2020年1月に中国で問題が表面化した新型コロナウイルスによる肺炎は、アジア圏の経済に特に大きな打撃を与えています。
マレーシアも、中国人旅行者を中心にホテルの予約キャンセルが相次いでおり、その数はなんと10万室にのぼると報道されています。
マレーシアの主力産業は製造業ですが、2016年には年間2,676万人だった観光客を、「2020年には3,600万人まで増やす」との目標を掲げていました。
観光客が多く訪れる国でもあり、新型コロナウイルスによる肺炎の影響が経済に影響を与えることでしょう。
マハティール首相の再登板により、新たな道を歩み始めたマレーシア。
急激な経済成長が続く中で、内需の高まりも顕著であり、ビジネスチャンスが広がる国といえます。
参照:
JETRO「マハティール政権誕生から1年、マレーシアの今(1)」
マレーシア、2020年成長率は4.5%の見通し=マハティール首相
JETRO「マレーシア概況」
DENKO「マレーシアの基礎知識 2019年(まとめ)」
イオンプレスリリース『アセアンで初の「イオンスタイル」を展開11月21日、マレーシアの旗艦店が増床リニューアル「イオンタマンマルリ SC」グランドオープン』
NNAASIA「イオンマレーシア、18年通期は5.6%増収」
みずほ銀行「Mizuho Country Focus【マレーシア】建設市場の現状および今後の展望~日系企業の参入余地について~」
JETRO「マレーシア 外資に関する規制」
世界へボカン「マレーシア 越境ECビジネス基本のキ 人口統計からマーケティングまで」
JETRO「月額最低賃金は全国一律で1,050リンギに、2019年初から導入(マレーシア)」
NNAアジア経済ニュース「ホテルのキャンセル10万室 新型肺炎影響で中国人客中心に」
参考書籍:
株式会社翔泳社「ASEAN企業地図 第2版」桂木麻也著
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