【2020年2月18日】公開
フィリピン共和国は人口1億700万人(2018年)、カトリック教徒が82.9%と多く、アジア圏の中では唯一のカトリック教国です。
公用語はフィリピノ語と英語です。
約333年間にわたってスペインの植民地とされ、その後48年間アメリカによって、さらに日本による3年間の植民地化を経て、1946年にフィリピン共和国が成立しました。
日本統治下の植民地の中で最大の被害を被ったフィリピンですが、こうしたバックグランドがありながらも、現在では親日国として知られています。
日本企業のフィリピン進出の流れと展望
フィリピンへ進出している日本企業は、1,502社(2017年)。
フィリピンのGDP成長率は2012年以降7年連続で6%を超えています。
▼ドゥテルテ政権による「ビルド・ビルド・ビルド」
2019年に行われた中間選挙でドゥテルテ政権が圧勝。
2016年の政権発足直後からおこなっている、大規模なインフラ整備計画が進行しています。
任期満了となる2022年までに約8兆ペソを、鉄道や道路そして空港などのインフラ開発や設備投資に投じます。
これによって、インフラの整備が進むだけではなく、関係産業のニーズの高まりが継続して見込まれます。
日本では、「ビルド・ビルド・ビルド」に対して、10以上のプロジェクトでODAを行っており、最大の援助国となっています。
▼日系企業の約7割が黒字を見込んでいる
JETROが2019年に実施した「アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」では、フィリピンに進出している日系企業に調査を行っています。
これによると、2019年の営業利益見込みを黒字と回答した企業は69.2%で、ASEAN各国内で最高水準を維持しています。
▼相対的なコスト競争力が高い
経済成長に加えて、英語が公用語とされているためコミュニケーションがとりやすく、優秀な人材が比較的低コストで雇用できる人件費の安さも魅力のひとつです。
また、製造原価も低く調達コストを安く抑えられるなど、相対的なコスト競争力が高いのもポイントです。
▼日系企業の動向
2010年代前半には、日系企業による電気機器分野への投資が目立ちました。
セイコーエプソンは2011年に、約1億1,000万ドルを投資して、既存工場の横に新工場を設立しています。
また、インフラ・資源開発部門では、住友金属鉱山が15億9,000万ドルを投資して2013年にプラントを完成。
2012年にはファーストリテイリングがユニクロ1号店を開業し、ファミリーマートやローソンなどのコンビニエンスストアも進出を果たしています。
フィリピンでビジネスをする上で知っておきたいポイント
2018年のGDPは一人当たり3,084ドルで個人消費が経済をけん引しています。
これは、在外フィリピン人労働者からの送金が多いことも起因しています。
また、人口ボーナス期に入っており、内需の拡大が見込まれている国です。
IT-BPO産業が特に成長著しく、「英語ができる優秀な人材を確保できる」ので、ビジネスプロセスアウトソーシング拠点として注目されています。
政府もこれを支援するために、「PEZAインセンティブ」という外資誘致策を実施。
積極的にバックアップをしています。
▼フィリピン現地法人の外国資本比率に対する規制
フィリピン現地法人は、業種によって外国資本比率に対する規制が設けられています。
規制には「ネガティブリスト」が用いられ、外国資本比率に対して100%禁止、25%・30%・40%以下に制限等の取り決めがされています。
ネガティブリストに該当しない業種では、100%外国資本の出資が可能ですが、建築業などの免許の許諾が必要なものについては、外資制限がかかるケースもあります。
必ず事前に確認をしましょう。
ネガティブリストに該当する業種では、100%外国資本での運営ができないので、「信頼できるパートナー選び」が非常に重要なポイントになります。
▼治安の問題
外務省では、2020年2月現在、「ミンダナオ地域の中部以西及び周辺海域」に対して「渡航中止」を求めています。
これは、イスラム過激派組織による爆弾テロ事件や身代金目的誘拐が多発しており、治安情勢が悪いためです。
日本と比較して治安の問題が取り上げられることが多く、進出するエリアを選ぶ際には治安に注意が必要です。
フィリピンには100以上の工業団地があり、その多くがマニラ周辺もしくはラグナ州・カヴィテ州・バタンガス州に集中しています。
「ファーストフィリピン工業団地」「リマ工業団地」「ラグナ・テクノパーク/カヴィテ・テクノパーク」等の日系商社が運営に携わっている工業団地もあり、日系企業の約8割が集中しています。
進出の際には、日系企業の進出エリアを指標とするのも良いかもしれません。
知っておきたいサービス
フィリピンでビジネスをする際に活用したいサービスをご紹介します。
1973年に設立され、682社(2019年7月末)が加入しています。
情報提供や会員企業の相互交流機会の創出を行っている他、講演会やセミナーなども開催しています。
1992年にマニラで創刊された「日刊まにら新聞」のWeb版です。
フィリピン発のニュースを毎日日本語と英字で配信しています。
無料記事と有料記事があります。
▼Cebupot
セブエリアの情報ポータルサイトで、日本語で配信を行っています。
生活に即した情報配信だけではなく、観光やビジネスそして不動産情報も扱っています。
フィリピンの今後の予測(2020)
世界銀行はフィリピンの2020年の経済成長率を6.1%と予測しており、2021年と2022年は6.2%と予測しています。
アジア主要国の中でも生産人口の増加が見込まれており、今後も成長が見込める国のひとつです。
世界からも注目されていて、特に製造業を中心に各国・地域が直接投資をおこなっています。
また、近年では新規の進出に限らず、既存工場の増設や拡張といった投資もみられます。
大統領主導のもと、治安対策や税制対策が行われおり、外資系企業が進出しやすい取り組みが進められているフィリピン。
人口ボーナスの恩恵は大きく、内需狙いでの進出を行う日系企業も数多くあります。
フィリピン進出をお考えの方、まずは情報収集からスタートしてみてはいかがでしょうか。
参照:
JETRO「フィリピン」
JETRO「フィリピン経済の最新状況と日系企業の進出状況」
JETRO「フィリピン 外資に関する規制」
外務省「海外安全ホームページ フィリピン」
JETRO「世界銀行、フィリピンの2020年の経済成長率を6.1%と予測、2021年と2022年は6.2%(フィリピン)」
みずほ銀行「フィリピン投資環境」
参考書籍:
株式会社翔泳社「ASEAN企業地図 第2版」桂木麻也著