本メディアを運営する株式会社ビッグビートが主催・運営したオンラインイベント「Bigbeat LIVE ASEAN vol.03」の2本目のセッションでは、Clisk Co.,Ltd.の金城弘二郎さんと、アジアクリックの高橋学さんによる「ASEANでSNSマーケテイングを行う上でのポイント解説」と題したディスカッションが行われました。
アジアクリック代表の高橋さんは、ASEANからの訪日観光インバウンド支援を中心に、ソーシャルメディアを積極的に活用しています。
Clisk Co.,Ltd.の金城さんは、東京の五反田を本社とし、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシアなどにも事業拠点を広げ、企業や団体に向けたソーシャルメディアマーケティングを提供しています。
ビッグビートが運営するASEANマーケティング支援プラットフォーム「ICHI(市)」のプロジェクトメンバーでもある当社の越膳によるモデレートのもと、お二人にSNSに関する様々なお話を伺いました。
越膳:
日本でもコロナ禍により、デジタルマーケティングが主流になってきていますが、ASEANでのデジタルマーケティングに関する相談も増えてきているのでしょうか?
高橋さん:
ここ半年近くで、増えております。内容としては中国、韓国、香港とかから、ASEANのタイやシンガポールにシフトしていきたい、という問い合わせが増えています。
金城さん:
プロジェクト自体が増えている状況です。これまでは、B to Cを中心に支援していましたが、コロナ禍以降は、B to Bの相談が増えています。
高橋さん:
ASEAN 10カ国の平均年齢は29歳で、日本と比較した総面積は12倍になり、人口も5倍です。1人当りの所得は、日本の1/8になります。ただ、国々によって所得の格差があります。
私たちが見ているのは、上記のグラフの緑色の上位中間層になります。こちらの層が、訪日の対象になります。
この層だけを比較すると、インドネシアがとても増えています。
高橋さん:
また、国ごとではなく、各国の民族ごとにマーケティングする必要があります。
民族が違えば宗教が異なり、宗教が異なれば価値観が異なり、価値観が異なれば消費行動が異なります。
越膳:
SNSの普及に関しては、どのような現状でしょうか?
金城さん:
各国のSNS状況を比較すると、インターネットの普及率は、日本の91%に対して、東南アジアでも70%を超える国がほとんどです。
私は2013年からタイに来ていますが、当時の20~30%の状況と比べて、現在では70%を超えるかなりの伸び率になっています。さらに、インターネット人口に対するSNSの普及率に関しては、100%の国もあります。
日本では、インスタグラムのユーザーが5,000万人以上で、フェイスブックが約2,000万人ぐらいで、それほど使われていません。ところか、東南アジアにおいては、50歳以上でもフェイスブックを使っているので、ASEANにおいては、基本的にフェイスブック1本だけで、ほとんどのターゲットにリーチできる点が、大きく違うと思います。
また、利用時間に関しても、日本では1時間以内が多いのですが、東南アジアでは3時間以上という3倍ぐらいの利用時間になっています。
越膳:
日本ではTwitterが入っていますが、ASEANでは使われていないのでしょうか?
金城さん:
タイでは、6位とか7位くらいです。チャットでは、タイはLineが強いですが、ベトナムだと独自のチャットが普及していたりします。
また、興味深いのは各国の上位のYoutubeチャンネルのフォロワー数比較です。
日本だと、1,000万フォロワーぐらいが上位だと思いますが、タイだと3,500万というフォロワー数を獲得しています。
この中には、実際のテレビ局のYoutubeチャンネルも入っていますが、インドネシアだと、女優とかユーチューバーだったりします。
同様にインスタグラムでも、日本はトップでも1,000万に届くかどうかですが、他の国では飛び抜けています。
タイで飛び抜けているのは、K-popグループにいるタイ人のインスタグラムです。インドネシアだと、大統領とか女優などの芸能人になります。フィリピンのトップは、米国の女優なので、この数字を除いても、1,000万を超えているので、日本と比較しても影響力は高いといえます。
また、広告費ですが、タイを例にとると、毎年10%ほどの割合でデジタル広告が成長しています。そのデジタル広告の内訳の中で、SNS関連が全体の70%を占めています。タイ以外のASEAN各国も、ほぼ同じような状況で、日本の32%と比較すると、かなり高い割合です。
また、物を買うときに、SNSをどのくらい検討段階で利用するかの割合を比較したグラフでも、影響力の高さがわかります。
パンデミック以降では、情報収集においてSNSは高い影響力を持ち、タイでは人口の70%がSNSを利用しています。特にFacebookは100%という群を抜く利用率でアクティブ率も高く、続くInstagramやTikTokも急速に伸びていて、若者層のアクティブ率が高いです。こうした背景から、認知・興味喚起・購入フェーズにおいて、Facebook広告やIG・KOL・人気ブロガー・口コミ系メディア・YoutubeのKOLは有効です。
日本と比較すると、リーチがシンプルなので、どういった使い方をしていくのかが、重要になってきます。
越膳:
各国の状況はわかりました。実際に企業や団体では、どのようにSNSを活用されているのでしょうか?
高橋さん:
マレーシアでは、中華系の方が2割ぐらいで、民族的にはイスラム教です。そうなると、食べ物や日頃の習慣も異なります。ですので、民族に対してマーケティングしている、という視点を持っていただければいいのかと思います。例えば、タイ人では、見たことない、という写真に好反応を示します。また、自由に冒険的に、欲しい物や行きたい所へと行動します。そして、FacebookなどのSNSは、祖父母と子供の交流メディアとして活用されています。
先日、タイで東北全県が上位25%にランキングされたのですが、その背景には、参加型のソーシャルメディアの活用があります。
金城さん:
やはり、拡散していくところが、SNSマーケティングの特長だと思います。例えば、その商品の価値を、より共感してもらうために、インスタグラムとかフェイスブックで、ただ商品はこうですと直接訴求するよりは、自分ごと化してもらうために、普段生活してる何気ないシーンでその商品が出てくる、というような見せ方の工夫が、非常に重要かと思っています。
また、直接商品をプロモーションするのも有効です。基本的に、お得な情報は拡散されやすく、瞬間的にニュースフィードに現れても、けっこう反応してくれます。例えば、マルコメの事例では、日頃からレシピなどの情報を提供して、この商品はいつぐらいにセールになるというのを予告しておいて、実際に6時間限定のセールを展開すると、CTRが3.2%、CVRで26%という結果が得られています。この方法は、とても有効に機能しています。
もう一つ、インフルエンサーとのブランドタイアップ投稿です。ブランドの認知度がない商品に関しては、Facebookでアンバサダー的に商品を紹介してもらうなど、専門家とのタイアップは非常に有効になってきます。
日本では、購入の段階でSNSは難しい、と捉えがちです。しかし、SNSとGoogleなどの検索でリーチする人を比較すると、例えば、タイでファッション関連の商品を比較すると、広告としてのリーチはGoogleが優位ですが、実際の購買につながるアプローチで比較すると、Facebookの方が高い割合を示しています。また、ライフスタイル関連の商品でも、同様な結果が得られています。
さらに、FacebookとInstagramの広告パフォーマンスを比較すると、タイでは圧倒的にFacebookが強いです。逆に、インドネシアやシンガポールでは、Instagramが強いです。ちなみに、投稿内容の保存率を比較すると、各国ともにInstagramが高いです。それに対して、Facebookはシェア率において、各国ともに高いパフォーマンスを示しています。こうした背景から、扱う商品ごとにどのSNSを使うかを検討していくべきだと考えます。
越膳:
(SNSごとでの商品プロモーションについて)どんな事例があるのでしょうか。
金城さん:
例えば、金融関連サービスの問い合わせ獲得という事例ですが、新規顧客を獲得するために、問い合わせ獲得数をKPIとして、FacebookやInstagramに、MessengerやAudiencenet work,さらにGDNやSEMを利用しました。結果として、ダントツにFacebookからリードを獲得できました。ダイレクトに「これいいよね」という見せ方ではなくて、ライフスタイルから見せるようなHow to系の工夫によって、獲得数は405に及び、CVRで0.7%に達しています。
次に、タイの技術者に向けた参加型のSNSキャンペーンでは、プレゼントを用意して、1,000人以上の会員が獲得できました。
さらに、ITトレーニングを提供している会社が、問い合わせやオンラインセミナーへの申込みを増やすために、SNSマーケティングを行ったのですか、結果としてFacebookからのパフォーマンスの高さが際立っていました。
最後に、インドネシア向けのマーケティングでは、アンケート型の問いかけやビジネスに関わる記事投稿を実施していましたが、アンケートでは回答が300-1000程が集まったり、記事へのコメントでは具体的な意見が多くついたりユーザー間での意見交換が起きたり、など多くの声が聞けて効果的な施策になりました。
高橋さん:
一般の人たちの行動、C to Cが企業を動かしていく様子がわかり、C to C to Bというものが、マーケティングの一つとして、効果があると実感しました。
金城さん:
B to Bにおいても、SNSは活用するべきだと思います。
また、SNSでは、共感マーケティングが重要になるので、ファンやターゲット層の感情とかSNSの特性を理解したコミュニケーションが重要になります。中でも、国民性や文化に宗教などの共感ポイントを探ったり、フロー型となるSNSのミュニケーション特性を理解して、動画ならば最初の3秒以内で惹きつけるなど、いろいろなコンテンツを組み合わせながら、多角的なアプローチが求められます。そして、SNSではファンからの実際のコメントやいいねが押された数などのデータが取れるので、データを分析しながら、しっかりとPDCAを回して、次にどのようなアプローチをしていくかが大事になります。