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日系企業のシンガポール進出状況2020

【2020年2月17日】公開



シンガポール共和国は人口 564万人(2018年)、中国系74%マレー系13%の多民族国家で、公用語は英語・中国語・マレー語・タミル語です。
1959年に英国から自治権を得、1963年にマレーシア連邦として独立、1965年にマレーシアから分離独立した国家です。

「アジアの金融ハブ」と呼ばれ、金融業の産業集積が進んでいます。
 

日系企業のシンガポール進出の流れと展望

シンガポールに進出している日系企業は、2018年12月時点で825社(シンガポール日本商工会議所会員数)です。
シンガポールの人口は564万人ですが一人当たりのGDPは、2017年のデータでは57,713米ドル、日本が38,440米ドルであることを考えると、「経済大国として目覚ましい発展を遂げた」といえます。
これは「英語が公用語である」ことに加え、「政治・社会が安定している」「法人税等の税制上のメリット・インセンティブがある」などの優位性があるためです。
 

▼高齢化が加速


シンガポールの人口予測では、2010年から緩やかな人口減少が始まり、2020年には15歳以下の若年人口と65歳以上の老齢人口が逆転します。
これを受け2013年にリー・シェンロン首相は「国づくりのアプローチを戦略転換する必要」を明言し、国家戦略を経済中心から、国民よりで福祉重視への姿勢へと変換することを表明しました。

高齢化が加速していくシンガポールですが、人口構成の特徴として外国人比率が29.1%と高く164万人、永住者も9.2%で52万人です。
 

▼2017年に刷新された「新成長戦略」


シンガポールでは2017年に、5~10年先の中期経済ビジョンである新成長戦略を刷新しました。
次世代のパオニアを目指し、「年2~3%のGDP成長率達成」を目標に掲げています。
目標達成のために7つの施策を軸とし、23の業種ごとに生産性向上の取り組みを策定、国を挙げてイノベーションを推進していきます。
 

▼産業集積と日系企業の進出


シンガポールは積極的に多彩な産業の集積を推進しており、外資系企業誘致に成功しています。
法人税率は17%と世界的に見ても最低水準であり、政府機関が認定を与えた企業は更なる軽減税率の適用を受けることができます。
更に、外貨規制が少なく、約7,000社もの企業が世界中から進出しているのです。

日系企業による地域統括拠点設置は2014年がピークですが、エネルギー・化粧品・食品など多彩な産業がシンガポールへの進出を果たしています。
また、2015年1月には中外製薬がシンガポール研究施設に追加投資を行い人員体制の規模を拡大するなど、東南アジア市場向けのR&D拠点としても注目を集めているエリアです。
そして、東南アジア進出のテストケースとして、日系企業の飲食業や小売業の進出も増えています。
 

金融業の産業集積が進行

シンガポールには世界各国から銀行や金融業が進出しており、拠点を置く銀行は約200行、金融機関は1,200社以上を数えます。
アジア最大の外為取引市場であり、アジアの資産管理拠点として注目されるエリアです。
日本企業進出に伴い、地銀による支店や駐在事務所設置も拡大を続けています。
 

ジュロン島に集積している石油化学産業

2009年、シンガポールの西部にあった7つの島を埋め立てて1つの島とし、「ジュロン島」が完成しました。
石油化学産業の一大拠点として、約100社が進出しており、 パイプライン設置による相互接続や、排水処理施設や貯蔵タンクなどの共用が行われています。

日本からは、旭化成や三井化学、住友化学などが進出しています。
 

起業(スタートアップ)拠点

シンガポールでは、政府が主導してハイテク技術分野の地元起業家を育成、海外からも起業家を積極的に誘致して、起業活動を振興しており、
東南アジア最大のスタートアップ拠点に浮上しています。

2018年にはJETROが、スタートアップの相互支援デスクである「グローバル・アクセラレーション・ハブ・ワンストップ・デスク」を開設。
現地エコシステムと協力し、スタートアップを含んだ技術力に優れた日本企業の現地展開を支援しています。
 

シンガポールでビジネスをする上でおさえておきたいポイント

シンガポールはGDPが高く、「アジアで最も高い世帯所得」を誇ります。

就労者のいる世帯平均月収は、2018年に9,293ドル(中央値)を記録しており、世帯収入が1万5,000ドルを超える富裕層の割合は23.5%です。
これは、シンガポールの税率が低いだけではなくキャピタルゲイン課税や贈与税、そして相続税もないため、富裕層がシンガポールに移住する例が多くあることも原因のひとつです。

共働き比率は2015年時点で63%、2015年の調査では国民の約9割以上が持ち家でした。
共働きの比率が高い分外食への支出が多く、「未調理の食品への支出よりレストランやフードコートへの支出が多い」という特徴があります。

シンガポールでは、人件費などのビジネスコストが日本よりも高く、「人件費の高騰」や「事務所スペースなどの地代による固定費」等の負担が大きいです。
緩やかな上昇を続けている経済の影響で、人件費や固定費は今後も更なる上昇が予測されています。
また、土地が狭く人口が少ないので内需の高まりを期待することができず、輸出に依存している経済構造にも不安点があります。
 

知っておきたいサービス

シンガポールでビジネスをする際に活用したいサービスをご紹介します。
 

▼シンガポール日本商工会議所(JCCI)


シンガポール日本商工会議所は、8つの部会に分かれており、各部会で交流会や意見交換を行っています。
更に、8部会でおこなう会員懇親会や複数部会での共催事業もあり、部会間の交流も活発です。
経営相談や勉強会も開催しており、情報収集や交流以外にも様々なメリットがあります。
 

▼シンガポール政府


シンガポール政府は、日本向けの観光情報サイトにビジネス情報を公開しています。
入札支援やイベントカレンダーなど、シンガポールのビジネスに役立つ支援が紹介されていますので、シンガポール進出に興味をお持ちの方は是非ご一読ください。
 

▼The Straits Times


シンガポールで最も読まれている日刊紙で、Webサイトは英語表記です。
シンガポールを中心に、多様なニュースを配信しています。
 

▼シンガポール経済新聞


2007年にスタートしたWebサイトです。
日本語で生活や経済に関するシンガポールのニュースを配信しています。
 

シンガポールの今後の予測(2020)

2020年2月現在、シンガポールにおいて、新型コロナウイルスによる肺炎が外食・観光産業を中心に影響を与えています。
観光局は既に「旅行代理店の登録料免除」を行うなどの救済措置を打ち出しています。
しかし、影響が長期化する可能性があり更なる支援策を実施する予定です。
迅速な対応により経済への影響が限定的で収まることが期待されます。

ご紹介したように、国土の狭さや高齢化の問題があり内需の拡大に大きな伸びが見込めないシンガポール。
しかし、外資や優秀な人材を積極的に受け入れる姿勢で、今後も経済的な成長を続けていくとみられています。
2030年には、シンガポール・マレーシア間を結ぶ「マレーシア・シンガポール首都間高速鉄道」が開業を予定しており、ますます便利になるシンガポール。
東南アジア進出を視野に、シンガポールから一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。


参照:

JETRO「シンガポール概況と日系企業の進出動向(2019年4月)」

幻冬舎GOLD ON LINE「シンガポールに多数の外国企業が進出する5つの要因」

みずほ銀行「シンガポール投資環境 2019年11月」

日本経済新聞『20年外国人旅行客「25~30%減少」シンガポール政府予測』


参考書籍:

株式会社翔泳社「ASEAN企業地図 第2版」桂木麻也著

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