【2020年2月14日】公開
タイの人口は6,765万人(2017年)で、仏教を信仰している方が約95%を占めています。
立憲君主制の国であり、国家元首の国王は国民の敬愛の対象です。
タイはGDP成長率が前年度を上回る年が続いており、確実に経済成長を遂げてきた国で「東南アジアのハブ」として注目を集めています。
日系企業のタイ進出の流れと展望
2019年4月1日時点で、日本企業の1,772社(内製造業691社、非製造業681社)がバンコク日本人商工会議所に登録を行っており、累計で8,890社(2014年11月時点)もの日系企業が、商務省に登録されています。
この数には、休業中のものや撤退したものが含まれますが、他のアジア地域の中でも日系企業の進出が進んでいるエリアといえます。
JETROの「
タイ日系企業進出動向調査2017年」によると、活動が確認された日系企業数は 5,444社で、製造業の進出数が2014年の前回調査より199社増加で、非製造業(農業、建設業等を除く)は629社増加しており、非製造業の進出が積極的です。
また、中小企業の進出数が大企業を上回っています。
▼2036年までの国家戦略「タイランド4.0」
暫定首相だったプラユット政権が2019年の総選挙により続投が確定し、2015年から提唱されている「タイランド4.0」が引き続き推進されます。
「タイランド4.0」は、別名「20年間長期国家戦略2017~2036年」といい、「デジタル経済の発展」と「新世代産業(次世代ターゲット産業)の育成」の2つを軸にしています。
これによりタイでは、イノベーション主導型の経済成長へと路線転換を図っているのです。
政府はこれを実現させるために、「東部経済回廊(EEC)」を設定。
バンコク東部にあるチョンブリ県・ラヨン県・チャチュンサオ県の3つが指定され、外資を呼び込むためにEECへの投資に対して、「最長8年間の法人税免除」と「その後5年間の法人税50%免除」の2つの優遇措置が実施されています。
この流れに乗り、2018年9月には日立がチョンブリ県にビッグデータを解析するソリューションセンターを開設するなど、日系企業の進出も加速しています。
▼タイへの生産拠点の移転を促進する「タイランド・プラス」
米中貿易摩擦を背景に立案されたタイランド・プラスが2019年9月に承認されました。
BOI投資案件に対する法人税の減税措置
2020年末までにBOIに申請し、約35億円(1バーツ=約3.5円)以上のBOI投資案件に対して5年間にわたる法人税の50%減税を実施します。
※2021年末までの投資実施が条件
採用や育成に関する控除
高等教育・科学・研究イノベーション省が承認した、先端技術の人材育成関連の投資もしくは経費を2019年から2020年まで250%特別控除します。
更に、科学技術分野の高熟練人材の採用費用も150%特別控除を実施します。
既に法人税免除の恩典を受けている企業に対しては、先端技術の人材育成経費の200%までの特別控除を認めます。
上記以外にも、自動化システムの導入費用控除やビザ・ワークパミットの発給条件の緩和計画など多彩な施策があり、積極的なタイへの移転誘致が行われています。
▼注目したいビジネストピックス
タイの日系企業は、2017年の調査によると、「非製造業(農業、建設業等を除く)」が 53.10%、「製造業」が全体の43.09%を占めています。
非製造業の中では、「卸売業」1,278 社「専門サービス業」256社が多いです。
専門サービス業とは、コンサルタントや会計事務所、法律事務所、そして職業紹介や労働者派遣等を扱うサービス業を指します。
ASEANのハブとして期待されるタイ
タイはCLM諸国と称される、カンボジア・ラオス・ミャンマーと近く、友好的な関係を築いています。
東南アジアの中でも人件費が低いCLM諸国は、軽工業を中心とする労働集約型産業において特に注目を集めています。
タイを拠点に周辺国のネットワークを活用したビジネスモデルはニーズに高まりを見せており、タイ政府の積極的な支援策もあり、今後も日系企業の進出が見込まれます。
タイでビジネスをする上で知っておきたい「政治的混乱」のリスク
タイに進出するならば、経済発展に伴う賃金上昇などのビジネスコストの増加と加えて、政治的混乱のリスクも頭に入れておきたい重要な問題のひとつです。
2006年以降、タイではデモやクーデターが行われ、政権・軍・王室を軸とした政治的混乱が続いています。
JETROの「続くタイの政治混乱――あぶり出された真の対立軸」では、これを「階層間対立であると指摘しています。
2019年の総選挙以降も続く政治的混乱の背景に階層間対立があるのであれば、選挙を何度行ったとしても根本的な解決がなされない限り政治的混乱を防ぐことはできないかもしれません。
しかし経済発展が続く中で階層格差は徐々に縮小しており、階層格差が亀裂を生む状況は緩和されていくことでしょう。
知っておきたい情報源
タイでビジネスをする際に活用したいサービスをご紹介します。
2014年に設立60周年を迎え、会員数は1,772社(2019年4月末現在)です。
業界の最新情報を提供したり、会員同士の交流会を主宰したりしています。
タイ語の「プーチャットカーン」を発行しているManager Media GroupのWebサイトです。
プーチャットカーンは日刊・週刊・月刊がそれぞれ発行されています。
日本語情報誌「newsclip」のWebメディアで、タイだけではなくASEANの経済や社会、そして政治のニュースを配信しています。
PCサイトのユーザー数は月6~7万、スマホサイトは月7~8万を誇ります。
ビジネスニュースを日本語で収集したい方にお勧めです。
2011年に「日本の情報をタイ語で発信するWebメディア」として立ち上げられ、日本語版ではタイの情報を日本向けに発信しています。
タイ最大の月間60万PVを誇るメディアです。
グルメやライフスタイルなどの生活に密着した情報の他、ビジネス情報の配信も行っています。
バンコクに特化した経済とカルチャーを紹介するWebメディアです。
バンコクの情報を日本語で収集したい方にお勧めです。
タイの今後の予測(2020)
2020年1月に表面化した新型コロナウイルスによる肺炎への経済対策として、タイの中央銀行は2020年の2月5日に政策金利を過去最低の1%に引きさげることを発表しました。
こうした迅速な対応により、経済への影響をなるべく抑えるよう政府が主体となって多彩な対策を行っています。
ご紹介したようにタイでは、2020年に外資系企業に対するバックアップ施策を多数実施しており、2020年はタイ進出の好機といえます。
内需の高まりと外資系企業への積極的なバックアップがあり、より多くの外資系企業進出が見込まれるタイ。
興味をお持ちの方はこの機会に、タイへの進出を前向きに検討してみてはいかがでしょうか。
参照:
JTRO「タイ概況」
広報誌ファイナンス「タイ経済の現状と課題について」
JETRO『政府が生産拠点の移転促進を目指す「タイランド・プラス」承認』
みずほ総研論集2014年Ⅲ号「タイ経済の中期展望」
JETROの「続くタイの政治混乱――あぶり出された真の対立軸」