ざっくりわかるタイの化粧品市場

株式会社ビッグビートでは、海外展開をされる化粧品メーカーの皆さまの、ASEAN地域でのマーケティング活動を支援しております。

今回は、毎年およそ8%の成長を遂げている、タイの化粧品市場への参入について参考になるお話を、クリップティップ株式会社代表取締役の冨永知之さんにお聞きしました。

冨永さんは、製薬会社で研究者として創薬研究に従事されたのち、新規事業開発を担当。
化粧品・健康食品通販事業を立ち上げ、通販事業のフルフィルメント体制を確立されました。
その後、外資系コンサルティングファームに転身。
日本法人の事業開発部門責任者として、製薬会社を対象とした経営・マーケティングコンサルティングをされていました。
また、調剤薬局グループ企業の海外事業部門責任者としてタイ法人を設立。
FDA対応や卸・小売への販路開拓を担うなど、シニア・バイス・プレジデントとしてご活躍なさいました。
現在は独立され、東京商工会議所中小企業国際展開アドバイザーとしてもご活動されている、タイのスペシャリストです。

冨永さんから伺ったお話は、4回シリーズとしてご紹介します。
第1回目となる今回は、タイの化粧品市場の概要についてまとめていきます。

タイ化粧品市場のオーバービュー
タイの化粧品市場は、2017年に1,684億バーツ、6,000億円弱でした。
年間市場成長率は7%~10%で推移しており、2021年にはおよそ7,500億円規模に到達されると予測されています。
ASEAN諸国の中でも最大級のマーケットといえるでしょう。

それでは、タイの化粧品市場の特徴について、マーケティングの4P(Product、Price、Place、Promotion)に沿ってみていきましょう。

Product
タイの化粧品市場、およそ6,000億円のうち、半分近い47%がスキンケア商品です。
スキンケア商品の内訳をみると、フェイスケア商品が8割を占めています。
とくにタイでは「美白」に対する関心が高く、多くの商品が訴求ポイントにしています。
最近では、ニキビケアなどの、肌のトラブルに関心を持つ世代が購買層に加わってきており、このカテゴリはこれからも伸びていくと思われます。

このような中で、日本の化粧品メーカーにとっては、国内の医薬部外品にビジネスチャンスがありそうです。
美白有効成分そのものを、タイで訴求することはできません。
パッケージや広告物で効能をうたうことはできませんが、店頭でビューティアドバイザーを通じて、日本での使われ方をご紹介することは可能です。

懸念点もいくつかあります。

一つ目は、化粧品GMPに基づいた製造・品質管理が求められるようになったことがあげられます。
最近ではGMP取得工場で製造された商品が多いと思いますが、今後、GMPが取得されていないと、FDA承認申請が煩雑になったり、申請できなくなったりします。

二つ目は、INCIに登録されている成分でも、タイで許可が下りない場合があるということです。
このような点を事前に確認しながら、進出計画を推進していく必要があります。

また、Made in Japanにブランド力があることも事実です。
とくに富裕層に関しては、8割以上の人が、「Made in Japanが購入動機になる」と答えています。
しかし、それが価格プレミアムにつながるかというと、なかなか簡単ではありません。

Price
前項で、Made in Japanブランドについて触れました。
たしかに選好性は上がるようですが、タイの顧客は価格についても敏感です。

たとえば、日本で1万円で売られている商品を、タイで1万5千円で売ろうとしても、だれも買ってはくれません。
顧客は、インターネットで日本での販売価格を調べています。
これは富裕層についても同じです。
一般的に、日本との価格差は、1.2倍程度におさめることが大切です。

また、タイの顧客は、セールの際にまとめ買いする傾向があります。
セールの時期になると、店舗から人があふれて入場が制限されるほどです。
この傾向も、先ほどと同様に、富裕層にもあてはまります。
ですので、有力ブランドもセールをおこなっています。

このように、売れる時期に波があるので、セールの時期に合わせてキャンペーンをおこなうなど、メリハリをつけたプロモーションが必要なのです。

Place
タイ国内では、ディストリビューターを通じて、小売店に商品を配荷していきます。
詳しい商流については、第2回の「ディストリビューター」の回でご説明しますので、ここでは概略をご紹介します。

タイでは、日本でのように、小売店が商品を買い取ってくれることはほとんどありません。
委託販売が中心です。
そして、数ヶ月間棚に置いて、売れ行きが良くないと返品されてしまいます。

また、小売店が、お客様に商品を積極的にお勧めしてくれることもありません。
ですので、販売員を派遣するなどして、自力でアピールしていかなければならないのです。
広告宣伝やPRの計画を小売店に提示して、棚を獲得していくなどの活動も必要になります。

ローカルの小売店に商品を置いてもらう場合、商品の登録料や棚代を求められたり、新規店舗のオープン時には協賛費を募られたりします。
日系の小売店では、そのような習慣がない企業もあるようです。

それでは、小売りのカテゴリごとに、概要をみてみましょう。

■デパート
Central、Siam、Mall、Robinsonなどが人気で、お客様も多く集まっています。

日系では、東急と伊勢丹、高島屋が店舗を構えています。
近年の動きでは、高島屋は2018年の11月に初進出し、東急は2019年の1月に郊外の1店舗を閉鎖。
現在は各1店舗ずつとなっています。

■ドラッグストア
watsonsとBootsが2大チェーンとして大きなシェアを占めています。
ですので、この2大チェーンに棚を確保できないと、タイでの認知獲得は難しいです。

日系では、マツモトキヨシやツルハドラッグが進出していますが、2大チェーンとはまだ差が大きいのが現状です。

■ハイパーマーケット/スーパーマーケット
Big C、Tops、Villa Marketなどがあり、化粧品も扱っています。
日系では、マックスバリュ、UFM FUJI SUPER(フジスーパー)、DON DON DONKI(ドン・キホーテ)が進出しています。

とくにDON DON DONKIは、とてもにぎわっています。
食品を自助努力で安価に提供して集客しているようですが、日本でのように、なんでも激安というイメージではありません。

■コンビニエンスストア
このカテゴリでは、地元タイの大手財閥CPグループと資本提携しているセブンイレブンが、圧倒的なシェアを誇っています。
店舗数は1万1千店を超え、2位グループと10倍近い開きがあります。

■コスメショップ
代表的なのはEVEANDBOY(イブ・アンド・ボーイ)とBEAUTRIUM。
店舗数は少ないですが、タイの若い女性に人気があります。

さまざまなチャネルがありますが、販路を考える際、カテゴリによる顧客単価に注意する必要があります。

ドラッグストアの顧客単価は、一般的に300バーツといわれています。
デパートでは、およそ10倍になり、3,000バーツ前後です。
1万円といったところですね。

つまり、日本ではデパート展開をしていない商品でも、タイでの販売価格によっては、デパートという選択肢も検討する必要があるということです。

ちなみにコスメショップでは、価格の安いものから高いものまで幅広く扱われています。
しかし、売れ筋となると、100~200バーツのもの、300~700円くらいのものだそうです。

Promotion
言うまでもなく、成長市場には多くのブランドが参入してきます。
タイの化粧品市場も同様で、競合が多く、プロモーションの資本投下が必要です。

日本ではリピート率が高いので、どのくらい広告宣伝費を投下しても回収できるかという試算がしやすいと思います。
しかし、タイではリピート率が低く、一説には20%程度といわれています。
そのため、新規顧客獲得の活動をし続けなければなりません。
投入時には、初年度の売上げ計画と同等の費用をかけなければ、ブランドを定着させるのは難しいようです。

タイ国内でのプロモーション活動は、原則、ディストリビューター(販売権を保有する企業)主導でおこないます。
これについても、第2回の「ディストリビューター」の回で詳しくご説明します。


ここまで、タイの化粧品市場の概略をご紹介しました。

成長が見込める魅力的な市場であると同時に、なかなか一筋縄ではいかない側面もみえてきます。

冨永さんによると、タイの化粧品市場に参入する際に注意すべき、さらに2つの障壁があるということです。
それが「ディストリビューターとの関係」と「FDA承認申請」です。
それぞれ、第2回と第3回でご紹介していきます。

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連載3 タイ化粧品市場参入の障壁:FDA承認申請
連載4 タイの化粧品市場参入のための展示会活用法

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