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インド製造業の注目分野を解説|ASEAN諸国との比較で見える進出チャンスを紹介

インド製造業は、14億人を超える人口と拡大する中間層に支えられ、世界で最も注目される成長市場の一つとなっています。政府による「Make in India」政策とPLI制度の導入により、自動車・電子部品・半導体・医薬品などの重点産業が急速に発展しています。一方、ASEAN諸国はインフラや労働スキルで優位性を持ち、日本企業にとって異なる戦略的価値を提供しています。本記事では、インド製造業の現状と成長可能性を詳しく解説し、ASEAN諸国との比較を通じて、日本企業が進出を検討する際の具体的なチャンスとリスクを明らかにします。

インドの製造業は長期的に成長する

インドの製造業は、世界経済において急速に存在感を高めています。長らくサービス業中心の経済構造を持っていたインドですが、政府の戦略的な政策転換により製造業への注力が進んでいます。2024年度の実質GDP成長率は6.5%と高い水準を維持しており、特に自動車、電子部品、半導体、医薬品などの重点産業が成長を牽引しています。

インドの製造業がGDPに占める比率は約15%にとどまっていますが、政府は2025年までにこれを25%に引き上げる目標を掲げています。この野心的な目標の背景には、雇用創出、貿易赤字縮小、経済安全保障の確立といった複数の国家戦略が存在します。

人口構成が支える内需

インドの最大の強みは、14億人を超える人口と若年層の厚みにあります。平均年齢は約28歳と若く、生産年齢人口が今後も増加し続ける見込みです。この人口構成は、内需市場の継続的な拡大を可能にする重要な要因となっています。

中間層の拡大も顕著で、購買力を持つ消費者層が年々増加しています。都市部だけでなく農村部でも所得水準が向上しており、消費市場としての魅力は長期的に高まる傾向にあります。特に自動車市場では、2024年度の四輪車販売台数が522万台に達し、日本の442万台を上回って世界第3位の市場規模となりました。

主要成長セクターの見通し

インド製造業の中でも、特に注目されるセクターがいくつか存在します。自動車産業は国内需要の拡大に加え、輸出拠点としての機能も強化されています。電気自動車への移行も政策的に推進されており、今後の成長が期待されます。

医薬品産業では、インドが世界のジェネリック医薬品市場で20〜22%のシェアを持ち、グローバルな製造拠点としての地位を確立しています。品質管理体制の向上とともに、先進国市場への輸出も増加しています。

電子部品・半導体分野では、政府が「Semicon India Program」を通じて約1.368兆円の予算を投じ、国内でのサプライチェーン構築を進めています。グローバルな半導体不足を背景に、インドは重要な製造拠点としての役割を担う可能性が高まっています

国際分業における輸出競争力の位置付け

インドの製造業は、単なる内需向けではなく、グローバルサプライチェーンにおける重要な位置を占めつつあります。特に米中貿易摩擦以降、多くの多国籍企業が生産拠点の分散化を進める中で、インドは「チャイナプラスワン」戦略の有力な選択肢となっています。

その競争力を支えているのが、ASEAN諸国と比較しても安価な労働コストと、英語運用能力の高い豊富な人材です。こうした「生産拠点としての素地」に加え、政府主導のPLI(生産連動型優遇策)制度が輸出企業への強力なインセンティブとなっており、コストメリットと政策支援の両輪で輸出競争力の底上げが図られています。

短期的に顕在化する主なリスク

長期的な成長見通しがある一方で、短期的にはいくつかのリスク要因も存在します。2024年度のGDP成長率は第2四半期に5.6%まで減速しましたが、これは豪雨による農業生産の落ち込み、食品インフレ、選挙期の公共投資停滞などが複合的に影響したためです。

インフレ圧力も継続的な課題となっています。燃料価格や食料品価格の上昇により消費が抑制され、二輪車や乗用車の販売にも影響が出ています。また、金利の高止まりが自動車ローンなどの借入コストを押し上げ、耐久消費財の需要を圧迫しています。

製造業の成長率は4.5%にとどまり、サービス業や建設業と比較すると相対的に弱い状況です。政府の目標達成には、これらの短期的な課題への対応が不可欠となっています。

インドの製造業の投資環境は着実に改善している

インド政府は、外国企業の投資を呼び込むために、規制緩和やインフラ整備を積極的に進めています。「Make in India」政策の開始以降、投資環境は大きく改善し、外国直接投資も増加傾向にあります。ここでは、最新の投資動向と政策改革の内容、インフラの現状について詳しく解説します。

外国直接投資の最新動向

2024年度のインドへの外国直接投資は500億1,800万ドルに達し、前年度比で12.6%増加しました。特に製造業への投資は91.7%増と大幅な伸びを記録しており、政府の政策効果が明確に表れています。

産業別では、電子産業への投資が193.6%増、セメント・石膏関連が195.5%増と、特定分野で顕著な増加が見られます。これらは、PLI制度によるインセンティブと国内需要の拡大が相まって、投資家にとって魅力的な機会を提供していることを示しています。

投資元としては、シンガポール、米国、モーリシャス、オランダ、日本などが主要な国となっています。日本企業も、自動車部品メーカーや電子機器メーカーを中心に、インドでの生産拠点設立や既存工場の拡張を進めています

製造関連政策の改革ポイント

インド政府の製造業振興政策の中核をなすのが「Make in India」とPLI制度です。Make in Indiaは2014年に開始され、製造業のGDP比率を15%から25%へ引き上げ、年間12〜14%の成長を実現し、今後5年間で1億人の雇用を創出することを目標としています。

PLI制度は2020年に導入され、特定産業の売上増加に応じて補助金を支給する仕組みです。2024年時点で14産業が対象となっており、補助金総額は約3兆円に達しています。対象産業には輸送機械、電子機器、医薬品、食品加工、繊維などが含まれ、国内生産の拡大と輸出競争力の強化を狙っています。

税制面でも改革が進んでおり、法人税率の引き下げや投資優遇措置が実施されています。また、州ごとに独自の産業優遇政策を設けており、投資家は立地選定において柔軟な選択肢を持つことができます。

インフラ・物流の現状

インドのインフラ環境は、先行するASEAN諸国と比較していまだ課題が多く、ビジネスのボトルネックとなっています。道路網の拡充は進んでいるものの、地方部の低い舗装率が物流コストを押し上げているほか、港湾施設での慢性的な混雑も解消されておらず、輸出入における効率化が急務とされています。

こうした状況を打破すべく、政府は大規模なインフラ投資を継続しており、その効果は建設業の9.4%という高い成長率にも表れています。高速道路や新空港の建設、港湾の近代化に加え、デリー・ムンバイ産業大動脈プロジェクトのように、産業集積地を有機的に結ぶ大規模プロジェクトも着実に進展を見せています。

産業の基盤となる電力供給においても、質と量の両面で進化が見られます。発電・送電インフラの増強により供給不安が解消されつつあることに加え、現在はグリーンエネルギーへの転換も加速しています。太陽光や風力を中心とした再エネ投資は活況を呈しており、持続可能なエネルギー基盤の構築が進んでいます。

資金調達・金融支援の仕組み

インドでの製造業投資において、資金調達は重要な検討事項です。国内銀行からの融資に加え、政府系金融機関による支援制度も整備されています。中小企業向けには、低利融資や信用保証制度が提供されており、初期投資の負担軽減が図られています。

外国企業に対しても、合弁事業や完全子会社設立の際に、さまざまな金融支援オプションがあります。PLI制度による補助金に加え、州政府レベルでの土地提供や税制優遇措置が組み合わされることで、総合的な投資環境が整備されています。

ただし、金融機関の審査プロセスは日本と比較すると時間がかかる傾向があり、事前の十分な準備と現地での関係構築が重要です。また、為替リスク管理も必要であり、ルピーの変動性を考慮した財務戦略が求められます。

インドの製造業はデジタル化で競争力を向上させている

インドの製造業は、デジタル技術の導入により生産性向上と品質改善を進めています。政府もデジタルトランスフォーメーションを国家戦略として位置づけ、さまざまな支援策を展開しています。ここでは、スマートファクトリーの導入事例や政策支援、人材育成の取り組みについて解説します。

スマートファクトリー導入の実例

インドでは、大手製造企業を中心にスマートファクトリーの導入が進んでいます。自動車メーカーでは、IoTセンサーを活用した生産ラインの監視や予知保全が実施され、ダウンタイムの削減と生産効率の向上が実現されています。

医薬品製造では、データ分析を活用した品質管理システムが導入され、国際基準を満たす製品の安定供給が可能になっています。特にジェネリック医薬品の分野では、デジタル技術による品質保証が輸出競争力の源泉となっています。

電子部品製造においても、AIを活用した不良品検出システムや、ロボティクスによる自動組立ラインが稼働しています。これにより、人件費の上昇圧力に対応しつつ、高品質な製品を効率的に生産できる体制が整いつつあります。

国のデジタル政策における支援の内容

インド政府は「Digital India」イニシアチブの一環として、製造業のデジタル化を強く推進しています。インダストリー4.0への移行を支援するため、技術導入に対する補助金制度や税制優遇措置が提供されています。

特に中小企業向けには、デジタル技術導入のためのコンサルティング支援や、低コストでのクラウドサービス利用が可能なプログラムが整備されています。また、テクノロジーパークや産業クラスターにおいて、共有のデジタルインフラが提供され、初期投資の負担が軽減されています。

データセキュリティとプライバシー保護の法整備も進んでおり、企業が安心してデジタル技術を導入できる環境が整いつつあります。サイバーセキュリティ対策への支援も行われており、国際水準のセキュリティ体制構築が後押しされています。

人材育成における技能転換の取り組み

急速なデジタル化の進展は、製造現場で求められるスキルにも大きな変革をもたらしています。この変化に対応すべく、インド政府は「Skill India」プログラムを主導し、労働者の技能転換(リスキリング)を支援しています。現在、デジタル技術に特化した職業訓練が全国規模で展開されており、その受講者数は年間数百万人に達しています。

また、こうした政府の動きと並行して、産業界と教育機関の連携も深まっています。企業の現場ニーズをダイレクトに反映したカリキュラム開発が進み、特にITとエンジニアリングの双方に精通した人材育成が重点化されました。その結果、高度な運用能力が求められるスマートファクトリーを支える人材供給体制も、着実に整備されつつあります

したがって、これからインドへ進出する日本企業にとっては、こうした現地のエコシステムをどう活用するかが鍵となります。政府の支援制度や既存の育成プログラムをうまく取り入れることで、自社での訓練コストを抑制しつつ、即戦力となるスキルを持った人材を効率的に確保できるでしょう。

中小企業の導入障壁の分析

一方で、中小企業にとってはデジタル技術導入の障壁が依然として存在します。初期投資コストの高さが最大の課題であり、特に資金力の限られた企業にとっては大きな負担となっています。また、技術を活用できる人材の不足も深刻な問題です。

政府はこれらの課題に対処するため、段階的な導入支援策を展開しています。小規模な投資から始められるパイロットプロジェクトへの補助金提供や、リース形式での設備導入支援などが行われています。技術プロバイダーとのマッチングプラットフォームも整備され、適切なソリューションの選択が容易になっています。

外国企業にとっては、インドの中小サプライヤーのデジタル化を支援することで、サプライチェーン全体の効率性と品質を向上させる有効な手段となります。こうした技術移転や人材育成を通じた協力関係の構築が、長期的な競争優位性の確保につながるのです。

インドの製造業へ参入する際の主要リスクとは

インド市場は大きな機会を提供する一方で、参入に際してはさまざまなリスクも存在します。法規制の複雑さ、品質管理の課題、パートナー選定の難しさ、価格設定の難しさなど、実務レベルでの注意点を理解することが成功の鍵となります。

許認可を含む法規制の実務上の注意点

インドの法規制は連邦政府と州政府の二重構造となっており、許認可取得のプロセスが複雑です。製造業を開始するには、環境許可、労働許可、税務登録など、多数の手続きが必要となります。州によって規制内容や手続き期間が異なるため、事前の詳細な調査が不可欠です。

労働法規も厳格であり、雇用契約、労働時間、解雇に関する規定を遵守する必要があります。労働争議のリスクも考慮し、適切な労務管理体制の構築が求められます。また、知的財産権の保護についても、登録手続きと侵害対策を早期に実施することが重要です。

最近では規制緩和が進み、オンラインでの手続きが可能になるなど改善が見られますが、実務上は現地の専門家やコンサルタントの支援を受けることが推奨されます。法規制の変更も頻繁に行われるため、継続的な情報収集と対応が必要です。

現地調達における品質管理のポイント

インドでの製造において、現地調達は重要なコスト削減手段ですが、品質管理には細心の注意が必要です。サプライヤーの品質管理能力にはばらつきがあり、継続的な監督と指導が求められます。特に中小サプライヤーでは、品質基準の理解や検査体制が不十分な場合があります。

こうしたリスクを低減するためには、選定時の厳格な審査や定期的な品質監査といった「見極め」に加え、技術指導を通じた「底上げ」の取り組みが有効です。また、供給リスク分散のために複数社購買(マルチソース化)を進めることも重要ですが、何より長期的な視点に立ち、パートナーとしてサプライヤーの品質改善を支援する姿勢こそが、事業成功への近道となります。

現地パートナー選定の実務ポイント

インドでの事業展開において、信頼できる現地パートナーの選定は極めて重要です。パートナーは市場知識、規制対応、人材確保、販売チャネルなど、多方面で重要な役割を果たします。選定に際しては、財務状況、事業実績、評判、企業文化の適合性などを総合的に評価する必要があります。

デューデリジェンスでは、帳簿の正確性、法的リスク、既存の契約関係などを詳細に調査します。インドでは家族経営の企業が多く、経営の透明性や意思決定プロセスの確認も重要です。また、政治的なコネクションや地域社会との関係性も、事業の円滑な運営に影響します。

契約書の作成では、役割分担、責任範囲、紛争解決方法などを明確に定めることが必須です。文化的な違いから生じる誤解を避けるため、コミュニケーションを密にし、信頼関係を築くことが長期的な成功の基盤となります。

コスト構造に基づく価格設定の実務

インド市場での価格設定は、コスト構造の正確な理解に基づく必要があります。人件費は低いものの、物流コスト、関税、間接費などが予想以上に高くなる場合があります。また、インフレ率が高いため、中長期的なコスト上昇を見込んだ価格戦略が必要です。

インド市場は価格感応度が高く、特に大衆向け製品では低価格が競争力の重要な要素となります。一方で、品質やブランドを重視する消費者層も拡大しており、セグメントに応じた価格戦略の策定が成功の鍵となります。

税制も複雑であり、物品サービス税の適用、州間取引の税務処理、優遇措置の活用など、専門知識が求められます。また、支払条件や回収リスクも考慮する必要があり、信用管理体制の構築が不可欠です。為替変動リスクにも対処し、適切なヘッジ戦略を検討することが推奨されます。

まとめ

インド製造業は、巨大な内需市場と若年層の厚い人口構成を背景に、長期的な成長が見込まれています。政府による「Make in India」政策とPLI制度の効果により、外国直接投資が増加し、自動車、電子部品、医薬品などの重点産業が急速に発展しています。

  • 14億人を超える人口と拡大する中間層が継続的な内需を支える
  • PLI制度により製造業への外国直接投資が前年比91.7%増加
  • デジタル技術の導入が生産性向上と品質改善を実現
  • ASEAN諸国と比較して労働コストが低く大規模生産に適している
  • 法規制の複雑さや品質管理の課題には専門家の支援が有効

インド市場への進出を検討する際には、短期的なリスク要因にも注意しながら、現地パートナーとの信頼関係構築と、継続的な市場調査が成功の鍵となります。

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