インドネシアで会社設立する際の資本金ルール|外資規制と実務の落とし穴に注意 | ピリピリ 東南アジア進出をサポート!
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インドネシアで会社設立する際の資本金ルール|外資規制と実務の落とし穴に注意

インドネシアでの会社設立を検討する際、資本金のルールと外資規制の理解は極めて重要です。2025年10月に施行されたBKPM規則により、外資企業の最低払込資本金25億ルピア(約2,250万円)へと大幅に引き下げられましたが、投資総額100億ルピア超という基準は維持されており、依然として複雑な制度が存在します。本記事では、インドネシアにおける会社設立の資本金ルール、外資規制の実態、実務上の注意点について、最新情報を交えながら詳しく解説します。

インドネシアでの会社設立の進出形態

インドネシアへの進出を計画する際、まず決定すべきは進出形態の選択です。事業規模や活動内容、投資計画に応じて、最適な法人形態を選ぶことが成功への第一歩となります。

現地法人(PMA)と国内資本会社(PMDN)の違い

外資企業としての現地法人はPT PMAと呼ばれ、外国資本が出資する法人形態です。一方、国内資本会社はPT PMDNと呼ばれ、インドネシア国内資本のみで構成される法人形態となります。

PMAとPMDNの最も大きな違いは資本金要件にあります。PMAの最低払込資本金は25億ルピア(約2,250万円)、投資総額は100億ルピア超が必要ですが、PMDNの最低払込資本金は1,250万ルピア(約12万円)と大幅に低い設定となっています。この圧倒的な資本金の差により、財務的にはPMDNが有利に見えますが、重要な制約が存在します。

PMDNでは外国人投資家が株主になることが一切認められず、株式は100%インドネシア人で構成されなければなりません。このため、日本企業がPMDNを設立する場合、信頼できるインドネシア人の名義を借りる「ノミニー制度」を利用することになります。なお、2025年10月の規制改正により、PMAの資本金要件が大幅に緩和されたことで、リスクの高いノミニー制度に頼る必要性は減少しています。

駐在員事務所と支店の特徴

営利活動を行わない場合には、駐在員事務所という選択肢があります。駐在員事務所の最大のメリットは、設立コストが低く、手続きが比較的簡単な点です。ただし、営利活動は一切認められないため、直接的な販売活動や契約締結はできません。市場調査段階や進出判断前のスモールスタートとして位置づけることが適切です。

支店形態については、インドネシアでは外国企業の支店設立が制限されているため、一般的な進出形態としては推奨されていません。多くの場合、現地法人であるPMAを設立する方が、事業活動の自由度や税務上のメリットが大きくなります。

インドネシアでの会社設立の事前準備

会社設立手続きに入る前の事前準備が、その後の事業運営の成否を大きく左右します。特に事業コードの選択は資本金要件に直結するため、慎重な検討が必要です。

事業内容の明確化とKBLI事業コードの確認

インドネシアでは、事業活動ごとにKBLIと呼ばれる5桁の標準産業分類コードを取得する必要があります。インドネシアの資本金制度の最も独特な特徴は、資本金要件が会社単位ではなく事業コード単位で設定されている点です。外資企業が新たな事業コードを追加するごとに、原則として追加で100億ルピアの投資総額が必要となります。ただし、頭文字が同じ2桁であれば複数の事業分野番号を取得しても100億ルピアの投資額で可能になる例外も存在します。

事業内容を明確化する際には、将来的な事業拡大も視野に入れて、初期段階でどの範囲までのKBLI番号を取得するかを慎重に検討する必要があります。後から事業コードを追加する場合、追加の投資計画と資本金増資が必要となり、手続きも複雑になります。

外資規制とネガティブリストの確認

インドネシアでは、ネガティブリストとプライオリティリストによって外資規制が定められています。2021年に導入されたプライオリティリスト(投資優先産業リスト)は、投資を奨励する245事業分野を明記しており、対象分野に投資する場合には税制優遇措置や輸入税の免除、容易な事業許可書の取得などのメリットがあります。

業種別の外資規制として、建設業への外資出資は67%まで(ASEAN加盟国からの投資の場合は70%まで)です。金融業界では、保険会社への外資出資比率は80%まで、証券会社への出資比率は最大85%から99%まで(条件により異なる)に規制されています。

自社ビジネスに関わる分野がどのような規制を受けるかを事前に確認することが極めて重要です。事業コードごとに外資規制の内容が異なるため、専門的な知識を持つコンサルタントに相談することが推奨されます。

最低資本金と出資比率の決め方

2025年10月の規制改正により、PMAの最低払込資本金は25億ルピア(約2,250万円)に引き下げられましたが、土地・建物を除く投資総額が事業区分および事業ロケーションごとに100億ルピアを超える必要があるという基準は維持されています。ただし、不動産開発、宿泊施設、農業、プランテーション、畜産、水産養殖といった資本集約型産業においては、例外的に土地・建物も投資額への算入が認められます。この投資総額と払込資本金は明確に区別される概念です。

出資比率については、外資規制により業種ごとに上限が設定されている場合があるため、事前に確認が必要です。出資比率を決定する際には、外資規制の範囲内で、事業運営における意思決定権を確保できる比率を設定することが重要です。

特定業種では最低資本金要件が一般的な基準よりも高く設定されています。商業銀行は少なくとも10兆ルピア(約920億円)、保険会社は1,500億ルピア(約14億円)の資本金が求められます。これらの高度に規制された産業では、引き下げられた資本金要件は適用されないため、注意が必要です。

インドネシアでの会社設立の手続き

会社設立の手続きは複数の段階を経て進められ、各段階で必要な書類や手続きが異なります。全体の所要期間を正確に把握することは難しいものの、一般的な流れを理解しておくことで、スムーズな設立が可能となります。

定款作成と会社登記の流れ

会社設立の第一段階は、会社名の予約から始まります。インドネシアでは、同一または類似した会社名が既に登録されていないことを確認し、法務人権省のシステムで会社名の予約が必要です。

会社名の予約が承認されたら、公証人による定款作成に進みます。定款には、会社名、所在地、事業目的、資本金、株主構成、取締役の権限などが記載されます。公証人は会社設立に関する専門家であり、定款の作成だけでなく、その後の登記手続きもサポートしてくれます。

定款の作成が完了すると、公証人がオンラインシステムを通じて法務人権省に会社設立を登録します。この段階で、会社設立証明書が発行され、法人としての法的地位が確立されます。

銀行口座開設と資本金の払込手順

会社設立証明書の発行後、銀行口座の開設と資本金の払込を行います。インドネシアでは、資本金の拠出は定款の作成完了後および各種証明書の取得後に行われます。

銀行口座開設には、会社設立証明書、定款、取締役の身分証明書、会社の住所証明、税務登録番号(NPWP)などが必要です。資本金の払込は、日本からインドネシアの銀行口座への国際送金により行われます。送金時には、資本金であることを明記した送金目的の記載が必要です。銀行から発行される入金証明書は、その後の税務登録や投資調整庁(BKPM)への報告で必要となるため、大切に保管しましょう。

資本金の払込が完了した後、公証人がオンラインシステムを通じて法務人権省に払込完了を報告します。この段階で、会社は正式に営業活動を開始できる状態となりますが、実際の事業開始には各種許認可を取得してください。

許認可や業種別ライセンスの取得フロー

インドネシアでは、会社設立後にオンライン・シングル・サブミッション(OSS)システムを通じて、事業活動に必要な各種許認可を取得する必要があります。OSSシステムは、複数の省庁や地方自治体が発行する許認可を一元的に管理するプラットフォームです。

業種別のライセンスについては、事業内容に応じて追加の許認可が必要となる場合があります。例えば、製造業では環境許可や工業許可、飲食業では衛生許可や営業許可、貿易業では輸入ライセンスなどが該当します。

許認可の取得には、事業計画書、施設の図面、設備リスト、環境影響評価(必要な場合)などの書類提出が求められます。業種によっては許認可取得に数ヶ月を要する場合もあるため、事業開始スケジュールを立てる際には十分な期間を見込んでおくことが重要です。

インドネシアでの会社設立にかかる費用と資金移動

会社設立には資本金以外にも様々な費用が発生します。設立費用の全体像を把握し、適切な資金計画を立てることが重要です。

設立費用の内訳と相場

インドネシアでの会社設立費用は、自社で手続きを行うか、コンサルティング会社に依頼するかによって大きく異なります。多くの日本企業は、言語や制度の複雑性から、専門のコンサルティング会社に依頼するケースが一般的です。コンサルタント選びは会社設立の成否を左右する重要な要因であり、過去の実績、透明性、進行管理体制、責任範囲の明確化などを確認することが重要です。

コンサルティング会社に会社設立を依頼する場合の費用相場は、70万円から150万円程度とされています。この費用には、会社名予約、定款作成、法務人権省への登記、税務登録、NIB取得、各種許認可の申請サポートなどが含まれます。ただし、業種別ライセンスや特別な許認可が必要な場合には、追加費用が発生する可能性があります。

主な費用項目として、以下のようなものがあります。公証人費用は定款作成や各種認証に必要で、約300万〜500万ルピア(約3万〜5万円)が相場です。法務人権省への登記費用は約100万〜200万ルピア(約1万〜2万円)、税務登録や各種証明書の取得費用は約50万〜100万ルピア(約5千〜1万円)となります。

資本金の設定目安と送金に関する注意点

最低払込資本金は25億ルピアですが、実際の事業運営を考慮すると、より多くの資本金を設定することが望ましい場合があります。運転資金、設備投資、人件費などを総合的に考慮し、事業が軌道に乗るまでの資金需要を見積もる必要があります。

また、日本からインドネシアへの資本金送金では、送金手数料や為替レートも考慮する必要があります。送金金額が大きい場合、複数の送金方法を比較し、最も有利な条件を選択することが重要です。

まとめ

インドネシアでの会社設立には、最低払込資本金25億ルピア、投資総額100億ルピア超という要件に加え、事業コード単位での資本金要件や外資規制など、複雑な制度が存在します。2025年10月の規制緩和により、外資企業設立のハードルは低下しましたが、事前準備と正確な情報把握が成功の鍵となります。

  • PMAとPMDNの違いを理解し、リスクの低い正規の外資企業設立を選択する
  • 事業内容に応じたKBLI番号を慎重に選び、将来の事業拡大も視野に入れた計画を立てる
  • ネガティブリストとプライオリティリストを確認し、外資規制に抵触しないか事前にチェックする
  • 信頼できるコンサルタントを選び、進行管理体制や責任範囲を明確化しておく
  • 資本金送金時には目的を明記し、入金証明書を確実に取得・保管する

インドネシアでの会社設立を成功させるためには、専門家のサポートを受けながら、法規制を正確に理解し、適切な準備を進めることが不可欠です。複雑な手続きや規制変更にも柔軟に対応できる体制を整え、長期的な視点で事業計画を立てることをお勧めします。

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