多くの日系企業が製造拠点を設置するタイは、製造業や建設業において人件費や材料の高騰、人手不足の課題を抱えています。そのような中、現場ではデジタル化が求められており、その活躍を期待されるのが現場帳票電子化ソリューション 「i-Reporter(アイ・レポーター)」 です。i-Reporterは、日本国内で最大級のIT製品・SaaSレビューサイト「ITreview」において「ITreview Grid Award 2024 Winter」の9部門を受賞。i-Reporterがどのようにタイの課題を解決しているのかなど、 株式会社シムトップス の生出さんに話を伺いました。
株式会社シムトップス グローバルセールス&マーケティンググループ
統括責任者
生出さやか氏
3,600社、16万5,000ユーザーが採用した製造・建設業界の課題解決ツール
― 貴社の事業概要についてお聞かせください。
当社は1991年に創業したパッケージソフトウェアメーカーです。最初の20年間は、製造現場に特化した工程管理やスケジューラーである「DIRECTOR」を開発、販売。「現場」の業務改善に特化した、お客様に本当に喜んでいただける製品・サービスの提供をモットーに、導入から現場に張りつくような伴走型で支援してきました。
お客様の製造現場にてシステム導入をお手伝いさせて頂く中で、システムに入力すべき情報は現場作業中に発生するため、PCに直接入力できない状況下では一度紙に記録せざるを得ないが、タブレットがあれば紙を経由せずに一からデジタルデータに置き換えられる!という発想から2012年に現場帳票電子化ソリューション「i-Reporter」をリリースしました。 現在までに3,600社、16万5,000ユーザーを超えるお客様にご利用いただいています。海外展開も進めており、そのうち海外は300社、8,200ユーザーです。中国で90社、タイで60社が導入しました。
― どのようなきっかけでタイに進出されましたか。
すでに日本でi-Reporterを導入しているお客様が、タイにも製造拠点を持ち、同じように管理したいというご要望があったことがきっかけです。そのようなお客様が徐々に増えてくると、タイで販売または技術サポートをお願いできるパートナー様が必要です。そのため、i-Reporterを提案から販売、技術支援を現地でタイ語で行って頂けるパートナー様の開拓から始まり、いくつかの有力なパートナー様との出会いから共に協力し、タイでの展開を進めてきました。
タイは自動車や食品などの日系企業が多く進出しているので、市場として魅力がありました。タイ以外の東南アジア周辺国も選択肢にありましたが、製造現場の効率化や改善を求める風潮が東南アジアの中でもタイが一番大きく、人件費や材料の高騰、人手不足、コスト削減など、DXで解決すべき課題を感じているフェーズにあったことが、進出を後押ししました。
また、タイは全国民がデジタルネイティブと言えるほど、スマホが浸透しています。携帯電話の普及が直接スマホだったため、日本のようにガラケーを経験した世代はいません。紙ではなくタブレットで管理するi-Reporterを導入しても、無理なく受け入れられる土壌がありました。
オフライン環境で使える「ネイティブアプリ」でスムーズな操作性を実現
― i-Reporterはどのような製品なのでしょうか。
現場業務における記録・報告の電子帳票です。デジタル化の対象になるのはデスクワーカーや現場作業員などさまざまな業務パターンがあります。私たちが対象とするのは、製造や建築の現場作業員です。単なるペーパーレス化ではなく、「現場」作業員の電子記録ツールというところを重視しています。
電子記録ツールは他にも登場していますが、それらとの違いは「ネイティブアプリ」です。例えば、Googleフォームのように同じ文言で誰でも簡単に入力フォームが作れて、現場の人がスマホで入力できるWebアプリは、基本的にWebブラウザで開くので通信環境が必須です。何らかの情報を入力すると、通信してサーバー上で挙動しますので、現場での通信環境によっては、思うように動かないこともあります。
VIDEO
一方で、i-Reporterはネイティブアプリにこだわっています。iPadまたはWindowsタブレット上で通信環境がなくても操作できるので、素早く入力できます。現場の通信環境が悪くて10秒間フリーズする、といったような事態を防げます。
また、ノーコードツールなため、IT部門に負担をかけることなく、現場管理者を中心とした現場で本当に使える、簡単に始められる、続けられるツールとなっています。
経営層が知らないタイの課題。言葉の壁が現場のムリ・ムダ・ムラを生む
― タイにおける現場帳票管理にはどんな課題がありますか。
「タイの主要言語はタイ語である」という現実の中、日系企業の駐在員様とローカルスタッフ様のコミュニケーションは想像以上に厳しいものです。タイ人の温厚な性格ゆえに、ぶつかって問題が表面化することは滅多にないでしょう。しかし、結果として、指示が正しく伝わっていなかったり、ローカルスタッフの思いを汲み取れないこともあり、離職率が高かったり、転職も当たり前の環境です。
多くの企業が「管理と現場」という構図によるミスコミュニケーションで苦労しています。それが現場のムリ・ムダ・ムラを生んでいます。また、現場で起こっていることは現場のメンバーが一番詳しいものの、その情報が正確かつリアルタイムに日本の経営層へ伝わっていないのが現状です。
― こうした問題の原因はどこにあるのでしょうか。
大きな原因として、「紙」で作業実績や品質検査結果を記録していることが挙げられます。作業指示に関わる情報をシステムやExcelで管理していても、結局、現場に来ると紙になっているのが現状です。これをもとに作業して手書きで記録し、後から担当者がシステムやExcelに入力する流れです。
しかし、作業を終えてから事務所まで戻り1枚ずつパソコンに入力するので、現場とのタイムラグが生じる上に、字が汚くて読めなかったり、タイ語が分からなかったりと情報の信ぴょう性が怪しい状態で管理者に上がってくることもあります。そのように現実とデータが乖離してしまうことが課題の1つです。
i-Reporterなら現場で入力した瞬間にデータが反映され、リアルタイムに情報を取得できます。また、テキストを自由に書けるとばらつきが生じるので、「必ず選択式にする」「数字しか入力できない」といった制限を設けておいた方が、データを正確に管理できます。その際に選択肢をタイ語でそろえ、対になる日本語や英語を設定しておくことで言葉の壁も越えられます。
さらに、入力アシスト機能では、カメラで撮影した画像を入れられます。正しく作業が行われたかどうかをチェックでき、不正防止にもつながるでしょう。指示書通りに作業した証拠として入力することで、品質担保の面でも喜んでいただいています。
現場側はi-Reporterでサクサク入力してサーバーへ送信すれば、報告は完了します。管理側は遠隔からでもデータを閲覧し、承認して次のプロセスに進めたり、BIツールとの連携で進捗を可視化したり、ERPと連携して実績データを自動登録したりなど、データを活用できるようになります。 現場側と管理側、それぞれの効率化となり、さらなる改善や横展開につなげられるお客様が多くいます。
VIDEO
タイで「現場の記録ツールといえばi-Reporter」という認知を
― 今後の展望についてお聞かせください。
タイにはIT部門がうまく機能していない企業もありますが、i-Reporterはノーコードでお客様自身が開発、運用を進められるITツールです。しかし、他システムの連携やより効率的に現場全体の改善を進めるにあたっては、技術支援ができるローカルパートナー様の存在は欠かせません。お客様が改善を重ねてシステム利用を継続できるところまで、伴走できるローカルパートナー様との体制強化を重視していきたいです。
またタイでは現時点で、日系企業のご利用が多いですが、非日系企業、タイのローカル企業にも採用いただきたいです。「現場の記録ツールといえばi-Reporter」と認知されるところを目指しています。そのために、タイの市場でどんなことが求められているのか、私たちはどのようなことで貢献できるのかを考え、常に前進していきます。
Previous post
Next post