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マレーシア法人税の税制優遇措置とは?進出前に知る税率と申告の注意点

マレーシアへ法人進出する際、現地の法人税制を正確に理解することが成功の鍵となります。マレーシアの法人税は、中小企業優遇税率や多様な税制優遇措置により、実効税率を大幅に軽減できる可能性があります。さらに2025年からはグローバル・ミニマム課税制度の導入により、多国籍企業には新たな税務対応が求められます。本記事では、マレーシアの法人税の基本税率からインセンティブ、申告手続きの注意点まで、進出前に知っておくべき重要なポイントを詳しく解説します。

マレーシア法人税の基本税率と中小企業優遇制度

マレーシアの法人税制は、企業規模に応じた段階的な税率構造を採用しています。標準的な法人税率は24%ですが、中小企業に対しては大幅な優遇措置が設けられています。

標準法人税率の適用範囲

マレーシアの標準法人税率は24%で、これが基本的な法人税率となります。この税率は、中小企業優遇制度の対象外となる企業や、課税所得が一定額を超える企業に適用されます。法人税率24%は東南アジア諸国の中でも競争力のある水準であり、日本の法人実効税率約30%と比較しても有利な環境といえます。

この標準税率は、マレーシア国内で設立された法人および外国法人のマレーシア支店に適用されます。納税義務者となる企業は、マレーシア源泉所得について法人税を納付する義務があります。

中小企業優遇税率の条件

マレーシアでは中小企業に対して段階的な優遇税率を設定しています。この優遇制度を受けるためには、払込資本金2,500,000リンギット以下かつ年間売上5,000万リンギット以下という条件を満たす必要があります。

具体的な税率構造は、課税所得150,000リンギットまでは15%、150,001リンギットから600,000リンギットまでは17%、600,001リンギット超の部分については24%の税率が適用されます。この段階的税率により、中小企業の税負担を大幅に軽減することが可能です。

中小企業優遇制度の除外規定

中小企業優遇税率の適用には重要な除外規定があります。グループ内に払込資本金2,500,000リンギット超の親会社等がある場合や、特定の株主構成の場合には優遇税率の適用外となります。

また、個人株主が50%超を保有する場合でも、その個人が他の法人の50%超を保有している場合には適用除外となる可能性があります。マレーシアでの法人設立時には、株主構成や関連会社の資本構成を慎重に検討することが重要です。

マレーシア法人税における税制優遇措置

マレーシア政府は外国投資を促進するため、業種や地域、事業内容に応じた多様な税制優遇措置を提供しています。これらのインセンティブを適切に活用することで、法人税負担を大幅に軽減することが可能です。

パイオニア・ステータスによる法人税免除制度

パイオニア・ステータスは、新規事業や戦略的産業に対する優遇制度です。この制度では、認定を受けた企業に対して法定所得の70%について法人税が免除されます。

免税期間は原則として5年間ですが、特定の戦略プロジェクトについては10年間の免税期間が認められる場合があります。未利用の資本控除や累積損失は免税期間終了後も繰越可能であり、長期的な税務メリットが期待できます。

対象となる産業には製造業、農業、医薬品産業、観光業などが含まれており、国家的・戦略的に重要な事業や研究開発活動も対象となる場合があります。

投資税額控除(ITA)による設備投資優遇

投資税額控除(Investment Tax Allowance:ITA)は、設備投資に対する税額控除制度です。通常の控除率は適格資本的支出の60%ですが、特定プロジェクトについては100%の控除率が適用されます。

控除対象は毎年の法定所得の70%が上限となりますが、特定プロジェクトでは100%まで控除可能です。未利用の控除枠は翌年以降に繰越可能であり、長期的な税務計画に活用することができます。この制度は、パイオニア・ステータスとの同時利用はできないため、事業計画に応じた最適な選択が重要です。

地域特化型優遇措置の活用方法

マレーシアでは特定地域への投資を促進するため、地域特化型の優遇措置も充実しています。低開発地域での製造・サービス活動に対しては、最長15年間の法人所得税免除が認められます。

例えば、マルチメディア・スーパー・コリドー(MSC)ステータスでは、IT関連事業者に対して最長10年間の法人所得税免除が提供されます。これらの地域特化型優遇措置では外国資本の出資比率規制の適用除外も認められており、外資系企業にとって大きなメリットとなります。

また、イスカンダル開発地域(IDR)やトゥン・ラザク・エクスチェンジ(TRX)などの特定開発地域でも、独自の優遇措置が設けられています。

プリンシパル・ハブ制度による統括拠点優遇

プリンシパル・ハブ制度は、戦略的事業活動を統括・支援する拠点に対する優遇措置です。この制度では、払込資本金250万リンギ以上、年間売上3億リンギ以上などの厳格な要件を満たす必要があります。

認定を受けた企業には、法人税率の大幅軽減(5%、10%)が適用されます。さらに外資規制の適用除外や外国為替管理の優遇措置も受けられるため、地域統括拠点として機能する企業にとって非常に魅力的な制度です。

2025年導入のグローバル・ミニマム課税制度とその影響

2025年から導入予定のグローバル・ミニマム課税制度は、多国籍企業の税務戦略に大きな変化をもたらします。この制度により、従来の軽課税国への利益移転戦略の見直しが必要となります。

グローバル・ミニマム課税制度の基本概要

グローバル・ミニマム課税制度は、年間総収入7億5千万ユーロ相当額以上の多国籍企業グループを対象とした国際的な税制改革です。この制度では、各国・地域において実効税率15%の最低税率が確保されることを目的としています。

マレーシアにおいても、軽課国子会社等で実効税率が15%未満の場合、不足分をトップアップ課税として親会社所在国で徴収される仕組みが導入されます。これにより従来の税務優遇措置の効果が制限される可能性があります。

上乗せ税(QDMTT)の導入と影響

マレーシアでは、グローバル・ミニマム課税制度に対応するため、適格国内最低上乗せ税(QDMTT)の導入が検討されています。この制度により、マレーシア国内での実効税率が15%未満の場合には追加課税が行われます。

QDMTTの導入により、従来のタックスインセンティブによる実効税率軽減効果は制限されることになります。ただし、実質的事業活動に基づく所得控除により、一定の軽減措置は維持される見込みです。

多国籍企業が取るべき対応策

グローバル・ミニマム課税制度の導入に向けて、多国籍企業は税務戦略の見直しが急務となっています。従来の軽課税国戦略から、実質的事業活動に基づいた税務計画への転換が必要です。

マレーシア進出する際は、グローバル・ミニマム課税制度下でも有効な投資促進政策の活用を検討すべきです。実質的事業活動の構築と税務コンプライアンス体制の強化が、今後の税務リスク管理において重要な要素となります。

マレーシアの法人税申告手続きと実務上の注意点

マレーシアでは自己申告制度が採用されており、企業は自らの責任で適切な申告と納税を行う必要があります。申告期限の遵守と適切な記録保管は、税務コンプライアンスの基本要件です。

法人税申告期限と納付手続き

マレーシアの法人税申告期限は、会計年度終了後7ヶ月以内と定められています。例えば、12月決算の企業の場合、翌年7月末までに確定申告書の提出および納付を完了する必要があります。

申告手続きは内国歳入庁(IRBM)に対して行い、オンラインシステム「MyTax」を通じて電子申告が可能です。申告期限の遅延には重い罰則が科せられるため、期限管理を徹底することが重要です。

また、年間予想税額が2,500リンギット以上の場合には、翌年度の予定納税も必要となります。予定納税は2回に分けて納付し、確定申告時に精算を行います。

記録・書類保管義務と調査対応

マレーシアでは法人に対して、会計帳簿や証憑類の最低7年間保管が義務付けられています。これらの記録は、IRBM(内国歳入庁)による税務調査時には速やかに提示できるよう整備しておく必要があります。

保管すべき書類には、総勘定元帳、現金出納帳、売上台帳、仕入台帳、固定資産台帳、契約書、請求書、領収書などが含まれます。デジタル化された記録についても、適切な管理システムによる保管が要求されます。

IRBMによる調査の対応では、要求された書類の迅速な提出と誠実な対応が重要です。虚偽申告や記録隠匿には重い刑事罰が科せられる可能性があるため、透明性の確保が不可欠です。

会計年度と決算期変更の手続き

マレーシアでは、法人の会計年度は12ヶ月を超えてはならないと規定されています。新設法人の最初の会計年度については、設立日から最初の決算日までの期間が18ヶ月を超えない範囲で設定可能です。

決算期の変更を行う場合には、IRBMへの事前届出が必要です。変更理由の妥当性と税務上の影響について慎重に検討し、必要に応じて専門家のアドバイスを求めることが推奨されます。決算期の変更により申告期限や優遇措置の適用に影響が生じる可能性があるため、十分な検討が必要です。

その他の重要な税制と課税関係

マレーシア進出においては、法人税以外にも様々な税制が適用されます。売上・サービス税、印紙税、源泉徴収税など様々な税制の理解と適切な対応が、総合的な税務コストの最適化において重要です。

売上税(SST)とサービス税の仕組み

マレーシアでは2018年9月から売上・サービス税(SST)制度が復活しています。売上税(Sales Tax)は製造業者および輸入業者に課される税で、一般的な税率は10%、特定品目については5%が適用されます。

サービス税(Service Tax)は特定のサービス業に対して6%の税率で課されます。対象となるサービスは、法律・会計・建築・エンジニアリングサービス、広告、IT関連サービスなどです。SSTの適用範囲と税率を正確に把握し適切な価格設定を行うことが事業運営において重要です。

印紙税と不動産取引への影響

印紙税は、契約書や法的文書の作成時に課される税です。特に不動産の売買・賃貸借契約、ローン契約、保険契約、会社設立関連書類などが課税対象となります。

不動産取引における印紙税率は取引金額に応じて段階的に設定されており、外国人による不動産取得には追加的な規制と課税が適用される場合があります。法人設立時の定款や株主間契約書についても印紙税の対象となるため、事前の税額計算が必要です。

源泉徴収税の対象と税率

マレーシアでは、非居住者に対する特定の支払いについて源泉徴収税が課されます。配当金、利息、ロイヤリティ、技術指導料、管理報酬などが主な対象となります。

源泉徴収税率は支払いの種類により異なり、配当課税制度変更点として2025年案では新たな規制も検討されています。二重課税防止条約の適用により税率軽減が可能な場合もあるため、条約の内容を確認しましょう。適切な源泉徴収と税務申告により二重課税を回避することができます。

まとめ

マレーシアの法人税制は、標準税率24%を基本としながら、中小企業優遇制度や多様なインセンティブにより、企業にとって有利で競争力のある税制環境が整っています。 しかし、2025年導入予定のグローバル・ミニマム課税制度は、特に多国籍企業の税務戦略に大きな影響を与えることが予想されます。

  • 中小企業優遇税率(15%~17%)の活用には資本構成や株主構成の慎重な検討が必要
  • パイオニア・ステータスやITAなどの税制優遇措置により大幅な税負担軽減が可能
  • グローバル・ミニマム課税制度により従来の軽課税戦略の見直しが必要
  • 自己申告制度下での適切な記録保管と期限管理が税務コンプライアンスの基本
  • 法人税以外のSST、印紙税、源泉徴収税も含めた総合的な税務計画が重要

マレーシア進出を検討される企業は、これらの税制を総合的に理解し、自社の事業計画に最適な税務戦略を構築することが成功の鍵となります。複雑な税制要件や頻繁な制度変更に対応するため、現地の税務専門家との連携を強化し、最新の税制情報に基づいた適切な税務コンプライアンス体制を構築することを強く推奨いたします。

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