マレーシアは東南アジアの中心に位置し、ASEAN諸国へのビジネス展開の拠点として注目されています。特に展示会市場は食品関連、製造業、IT分野など多様な業種で大規模なイベントが開催されており、日本企業にとって新規顧客開拓や市場調査の絶好の機会となっています。本記事では、マレーシア展示会の主要イベントの紹介から出展申込の具体的な手順、費用の目安、そして成功につながる準備のポイントまでを詳しく解説します。
マレーシアは東南アジア有数の展示会開催国として、年間を通じて多様な業種の国際見本市が開かれています。首都クアラルンプールを中心に、最新の展示施設と充実したインフラが整っており、ASEAN市場への足がかりとして日本企業の参加も年々増加しています。
マレーシアの展示会に出展する最大のメリットは、ASEAN各国からのバイヤーや企業関係者と直接商談できる点にあります。地理的にASEANの中心に位置するため、タイやシンガポール、インドネシアなど周辺国からの来場者も多く、一度の出展で複数国への市場調査やビジネスマッチングが可能です。
また、マレーシアは多民族国家であり、英語が広く通じるビジネス環境が整っているため、初めての海外展示会でもコミュニケーションの障壁が比較的低い点が魅力です。特にハラール認証制度(イスラム教の戒律に則って製造・処理された製品であることを、第三者機関が証明する制度)が確立されており、イスラム市場への参入を検討する企業にとっては重要なテストマーケットとなります。
マレーシアの展示会は主にクアラルンプール市内の2大会場で開催されています。国内最大規模のMITECには大型の国際見本市が集中しています。もう一方のKLCCは都心部に位置し、アクセスの良さから中規模の専門展示会に適しています。
開催時期は業種により異なりますが、7月から9月にかけて食品関連の大型展示会が集中する傾向があります。また、ハラール産業の最大級イベントであるMIHASは例年秋に開催されます。年間スケジュールを事前に確認し、自社のビジネスサイクルや予算編成に合わせた計画を立てることが重要です。
マレーシアの展示会は大きく分けて、食品・ハラール関連、製造業・工業系、IT・テクノロジー、建築・建材、小売・消費財の5つのカテゴリーに分類されます。それぞれの展示会は業界特性に応じた規模や来場者層を持っています。
食品・ハラール関連の展示会は商談成立額が大きく、ASEAN全域からバイヤーが集まるため新規取引先開拓に適している点が特徴です。一方、製造業系の展示会は技術交流やサプライチェーン構築を目的とした出展が多く、長期的なパートナーシップを構築する場として活用されています。
マレーシアでは年間を通じて多様な業種の展示会が開催されており、それぞれがターゲット市場と特色を持っています。ここでは業種別に代表的な展示会を紹介し、出展を検討する際の参考となる情報をまとめます。
製造業分野では、ARCHIDEX(建築・建材展示会)が主要イベントとして位置づけられています。2025年は7月3日からMITECで開催され、建設資材や設備機器、インテリアデザインまで幅広い製品が出展されます。
この展示会には東南アジア各国から建設プロジェクトの発注者や設計事務所、施工業者が多数来場するため、大型プロジェクトへの参画機会を探る場として活用できます。特にマレーシア政府が進める都市開発計画に関連した商談が期待できる点が特徴です。
マレーシアのデジタル化推進に伴い、IT・テクノロジー分野の展示会は年々規模を拡大しています。クラウドサービスやサイバーセキュリティ、IoT関連技術など、最新のデジタルソリューションが集まります。代表的な展示会には、MTE(マレーシアテクノロジーエキスポ)があります。2026年の開催はクアラルンプールで2026年4月9日から開催が予定されています。
これらの展示会では政府機関や大手企業の情報システム部門が来場するため、BtoB取引を目的とした出展が中心となります。ASEAN地域のデジタルトランスフォーメーション需要に対応する製品やサービスを提供する企業にとって、市場開拓の重要な機会となっています。
食品関連ではMIHAS、Food & Drinks Malaysia by SIAL、MIFBの3大展示会が開催されています。MIHASはハラール産業に特化した世界最大級のイベントで、2024年の商談成約額は43億リンギットに達し、前年比34%増を記録しました。
Food & Drinks Malaysia by SIALは国際的なSIALブランドの一環として開催され、2025年は7月1日から3日間の開催されました。MIFBはマレーシアを代表する食品見本市として、2025年7月30日から8月1日までKLCCで行われました。展示面積は18,000平方メートル(ネット)が想定されており、日本からの食品輸出を検討する企業にとって重要な商談の場となります。これらの展示会は開催時期や会場規模が年次で変動する可能性があるため、出展計画の際は主催者の最新リリースを必ず確認しましょう。
マレーシアの展示会に出展するには、主催者への申込から現地での運営まで、段階的な準備が必要です。ここでは具体的な手続きの流れと、スムーズな出展を実現するための実務的なポイントを解説します。
出展する際は以下の流れで契約までを行いましょう。
契約内容には搬入出の時間制限や装飾の高さ制限、床荷重の上限など細かな規定が含まれているため、事前に確認して装飾設計に反映させることが重要です。特に大型の展示物や重量物を搬入する場合は、会場の構造的制約を事前確認しておく必要があります。
出展者とスタッフの渡航に際しては、滞在期間や活動内容に応じたビザの取得が必要です。短期の視察や運営業務であれば多くの場合ビザ免除または観光ビザで対応できますが、技術指導や専門的な作業を伴う場合はProfessional Visit Passの取得が求められる可能性があります。
展示品の通関については、ATAカルネ制度を活用することで一時輸入手続きを簡素化できます。ATAカルネは物品を一時的に外国に持ち込む際の通関書類として国際的に認められており、関税の免除や通関手続きの迅速化に効果があります。ただし対象品目や条件があるため、事前に商工会議所で確認することが必要です。
マレーシアの展示会出展に際して準備すべき書類は多岐にわたります。主催者への提出書類として、出展申込書、企業登記証明書の英訳版、出展品目リスト、ブースレイアウト図などが求められます。これらは契約段階で必要となるため、早めに準備を始めることが推奨されます。
通関関連では商業送り状、パッキングリスト、原産地証明書が基本的な必要書類です。ATAカルネを利用する場合はカルネ証書が通関書類として機能しますが、品目によっては別途許可証が必要となる場合があります。食品を出展する際はハラール認証書やFDA相当の衛生証明が求められることもあります。
出展者とスタッフの渡航に関しては、パスポート、航空券予約確認書、宿泊施設の予約証明が必要です。Professional Visit Passを申請する場合は、雇用契約書、専門資格証明書、受入企業からの招聘状などの追加書類が求められます。必要書類は展示会の種類や出展品目により異なるため、主催者と入国管理局のウェブサイトで最新要件を確認しましょう。
展示会出展には様々なコストが発生し、総予算の把握と効果的な投資配分が成功の重要な要素となります。ここでは費用の内訳から補助金の活用、現場での成果最大化まで、実践的なポイントを詳しく解説します。
マレーシア展示会の出展費用は、ブース料、装飾・施工費、人件費、物流費、宿泊・渡航費など複数の要素から構成されます。ブース料は展示会の規模や知名度により大きく異なり、参考例として旅行博MATTA Fairでは3メートル×3メートルのブースで2,500から5,600リンギット程度です。保証金や登録料は別途請求されます。
装飾・施工費用は展示ブースのデザインや仕様により大幅に変動します。一般的には、カスタムブース9平方メートルで約14,000リンギット前後、27平方メートルで約30,000リンギット程度が目安です。
人件費については、日本からの派遣スタッフの渡航費と宿泊費、現地で雇用する通訳やコンパニオンの人件費が含まれます。物流費用は展示品の輸送、保険、通関手数料が該当し、重量や体積により変動します。初出展の総予算目安は50,000から150,000リンギットのレンジが一般的ですが、展示会の種類や装飾レベル、出展規模により大きく変動するため、必ず複数の施工会社から見積もりを取得して比較検討することが推奨されます。
マレーシア企業が国内の展示会に出展する場合、MATRADEが提供するMarket Development Grant(MDG)という償還型補助金制度を利用できます。MDGは輸出促進を目的とした支援で、生涯上限が300,000リンギットに設定されています。対象経費には参加料、装飾費、渡航・宿泊費などが含まれますが、適用には一定の条件があります。
日本企業がマレーシア展示会に出展する場合、直接MDGの対象とはなりませんが、日本国内にも海外展示会出展を支援する補助金制度が存在します。JETROや各地方自治体、商工会議所が提供する補助金プログラムを調査し、申請要件を満たす場合は積極的に活用することで出展コストを大幅に削減できます。
展示会での効果的な商談には、適切な人員配置が不可欠です。マレーシアの展示会では英語が主要なビジネス言語として使用されますが、来場者の中にはマレー語や中国語を好む方もいるため、多言語対応できるスタッフを配置することで商談機会を最大化できます。通訳の手配については、単に言語を翻訳するだけでなく、自社の製品やサービスを理解し技術的な説明ができる人材を選ぶことが重要です。
また宗教や文化への配慮も重要な要素です。マレーシアではイスラム教徒が多数を占めるため、ハラール対応の飲食物を提供する、礼拝の時間に配慮する、適切な服装規定を設けるなどの配慮が求められます。
展示会での成果を最大化するには、明確なKPI設定と戦略的な準備が必要です。出展の目的を「名刺獲得数」「商談件数」「見積提出数」「受注予定額」などの具体的な数値目標として設定し、それを達成するための活動計画を立てます。
会期の6か月から12か月前には、ターゲットとする業界や国の潜在顧客に対して事前招待を行います。ブースの位置選定も重要で、主通路に面した角ブースは来場者の目に留まりやすく、商談機会が増える傾向があります。
ブースデザインでは、遠くからでも認識できるアイキャッチ要素、製品の実演やデモンストレーション、短時間で訴求ポイントを伝える資料などを用意します。来場者のスクリーニングも効果的で、決裁権限の有無、導入時期、予算規模などを早期に確認し、見込み度の高い顧客に優先的に時間を配分することで商談の効率が向上します。
展示会終了後48時間以内に、獲得した名刺やリード情報に対してお礼のメールと資料を送付することが基本です。この初期接触のスピードが商談化率に大きく影響します。その後3日、7日、14日の多段階フォローアップを実施し、関心度に応じて事後対応を行いましょう。
展示会のROI評価も重要です。名刺獲得数、商談件数、見積提出数、受注額と受注率、ブース来場単価、受注獲得単価などのKPIを測定し、投資対効果を定量的に分析します。この評価結果を次回の出展計画に反映させることで、継続的な改善サイクルを実現できます。
マレーシアの展示会は、ASEAN市場への足がかりとして日本企業にとって重要なビジネス機会を提供しています。本記事では主要イベントの特徴から出展申込の具体的な手順、費用の目安、そして成果を最大化するための戦略まで詳しく解説しました。
展示会出展を成功させるには、十分な準備期間と明確な目標設定、そして文化や商習慣への理解が不可欠です。初めての海外展示会でも、本記事で紹介した実践的なポイントを押さえることで、効果的なビジネス展開が実現できます。
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