マレーシアは、安定した経済成長、充実したインフラ、そして東南アジアにおける戦略的な拠点としての地位により、海外進出を目指す日本企業や起業家にとって魅力的な選択肢となっています。日本との時差はわずか1時間で、多言語環境であり英語が比較的通じることから、ビジネスコミュニケーションの障壁も低いのが特徴です。本記事では、マレーシアでの会社設立の手順から必要な資本金、ビザ取得の条件、そして事業を成功させるための実践的なアドバイスまで、起業に関する重要な情報を幅広く解説します。
東南アジアの中心に位置するマレーシアは、国際ビジネス拠点として注目を集めています。その地理的・文化的背景と経済状況・投資環境の両面から解説します。
経済面では、製造業からサービス業、IT産業まで幅広い分野が発展しており、特に近年はデジタル経済の成長が著しいのが特徴です。
マレーシアは東南アジアに位置し、マレー半島部と、ボルネオ島北部のサバ州・サラワク州からなる連邦制国家です。多民族国家であり、マレー系、中国系、インド系など多様な民族が共存しています。この多様性がビジネス環境にも反映され、グローバルな視点を持った事業展開が可能です。
また、東南アジアの中心に位置し、シンガポール、タイ、インドネシアなど主要市場へのアクセスが良好です。クアラルンプール国際空港からは、アジア主要都市への直行便が多数運航されており、地域統括拠点としての利便性が高いことが大きな魅力となっています。
文化面では、イスラム教を国教としつつも、仏教、ヒンドゥー教、キリスト教なども共存する多宗教社会です。ビジネスシーンでは、英語が広く使用されており、日本人にとっても言語面でのハードルは比較的低いといえます。ただし、宗教的・文化的配慮が必要な場面もあるため、現地の習慣や価値観への理解が重要です。
マレーシアの経済は2025年現在、年間4〜5%程度の安定した成長率を維持しています。一人あたりGDPは東南アジアでシンガポールに次ぐ水準で、中間所得層の拡大が消費市場を活性化させています。
製造業からサービス業、IT産業まで幅広い分野が発展しており、特に近年はデジタル経済の成長が著しいです。マレーシア政府は「マレーシア第12次計画(2021-2025)」を通じて、高付加価値産業や技術革新を推進しており、外国企業への投資インセンティブも充実しています。
投資環境においては、World Bank社の「Doing Business」ランキングで常に高評価を得ており、ビジネスのしやすさが国際的に認められています。法的枠組みは英国法を基礎としており、透明性と予測可能性が比較的高いことも外国企業にとって安心材料です。マレーシア投資開発庁(MIDA)を通じて、産業別の投資インセンティブも提供されています。
マレーシアでの起業を検討する際、様々な利点があります。これらのメリットを把握し、事業計画をより戦略的に構築しましょう。
日本からマレーシアへのフライトは約7時間と比較的短く、時差もわずか1時間です。このため、日本本社との連携がスムーズに行えるという大きな利点があります。また、マレーシアはASEAN諸国の中心に位置し、周辺国への市場アクセスが容易であることから、東南アジア全域をターゲットとしたビジネス展開の拠点としても最適です。
クアラルンプール国際空港は東南アジアの主要ハブの一つであり、地域内外への充実した航空ネットワークを持っています。物流面でもマラッカ海峡に面した地理的優位性から、グローバルなサプライチェーンの構築に適しています。
シンガポールと比較して、マレーシアは全般的に事業コストが低いことが特徴です。オフィス賃料、人件費、生活費などの事業運営コストが比較的抑えられるため、初期投資を最小限に抑えたい起業家にとって魅力的な選択肢となります。
例えば、クアラルンプールの一等地におけるオフィス賃料は、シンガポールの約3分の1程度です。また、エンジニアなど専門職の人材採用においても、同等のスキルセットを持つ人材をより低コストで確保できる可能性があります。
マレーシアには優秀な若年層人口が豊富であり、特に理系分野の高等教育を受けた人材を確保しやすい環境があります。マレーシア政府は教育への投資を積極的に行っており、テクノロジーやビジネス分野で国際競争力のある人材育成に力を入れています。
多くのマレーシア人は英語、マレー語に加えて中国語などの複数言語を話すことができ、多言語・多文化環境でのビジネス展開に適した人材を採用できることも大きな強みです。また、日本企業や日系企業に対する親和性も高く、日本式のビジネス慣行に適応しやすい傾向があります。
マレーシアで事業を展開する際には、複数の事業形態から選択することができます。それぞれの形態には異なる特徴、メリット、デメリットがあり、事業目的や将来の展望に応じて最適な形態を選ぶことが重要です。
駐在員事務所は、本格的な事業展開の前の市場調査や情報収集を目的とした拠点です。この形態では営利活動が認められておらず、マレーシア国内での売上を上げることはできません。主に市場調査、製品プロモーション、業界情報の収集などの活動に限定されます。
設立手続きは比較的シンプルで、マレーシア投資開発庁(MIDA)への申請が必要です。最長3年間の運営が認められており、その間に本格的な事業展開の判断を行うことができる点が大きなメリットです。
支店は日本の法人が直接マレーシアで展開する形態で、法的には本社と同一の事業体とみなされます。支店形態の最大の特徴は、独立した法人格を持たないことです。そのため、本社が支店の債務や法的責任に対して直接責任を負うことになります。
支店の設立には、会社登記所(Companies Commission of Malaysia、SSM)への登録が必要です。支店形態は特定の業種(銀行や保険など)では一般的ですが、小売業や飲食業などでは許可されない場合があります。税務面では、マレーシア国内で発生した所得に対して法人税が課され、利益送金に対して源泉税が課される可能性がある点に注意が必要です。
マレーシアでの最も一般的な事業形態は、株式有限責任会社(Sendirian Berhad、Sdn. Bhd.)の設立です。この形態では、株主の責任は出資額に限定され、会社は独立した法人格を持ちます。現地法人は自由度が高く、ほとんどの事業活動が可能となります。
設立には最低2名の取締役(うち1名はマレーシア居住者)と、会社秘書役(マレーシア在住の有資格者)が必要です。100%外資の現地法人設立が可能な業種が多いことも、日本企業にとって大きなメリットです。ただし、業種によっては外資出資比率に制限がある場合もあるため、事前に確認が必要です。
マレーシア企業とのパートナーシップを通じて事業を展開する合弁会社の形態も選択肢の一つです。法的には通常、株式有限責任会社として設立されますが、出資比率をマレーシア側と外国企業側で分け合う点が特徴です。
合弁会社の大きなメリットは、現地パートナーの市場知識、人脈、インフラを活用できる点です。特に、外資規制のある業種(小売業の一部など)や、政府調達案件に参入する場合には有利になる場合があります。ただし、経営方針や利益配分に関する合意形成が重要であり、パートナー選びには慎重な検討が必要です。
マレーシアでの会社設立は、体系的なプロセスに従って進められます。以下では、その具体的な流れと各ステップのポイントを解説します。
会社設立の第一歩は、事業計画の策定と事前調査です。まず、ターゲット市場、競合状況、予想される収益など、基本的なビジネスプランを明確にします。また、外資規制の確認も重要です。業種によっては外資出資比率に制限がある場合や、特定のライセンスが必要な場合があります。
資本金計画も慎重に検討する必要があります。法律上の最低資本金は2リンギット(日本円で約70円)と低いものの、外国人の就労ビザ取得を伴う場合は、業種に応じて実質的に50万〜100万リンギットの資本金が必要となる場合が多いです。加えて、マレーシア在住の会社秘書役を任命する必要があるため、事前に適切な人材を確保しておくことが重要です。
具体的な会社設立手続きの最初のステップは、希望する会社名の使用許可申請(ネームサーチ)です。これはマレーシア会社登記所(SSM)のオンラインポータルを通じて行います。申請料は50リンギットで、申請後1〜2営業日で結果が通知されます。
会社名が承認されると、30日間の予約期間が与えられます。この期間内に登記手続きを完了させる必要があります。会社名は既存の会社名と同一または類似していないこと、公序良俗に反しないことなどの条件があります。また、特定の語句(「Royal」「Bank」「University」など)の使用には別途許可が必要な場合もあります。
会社名が承認されたら、次のステップは正式な登記申請です。これには「スーパー・フォーム」と呼ばれる標準申請書をSSMのオンラインシステムから提出します。申請に必要な主な書類は以下の通りです。
登記申請料は1,000リンギットで、オンラインでの支払いが可能です。書類に不備がなければ、通常1〜3営業日で登記が完了し、電子的な設立証明書が発行されます。
会社設立後も、いくつかの重要な手続きが必要です。まず、会社印を作成し、法人銀行口座を開設します。銀行によって要件は異なりますが、一般的に設立証明書、定款、取締役会決議、取締役のパスポートなどの書類が必要です。
次に、税務登録を行います。マレーシア国税庁(LHDN)での法人税登録と、該当する場合は売上・サービス税(SST)の登録が必要です。また、従業員を雇用する予定がある場合は、従業員積立基金(EPF)と社会保障機構(SOCSO)への登録も必要となります。
外国人取締役や従業員がいる場合は、就労許可の申請も必須です。これには資本金要件や、場合によってはマレーシア人雇用の条件が課される場合があります。業種によっては特定のライセンスや許可(例:製造業ライセンス、小売業ライセンスなど)の取得も必要です。
マレーシアで会社を設立する際、資本金要件と外資規制は事業計画において最も重要な検討事項の一つです。業種や事業目的によって必要な資本金額や外資出資比率の制限が異なるため、事前に十分な調査と理解が必要です。
マレーシアの会社法上、株式有限責任会社の法定最低資本金は2リンギットと非常に低く設定されています。しかし、実務上は様々な要因によってより高額の資本金が必要となります。特に外国企業が子会社を設立する場合や、外国人取締役・従業員の就労許可を取得する場合は、業種に応じた最低資本金要件が適用されます。
一般的な資本金要件は以下の通りです。
これらの金額は一般的な目安であり、実際には事業の規模や雇用する外国人の数によって異なる場合があるため、最新情報を関連当局(マレーシア投資開発庁、移民局など)で確認することが重要です。
マレーシアでは多くの業種で100%外資による事業が認められていますが、一部の分野では外資出資比率に制限があります。外資規制のある主な業種は以下の通りです。
また、「ブミプトラ政策」に基づく制限も一部存在し、政府調達や特定の事業ライセンスについては、マレー系マレーシア人の参加が条件となる場合があります。ただし、近年はグローバル化の流れを受けて徐々に規制緩和が進んでいる傾向にあります。
資本金は通常、会社設立後に開設した法人銀行口座に払い込みます。払込資本金は会社の帳簿上で明確に記録し、必要に応じて当局に証明できるようにしておく必要があります。特に就労許可申請時には、資本金の払込証明が求められることが一般的です。
資本金として認められるのは現金のみではなく、場合によっては設備や知的財産などの非現金資産も含めることができます。ただし、非現金資産の場合は適切な評価と文書化が必要です。資本金の使途に関する明確な制限はありませんが、事業運営のための合理的な支出(オフィス賃料、設備購入、従業員給与など)に使用することが想定されています。
マレーシアで事業を展開する際、外国人経営者や従業員が適切なビザと就労許可を取得する必要があります。ビザの種類や申請条件を理解し、計画的に手続きを進めることが大切です。
マレーシアで働く外国人に対して発行される主な就労許可は「Employment Pass(EP)」です。EPは職位や給与に応じてカテゴリーI、II、IIIに分類されています。主な区分は以下の通りです。
EP申請には、通常、会社の資本金要件を満たしていることが前提条件となります。また、業種によっては、マレーシア人雇用数と外国人雇用数の比率に関する要件もあります。申請は基本的に雇用主が行い、承認までには通常4〜8週間程度かかります。
従来のEP以外にも、起業家向けの特別なビザプログラムが存在します。そのうちの代表的なものは「Malaysia Tech Entrepreneur Programme(MTE-P)」です。このプログラムは、テクノロジー関連の起業家や投資家を対象としており、通常のEPよりも柔軟な条件で最長5年間のビザが取得可能です。
また、「Malaysia My Second Home(MM2H)」プログラムも選択肢の一つです。これは厳密には就労ビザではありませんが、最長10年間の長期滞在が可能で、特定条件下で事業活動も認められています。2025年の最新要件では、一定額の固定預金(外国人60歳未満の場合50万リンギット以上)と最低月収1万リンギット以上などの財政要件があります。
EP取得者の配偶者や18歳未満の子供は、「扶養家族パス」を申請することができます。配偶者がマレーシアで就労を希望する場合は、別途「配偶者就労許可」の取得が必要です。
また、両親や義理の親などの扶養家族には「長期滞在パス」が発行される場合があります。これらの家族ビザは通常、主たるビザ保持者(EP保持者)の滞在期間に合わせて発行されます。家族全員の在留資格を一括で管理・更新できる点が、マレーシアの家族ビザシステムの利点の一つです。
ビザ申請は通常、マレーシア移民局またはマレーシア・デジタル・エコノミー・コーポレーション(MDEC)などの関連機関を通じて行います。近年はオンライン申請システムが導入され、手続きの電子化が進んでいます。
申請には、パスポート、写真、雇用契約書、会社登記証明書、銀行残高証明書など、多数の書類が必要です。申請から承認までの期間は通常4〜8週間ですが、優先審査制度を利用すると短縮できる場合もあります。更新申請は期限切れの少なくとも3か月前から行うことが推奨されています。
マレーシアでビジネスを展開する上で、現地の税務・会計制度を理解することは非常に重要です。効率的な税務計画と正確な会計処理は、事業の財務健全性と法令遵守の両面において欠かせません。
マレーシアの税制は属地主義を採用しており、国内で発生した所得に対してのみ課税されるのが基本原則です。海外で発生し国内に送金された所得については、一部の例外を除き基本的に非課税となります。これは海外展開を考える企業にとって有利な点の一つです。
法人所得税の標準税率は24%ですが、払込資本金250万リンギット以下の中小企業に対しては、課税所得の最初の50万リンギットについて17%の軽減税率が適用されます。特定の産業や地域での投資に対しては、さらなる税制優遇措置が用意されているため、事業計画段階での調査が重要です。
個人所得税は累進課税制で、非居住者に対しては一律30%の税率が適用されます。居住者の場合は0〜30%の累進税率が適用され、年間182日以上マレーシアに滞在していれば通常は税務上の居住者とみなされます。
マレーシアの会計基準は、国際財務報告基準(IFRS)とほぼ整合性のあるマレーシア財務報告基準(MFRS)に基づいています。会計期間は通常12か月で、多くの企業は12月31日を決算日としていますが、企業独自の決算日を設定することも可能です。
すべての株式有限責任会社は、資本金の規模や株主数に関わらず、年次監査が法的に義務付けられています。監査はマレーシア公認会計士協会(MIA)に登録された監査人によって実施される必要があります。監査済み財務諸表は、会計年度末から6か月以内に株主に送付し、送付日から30日以内にマレーシア会社登記所(SSM)に提出しなければなりません。
マレーシアでは2018年9月から、従来の物品・サービス税(GST)に代わり、売上・サービス税(SST)が導入されています。SSTは二部構成となっており、製造業者や輸入業者に対する売上税(税率5%、10%、または特定品目は固定税率)と、特定のサービス提供者に対するサービス税(税率6%)に分かれています。
売上税の課税対象となるのは主に製造業者と輸入業者で、年間売上高が50万リンギットを超える場合に登録が必要です。一方、サービス税は飲食、通信、保険、コンサルティングなどの特定サービスを提供し、年間売上高が50万リンギット(飲食業の場合は150万リンギット)を超える事業者が登録対象となります。
SSTの登録・申告・納税手続きはマレーシア関税局のオンラインポータルを通じて行うことができ、申告は通常2か月ごとに必要です。SSTの仕組みはインボイス方式のGSTとは異なり、事業者間での税額控除の仕組みがないため、コスト構造への影響を事前に検討することが重要です。
マレーシアで事業を開始するにあたり、適切なオフィスの選定と設備の準備は、ビジネスの円滑なスタートのために欠かせません。以下では、オフィス選びから通信環境の整備、人材確保まで、重要なポイントを解説します。
マレーシアでは様々なタイプのオフィススペースから選択することができます。従来型のオフィスビルから、ショップハウス(店舗兼事務所)、サービスオフィス、コワーキングスペースまで、事業規模やニーズに合わせた選択肢があります。
クアラルンプールの主要オフィスエリアは、KLCC(ペトロナスツインタワー周辺)、ブキッビンタン、バンサーサウスなどです。これら主要オフィスエリアでの賃料相場は、1平方フィート当たり月額5〜8リンギット程度です。一方、郊外や地方都市では大幅に安い賃料で物件を確保できる場合が多いです。
オフィス契約では通常2〜3年の賃貸契約が一般的で、契約時には2〜3か月分のデポジットと1か月分の前払い家賃が必要となります。また、印紙税や弁護士費用などの追加コストも考慮に入れる必要があります。登記上の事務所住所として使用する場合は、商業用途として認められた物件であることを確認する必要があります。
初期コストを抑えたい起業家や、主に現場で活動するビジネスの場合、バーチャルオフィスやレンタルオフィスの活用も有効な選択肢です。バーチャルオフィスでは住所の使用権、郵便物の管理、電話応対サービスなどを月額数百リンギットから利用できます。
レンタルオフィスは、家具付きの個室やフレキシブルデスクを、受付、会議室、インターネット環境などの共有設備と共に利用できるサービスです。クアラルンプール中心部では、個室タイプで月額2,000〜5,000リンギット程度、共有デスクタイプで月額500〜1,500リンギット程度から利用可能です。
これらのサービスは、会社設立直後の立ち上げ期や、本格的なオフィス契約前の一時的な拠点として利用するケースが多く見られます。特に市場調査や顧客開拓を優先したい創業期には、固定費を抑えられる柔軟な選択肢として検討する価値があります。
マレーシアの通信インフラは東南アジアの中でも比較的整備されており、高速インターネットや携帯電話ネットワークが主要都市では広く利用可能です。ビジネス向けの光ファイバー接続は月額数百リンギットから契約でき、大手通信事業者としてはTelekom Malaysia、Maxis、Timeなどがあります。
オフィスのIT環境整備では、インターネット接続だけでなく、セキュリティ対策、バックアップシステム、クラウドサービスの活用なども重要な検討事項です。マレーシアでは日系のIT支援企業も多く進出しており、日本語対応のサポートを受けることも可能です。
通信契約では通常1〜2年の契約期間が設定されており、途中解約には違約金が発生する場合が多いため、事業計画に合わせた契約内容の検討が必要です。また、停電対策として、重要機器には無停電電源装置の設置も検討すべきポイントです。
マレーシアでビジネスを成功させるためには、現地のビジネス文化や慣習を理解し、適切な交渉術を身につけることが重要です。多民族国家ならではの独特のビジネス環境と、その中での効果的なコミュニケーション方法について解説します。
マレーシアのビジネス文化は、マレー系、中国系、インド系など多様な民族が共存する社会を反映して、複合的な特徴を持っています。全体的な傾向として、関係性を重視し、直接的な対立を避ける文化があります。ビジネスの成功には、相手との信頼関係の構築が取引内容そのものと同様に重要視されることが多いです。
時間に対する認識も日本とは異なり、やや柔軟な傾向があります。「マレーシア時間」という言葉があるように、約束の時間に少し遅れることは比較的許容されますが、ビジネスシーンでは特に外国企業との取引では時間厳守が期待される場面も増えています。
宗教的・文化的配慮も重要です。マレー系はイスラム教徒が多く、祈りの時間(1日5回)や断食月(ラマダン)、豚肉やアルコールを避けるなどの習慣への配慮が必要です。中国系ビジネスパーソンは関係構築のために食事の場を重視する傾向があり、インド系は家族や文化的背景についての会話を通じて親密さを深める場合が多いです。
マレーシアでの交渉では、以下のポイントを意識することが効果的です。まず、直接的な対立や「ノー」と言うことを避ける文化があるため、相手の意見に対して反対意見を述べる場合には、婉曲的な表現や代替案の提示を心がけましょう。また、決定プロセスは日本よりもトップダウン型になる傾向があり、最終決定権を持つ人物の特定と良好な関係構築が重要です。
契約交渉では、柔軟性をもって臨むことが大切です。マレーシアのビジネスパーソンは交渉の余地を常に残そうとする傾向があり、細部まで厳密に決めようとする日本的なアプローチとは異なる場合があります。また、交渉は通常複数回のミーティングを通じて徐々に進展していくため、即決を迫るのではなく、関係構築の過程として捉えましょう。
契約書の作成においては、英語が法的文書として広く受け入れられていますが、重要な契約には現地の法律事務所のアドバイスを受けることをお勧めします。特に労働契約、知的財産権、紛争解決方法などの条項については、マレーシア特有の法的要件を考慮する必要があります。
マレーシアでのビジネス成功には、良好な人間関係とネットワークの構築が不可欠です。ビジネスミーティングの前後に個人的な会話の時間を設けることが一般的で、家族、趣味、スポーツなどの話題を通じて相手との距離を縮めることが重要視されます。
ビジネスネットワークを広げる上で、業界団体や商工会議所のイベントへの参加も有効な手段です。日本人経営者同士のネットワークとしては、在マレーシア日本国大使館・領事館が把握している日系団体や、ジェトロの現地法人などを通じて情報収集やコネクション作りが可能です。また、マレーシア日本人商工会議所も、会員企業間の交流や情報共有の重要な場となっています。
マレーシアでの起業は、地理的な優位性、親日的な環境、安定した政治経済基盤など、多くの魅力を持つ選択肢です。本記事では、会社設立の手続きから資本金要件、ビザ関連情報、そして成功のための実践的アドバイスまで、マレーシアでの起業に関する幅広いトピックを解説しました。
マレーシアでの起業を検討されている方は、現地パートナーや専門家との連携を通じて、最新の情報を入手しながら計画を進めることをお勧めします。また、実際に現地を訪問して市場調査を行うことも、成功を左右する重要なステップです。
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