人材不足の救世主?タイで建設DXを進めるクラウド録画カメラ「Safie」 | ピリピリ 東南アジア進出をサポート!
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人材不足の救世主?タイで建設DXを進めるクラウド録画カメラ「Safie」

タイでは、高齢化による人材不足に悩む企業が増えています。建設業においては、安全管理や品質管理といった管理業務に時間を割けなかったり、職人の技術継承を進められないといった課題が出てきています。そこで関心が高まっているのが、クラウド録画サービスを活用した遠隔管理や人材育成です。今回は、タイへの進出により、そのサービスを展開するセーフィー株式会社の瀧嶋さんに話を聞きました。


Safie Inc.
タイ駐在員事務所長
瀧嶋 洋祐 氏


 

日本市場シェアの半数を占めるクラウド録画カメラサービス

― 貴社のサービス概要についてお聞かせください。

当社は「映像から未来を作る」というビジョンのもと、クラウド録画サービスを提供しています。カメラに組み込むファームウェアを開発しており、このファームウェアが搭載されたカメラをインターネットに接続すれば、クラウド上に映像がアップロードされます。映像はいつでもどこでもスマホやタブレットから閲覧可能です。




当社の製品は、オンプレミスのカメラと比べてレコーダーが不要で導入しやすい点、セキュリティが強固な点、そして何より拡張性が高い点が特徴です。拡張性の高さは大きなポイントで、ファームウェアの更新による新機能の追加、APIを通じた他システムとの連携、AIによる画像解析などを実現でき、「賢くなるカメラ」と呼んでいます。

AIによる画像解析では、人の動きを検知し、特定のエリアに入る人数をカウントできる機能があります。例えば、小売店ではPOSシステムだけでは捉えられないお客様の動きを捉えマーケティングに活用することが可能です。

2014年に創業してから拡大を続け、現在弊社のクラウドサービスを利用したカメラが日本で23万台以上稼働しており、日本市場におけるクラウド録画カメラサービスのシェアは56.4%(2022年時点)に達しました。導入企業は建設、製造、小売、物流など、多岐にわたります。




 

タイの人手不足をクラウドカメラで効率化・省人化

― なぜ、タイ進出を決められたのでしょうか。

「マーケットの大きさと参入しやすさ」、「現地パートナー企業のつながりや知見」、「社会課題への対応」という3つの理由からです。

タイの防犯監視カメラ市場は十分な規模があり、サービス提供に不可欠な通信インフラが整っていました。また、6,000社以上の日系企業が進出していることから、日本でのユースケースを基に日系企業にご活用頂き、徐々に非日系企業にも拡大していくアプローチがしやすいと考えました。

また、現地でパートナーとなる企業がタイにおける幅広い知見とネットワークを有しており、その知見・ネットワークを活かして事業を拡大していけると考えました。
     
さらに、タイは高齢化による人材不足から、特に管理職やエンジニアなどの不足が顕著になると考えます。こうした課題に対し、人手不足の日本で対応してきたのと同様にクラウドカメラによる業務の効率化や省人化が解決策になるのではないかと考えています。

加えて、タイは製造業や観光業が支えてきた経済からの転換期にあり、新しい産業の創出が求められている状況です。私たちは、クラウドカメラを活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)の促進や、パートナー企業と協力してリアルとデジタルが融合したソリューションを開発することで、新たな価値を提供できると考えています。


― タイ進出における戦略はどのようなものでしょうか。

弊社のプロダクトはインターネットにつなげて利用する固定カメラの「Safie Pro」、カメラとLTEルーターが一体になった「Safie GO」、カメラ、バッテリー、通信機能を備えた小型カメラ「Safie Pocket2」があります。タイでは日本の建設業や製造業で幅広く活用され、利用も簡単なSafie Pocket2シリーズから販売を開始し、Pro、GOとラインナップを拡大していく予定です。





 弊社はクラウドカメラを通じた現場DXの進展を目指していますが、この進展を5つのステップで捉えています。ステップ1では防犯・監視でカメラの導入が進み、次のステップ2で遠隔管理による業務効率化が図れます。

このステップ1、2での活用を着実に推進しつつ、ステップ3での、POSやPLCなど、他のシステムとの連携、ステップ4でのAIを活用したソリューションの提供及び活用に力を入れていきます。最終的にステップ5では他企業と連携して映像を活用したさまざまなソリューションを提供していきます。この5ステップを推進する中でタイでの現場DXを推進し、市場での拡大を目指します。




 

建設現場の遠隔臨場や、日本からの技術サポートを実現

― タイの建設現場における課題はどのようなものでしょうか。

タイの建設現場では、デジタルツールを活用して、業務効率、品質、安全性を高めていく余地が多くあると認識しています。例えば、管理者がいくつかの現場を担当する場合、全ての現場に出向いて品質管理や安全管理を行うことは難しいため、クラウドカメラによる遠隔管理が役立ちます。

日本の大林組様は設置型の「Safie GO」とウェアラブル型の「Safie Pocket2」を導入して遠隔臨場や遠隔管理を行い、移動時間の削減等、業務効率化を実現しています。また、ノウハウの蓄積や技術伝承での利用も推進中です。特に土木の現場では数年に1度しか行われない工事がある中、この作業工程を動画として残しておくことで、マニュアルとして活用したり、技術の伝承に活用できます。




その他にも、「タイムラプス機能」で3日間の映像を3分間に凝縮して工事の進捗を確認する、鉄骨の組み上げなど危険作業を撮影し管理者が不安全行動をチェックする、コンクリート打設などの重要作業を記録し、管理者が品質を確認するといった活用ができます。Safie Pocket2は移動・設置が簡単なため、危険作業や重要作業が見られる場所に柔軟に固定できます。



    
設備工事や設備点検でも活用できます。設備工事や設備点検は遠方や休日に行われることが多く管理者が常に現場に行くことが難しいですが、現場作業員がSafie Pocket2 を首にかけて現場の状況を撮影、管理者が遠隔から見ることで、品質や安全性を担保できます。また、カメラで撮影した映像は工事記録になるので、将来何か問題が発生したときの原因分析や社内の教育でも利用が可能です。

建設現場に限りませんが、タイの現場で問題が起きた場合、日本のスタッフに映像を共有し、原因分析や課題解決のサポートを受けることができます。現地スタッフだけでは解決に時間のかかる問題でも、日本人スタッフの手を借りれば、すぐに解決できることがあります。

一方で、現場スタッフが「自分たちは監視されている」と感じる可能性もあるので、サービスを導入する際には、現場目線でのメリットを伝えることが大切です。業務のサポートであったり、紙で行っていた報告業務を簡略・効率化できるといったメリットを理解してもらえると、利活用は進んでいくと考えます。

 

タイ、ベトナムの2本柱で東南アジア進出を図る

― 今回、同じタイミングでベトナムにも進出しましたが、両国へ進出された理由を教えてください。

それぞれ異なるニーズを持っています。ベトナムは経済が急成長しており、若い労働力が豊富なことから、新しい製品やサービスに対する需要が高まっていると考えています。一方、タイは経済成長が穏やかで、高齢化が進んでいるため、日本と同様にデジタルツールによる業務効率化や省人化のニーズがでてくると考えます。異なるニーズに応えることで、会社としてもグローバル展開をスピーディに進めていきたいと考えています。


― 今後の展望についてお聞かせください。

将来的にはインドネシアなど、他の東南アジア諸国にも展開していきたいと考えていますが、まずはタイとベトナムで事業をしっかりと伸ばしていきます。

また、個人的な思いとして、学生の頃にアジア旅行で日本製品をいくつも目にし、日本企業のプレゼンスの高さを誇らしく感じていました。しかし、昨今ではグローバルで成功している日本のスタートアップは少ないように思います。日系スタートアップとして海外を開拓し、かつてのソニーやトヨタのように、世界中の国々にインパクトを与えられるようになりたいと考えています。他のスタートアップ企業やパートナー企業と協力して日系スタートアップ×グローバルのプレゼンスを高めていきたいです。

 

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