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目標はASEANのビジネスインフラ!請求書管理のデジタル化でSansanが目指す未来

名刺からの顧客情報管理をはじめとする営業DXサービスで知られる、Sansan株式会社。既存の名刺管理サービスに加え、新たにリリースした請求書管理サービス「Bill One」を手に、2022年からタイへの進出を始めています。タイでの「Bill One」の展開においてポイントとなる点や、そもそもなぜタイを選んだのか、また今後の展望についてSansan Global Pte. Ltd. CRO兼タイ駐在員事務所General Managerの千住洋さんにお話を伺いました。

 

あらゆるビジネスシーンのインフラを支えるSansan株式会社

― まず御社の事業概要についてお聞かせください。

千住さん:
当社は「出会いからイノベーションを生み出す」というミッションのもと、人と人、そして企業と企業をつなぐ様々なソリューションをご提案しています。主な事業は、名刺管理と営業DXツールの「Sansan」、請求書管理サービスの「Bill One」、契約書管理サービスの「Contract One」、そしてキャリアプロフィールアプリの「Eight」です。誰も想像しなかった場所に新しい道を切り拓き、仕事になくてはならないビジネスインフラを提供することを目指しています。
 

Sansan Global Pte. Ltd. CRO兼タイ駐在員事務所General Manager千住洋さん


― 御社がタイへ進出しようと考えたきっかけは何ですか。

千住さん:
タイはASEANの周辺諸国を見ても、ビジネスにおける紙文化が非常に強く残っています。請求書の紙の原本が必要だと法律で定めているのは、実はASEANの先進国の中ではタイだけです。その現状を知り、「この国ならアナログのデータをデジタルに変えるという当社の強みを活かし、タイのデジタル化に向けた支援ができる」と考え、「Bill One」がマッチすると思いました。

まだデジタル化のマーケットはそれほど成熟していないのですが、早い段階で当社が参入して「Bill Oneを使うと仕事の仕方がこんなに変わる」と啓蒙していき、2~3年後に大きなマーケットへと成長させたいと思っています。


― 御社の数あるサービスの中でも、タイでは「Bill One」をメインに打ち出そうと考えた理由をお聞かせください。

千住さん:
実は当社の主力製品である名刺管理サービス「Sansan」もタイで販売していて、お客様がたくさんいらっしゃいます。以前からもっとタイでの展開を拡大したいと考えていましたが、コロナ禍で思うように進出ができませんでした。

そんな中で新たに「Bill One」をリリースし、タイの市場を調査するにつれ、やはりニーズがありそうだという結論に至りました。現状では「Sansan」も「Bill One」もタイで展開していますが、「Bill One」は新規事業ですので知名度の向上やマーケットへフィットさせていく部分へ特に力を注いでいます。

 

請求書管理サービス「Bill One」が企業に提供する価値

― 改めて、御社のサービス「Bill One」の特長をお教えいただけますか。

千住さん:
「Bill One」は、これまで紙やPDFで請求書を受領し、会計ソフトなどに手で打ち込んでいた業務をデータ化して一元管理できる、請求書管理サービスです。複数拠点のデータもクラウド上ですぐに確認できるため、経理部門を含めた企業全体の請求書関連業務を効率化し、業務フローや経営の意思決定のスピードを向上させるメリットがあります。

当社はアナログな部分をデジタルに転換するサービスを提供していますが、根本として大切にしている考えは「変革する対象のもの、例えば紙の請求書や名刺などをきちんと理解していないと変えることはできない」という点です。当社が名刺管理サービスを始めた頃、私はお客様先で会議室を借りて、名刺を1枚1枚スキャンしました。そうやって課題にしっかり向き合い、解決に向けて動くスタイルを重視しています。クラウドのサービスを提供する会社ではありますが、すべてオンラインで完結せずに実際の現場へ行って課題を肌で感じ、サービスに反映する部分は他にはない当社のユニークな部分だと思います。
 

― Sansanといえば名刺管理や営業DXというイメージが強いのですが、なぜ請求書管理サービスをリリースしたのですか。

千住さん:
名刺管理と請求書管理は一見すると別物のようですが、当社のミッションである「出会いからイノベーションを生み出す」に照らすと実はすごく似ているものなんです。名刺も請求書も、いわば2社間でやり取りされる「フォーマット化されていない、非定型の紙のデータ」ですよね。請求書は名刺よりも多くの情報が記載されますが、結局は両方の企業のつながりを表すものであることに変わりはありません。

「Bill One」が生まれたのは、当社の経理担当者の「なぜ名刺はデータ化できるのに、請求書は手打ちでデータを取り込まなければいけないのか」という声がきっかけです。そこで社内の業務効率化について話し合い、「これは当社のミッションの下で開発すべきサービスなのではないか」と開発に着手しました。4年ほど前の発案から社内でコツコツとプロトタイプを作り、ある程度使えるものができた段階でサービスとしてリリースした流れです。


― 名刺というビジネスの出会いの部分と、取り引きの起点となる請求書をデジタルで管理していくのは御社ならではのサービスですね。

千住さん:
名刺も請求書も、抽象的に見るとA社とB社の間のやり取りのデータです。誰と誰が知り合っているのか、どんな繋がりや取り引きがあるのかが一元化して見えるメリットがあります。「Bill One」は当社のミッションのもとで提供できるサービスの幅が広がったきっかけなので、ぜひ国内だけでなく世界に向けて展開していきたいと考えています。

 

タイでの展開における課題と手ごたえ

― タイで「Bill One」の展開を拡大するうえで、難しさを感じる部分はありますか。

千住さん:
タイでは30年や40年の間、長らく紙ベースでやってきた業務がとても多くあります。そこを変えるのはなかなか難しく、より包括的にお客様が実現したい未来に近づくための提案が必要です。
例えば日本では、電子帳簿保存法に沿った形で請求書をオンラインで受け取り、タイムスタンプも法律の要件を満たしていれば良いというお客様が多いです。しかしタイでは、請求書に連動する他の書類も変えたいとか、そもそも業務プロセス全体を変化させるようなアプローチを求められることがほとんどです。

そのため、タイ市場でおこなわれている業務フローに「Bill One」をマッチさせるための開発にはかなり時間をかけます。国によって当然ニーズは違いますので、それに対して個別に対応しています。
一方で、各国のニーズに単純に合わせるだけでなく、「Bill One」を世界全体として使える製品に仕上げていくのが開発の難しいところです。現在は国ごとの個別ニーズの拾い上げと、全体で見て使えるかどうかを考えながら開発メンバーが試行錯誤しています。


―「Bill One」をタイの企業に紹介した際、どんな反応が多いですか。

千住さん:
過去から、ずっと紙ベースでおこなってきた業務フローに対して、課題感を持つ方々はたくさんいらっしゃいます。特に経営層の皆さんからは「これは確かにやるべきだ」という反応をいただくケースが多いですね。一方で、サービスを実際に現場へ導入する段階になると、従業員の皆さんの考え方や日頃の慣れた業務から離れる部分も含め、ハードルは色々とあります。しかし、デジタル化に向かう世の中の流れには抗えませんから、時間はかかりつつもどんどん導入事例が増えている状況です。
 

タイ最大規模の製造系展示会”Manufacturing Expo 2023”内でもSansanブースとして出展


― 実際に「Bill One」を導入された企業では、どういった声が聞かれましたか。

千住さん:
導入企業からは、業務全体がすっきりして軽くなったというお声を頂戴しています。今までの紙ベースでは次の人に回覧する際に時間がかかったり、上長が不在でサインができず業務が滞ったりするケースがありました。それが「Bill One」の導入により承認作業がスムーズになり、また請求書がデータ化されたことで関連処理も迅速にできるようになったそうです。月次決算の加速に繋がっているというお声も頂きます。
また「Bill One」を導入した企業の取引先様から見れば、請求書の送り先を変えるだけで良く、それほど手間もありません。取引先様に大きな負担をかけることなくデジタル化が実現できる点も高評価をいただいています。

 

バックヤードを効率化し、スピード感のあるビジネスを後押し

―「Bill One」を展開することで、タイのビジネス界にどのような影響を与えたいですか。

千住さん:
タイのような紙ベースの業務でよくあるトラブルに、請求書の紛失があります。担当者が机の中に入れたまま忘れてしまい、支払いが遅れる事例も少なくありません。物流会社への支払いが遅れると新規の取り引きに応じてもらえないケースもあり、業務フローにも深刻な影響を与えます。そこを「Bill One」で一元管理して人為的ミスを防ぐことにつなげたいと思います。

日本は月末締めの文化が根強いですが、海外では取り引きごとの請求・精算が非常に多いです。そうすると毎月締めるよりも必然的に処理が多く、担当者の負担も増加しますから、バックヤードを効率化することは企業の強みにも直結すると考えます。


― 海外のビジネスではスピードが求められるからこそ、守りではなく攻めの意味で「Bill One」を導入すれば、のちのち得られるメリットは多そうです。

千住さん:
「Bill One」で当社が目指すのは、月次決算を加速することです。デジタル化によって月末の処理を早く終えられれば、企業の経営に必要なレポーティングなどの追加の作業に時間を割けるようになります。毎月繰り返す経理作業を「Bill One」で効率化して人の負担が減れば、それだけ財務や取引先のデータ集計ができて会社がもっと強くなっていきます。

バックヤードを見直す機会は今まで少なかったと思いますが、コロナ禍をきっかけに業務全体がデジタルにシフトし、少しずつ機運は高まっていると感じます。その流れを上手くつかみつつ、市場にとっては少し早い段階でも当社が啓蒙活動をしていくのが重要だと思います。そして、タイの中でもデジタル化のフロントランナーとなる企業を当社がサポートすることで、タイ全体のデジタル化にも寄与できるのではないでしょうか。

 

ASEANでナンバーワンのビジネスインフラを目指して


― 御社の今後の展望についてお聞かせください。

千住さん:
当社はASEAN地域において、いかに自分たちのサービスをビジネスインフラにしていくか、お客様の業務フローの中で欠かせないサービスにしていくか、という部分に最も力を注ぎたいと考えています。タイは日本に続く2か国目としてチャレンジしていますが、タイの中でも最初は建設業、次は製造業といった形でしっかりターゲットを定め、それぞれの業務フローに対してサービスをフィットさせていく形で進めたいですね。またフィードバックや改善点があれば、それを製品に落とし込むサイクルをいかに早く回せるかもポイントとなってきます。現状では、タイの製造業のお客様に対してのフィット感を増していくところを重点的に取り組み、ゆくゆくはASEAN他国展開も検討したいと思います。


― タイの次はASEANのどの地域、という計画はありますか。

千住さん:
正直に申しますと、次にどこの国に行くかは現時点では迷っている状況です。当社としては早くASEAN地域全体にサービスを提供できるようにしたいので、タイがある程度形になった後は、複数の国に向けて展開するなどスケール感を持った取り組みも視野に入れたいですね。まずはASEAN地域でナンバーワンになることを主眼に入れてやっていけば、必然的に商圏も広がっていくと考えます。シンガポール・タイ地域のメンバーと協力して、ASEANでナンバーワンのビジネスインフラになることを一番に考えて前進していきます。
 

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