Fintechがタイのビジネスに起こす変化とは? ー 各産業の変化や関連する法律を解説 | ピリピリ 東南アジア進出をサポート!
Thailand タイ

Fintechがタイのビジネスに起こす変化とは? ー 各産業の変化や関連する法律を解説

*本記事は「日本のITソリューションをタイのビジネスマンに紹介するメディアICHIで掲載された記事を翻訳して転載しております

事業者にとって、フィンテック(FinTech)はビジネスチャンスと発展の鍵として、競争優位性に導くものとなっている。だが、私たちはフィンテックのことをどれだけよく理解しているだろうか? また、将来の世界の中で、こうしたテクノロジーをビジネスに導入していく準備はできているだろうか?

フィンテックという言葉は、数年前からよく聞くようになったという人が多いだろう。フィンテックとは、Financial Technologyという言葉から作られた言葉で、金融ビジネスにテクノロジーを導入するものである。例としては、インターネットバンキングを通じた入金、スマートフォンを通じた決済(E-Payment)から、ローンその他多くのサービスまで。現在、フィンテックはビジネスを大きく効率化するテクノロジーとして、金融取引に変化を生じさせている。特に、急速に変化する現代においては、旧来の事業運営ではこれからの市場に対応していくことができない。だからこそ、フィンテックに大きな関心が寄せられるようになったのも驚くべきことではない。



Krungsri Finnovate Company Limited 代表取締役 セーム・タンサクン氏(以下、セーム氏)は、これまで20年を超えて銀行業界で研鑽を積み、イノベーションとスタートアップに関する知識と経験を多く保有している。セーム氏によると、フィンテックはあらゆる産業において使うことのできるものだという。どんなビジネスでも決済システムは必要なため、必ず金融テクノロジーは関与するからだ。

 

フィンテックが成功への鍵

フィンテックの形態にはBusiness to Customer(B2C)とBusiness to Business(B2B)があり、B2Cは個人の顧客を相手とするもの、B2Bは企業オーナーを相手とするものである。現在、タイ国内では、多様な産業において多くの企業がフィンテックを導入し、ビジネスを加速している。

たとえば、もしビジネスにおいて、外国からの決済を受ける場合、旧方式の入金では1〜3日が必要で、入金途中に追跡をすることも不可能だった。しかし、仲介者を必要としない取引ができるブロックチェーン(Blockchain)技術を用いれば、国家間の入金はスピーディーになる。ブロックチェーンをフィンテックに応用すれば、決済プロセスが迅速化し、費用も節減できるのである。

また、クラウド会計プラットフォーム方式でフィンテックを会計プログラムと併用すれば、簿記の利便性も向上し、どこにいても容易・迅速に会計システムの管理を行うことができるようになる。さらに、自動的に計算できるため、収入、支出、及び業績を迅速に把握することができ、経理スタッフを雇う必要がなくなる。たとえばPeakというプラットフォームなどの会計システムを使用するだけで、自動的に会計処理ができ、即時に収入・支出や利益・損失をまとめることができる。

他にも、不動産業の場合、フィンテックの技術を活かせばテクノロジーを使って顧客の売買データを収集することができる。また、返済もスピーディになり、振込手数料も低減する。建設請負業の場合でも、デジタルプラットフォーム上に収集されたデータを分析すれば、資源の管理ができるようになる。

それだけでなく、フィンテックは投資においても役割を担うようになっている。たとえば、証券ブローカープラットフォーム“FINNOMENA”は、オンライン上のスピーディーなファンド取引システムの実現だけでなく、AI(人工知能)を用いて投資家のニーズに適したファンドの選択を可能にすることで、明性があり、最も需要に見合った最善の報酬が得られるようになる。

B2B形態のビジネスへのフィンテック使用も大きな関心が持たれている。たとえば、工場では、Blockchain for Supply Chainと呼ばれるフィンテックが導入されている。これは、上流工程から下流工程まで全製造ラインのシステムにおけるデータやプロセスが、経営者に見えるように可視化するものである。可視化されたデータをにより、問題の分析や、事業予測が的確にできるようになる。また、輸出入についてもブロックチェーンを応用することで、工程の最初から最後まで追跡することができる。

「物流産業では、上流工程から下流工程までブロックチェーンの技術をデータの送受信に連結させています。例を挙げると、日本から魚を輸入する場合、Blockchain in Logisticsのテクノロジーを導入すれば、魚市場から保管・輸送までのプロセスと商品価格が事業者の目に見えるようになり、最終的な決済までできますし、関税局とリンクさせることもできます」(セーム氏)

 

フィンテックの背後にあるテクノロジー

フィンテックは様々な事業開発の手助けをするが、フィンテックの利便性・迅速性の背後には高度なテクノロジーが多様に用いられており、フィンテックを導入したプラットフォームを支えている。

1.    人工知能(Artificial Intelligence : AI): 人間に代わってデータ分析を行い、より正確・迅速なビジネス予測を実現。現在では多くのビジネスにAI Machine Learningが用いられ、顧客毎のデータが分析されている。
2.    ブロックチェーン(Blockchain): フィンテック上の金融取引を迅速且つ安全に実現するテクノロジー。データ送受信における諸プロセスの起点、途中、終点のどの段階の確認もできる。
3.    量子コンピュータ(Quantum Computer): 将来的に導入され、さらにスピーディーな処理ができるようにするテクノロジーである。


 

タイ国におけるフィンテック関連の法規制

現在、タイ国においてはテクノロジー関連のスタートアップ企業が注目を浴びつつある。2020年におけるスタートアップへの投資は2019年の3倍に成長し、2021年も継続して成長する傾向である。タイ国ではこれまでにユニコーン企業が3社存在しており、Flash Express、Ascend Money、及びBitkubとなっているが、3社ともフィンテックを活用している。

しかしながら、フィンテックを活用するビジネスは、関連機関の監視・管理下に置かれなければならない。その主な機関は、以下の3機関である。

1.    タイ銀行(BOT): タイ国内の金融取引に関連するフィンテックを監視・管理。
2.    証券及び証券取引所監視委員会事務局(SEC): 投資関連の資産に関連するフィンテックを監視・管理。
3.    保険事業監視・振興委員会事務局(OIC): 保険事業・生命保険事業に関連するフィンテックを監視・管理。
 

 タイ国内でフィンテックを構築するためには、規制委員会による監視・管理が必要である。また、現在では、諸機関がテックスタートアップ(Tech Start-Up)を支援するようになっている。たとえば、BOTでは事業者からSandboxに参入できるようにするための新アイディアの受入を行っている。トライアルに合格すれば、本格的に事業を開始することができる。

 

タイにおけるフィンテック活用の課題

近年、タイ国におけるテック系スタートアップやフィンテックは急速に成長しているが、問題となるのはエンジニアの不足である。タイ国は、世界の他の諸国に比較して開発者が非常に少ない。したがって、これについては政府が援助・支援し、開発者を育成していかなければならない。

また、テクノロジーの急速な変化ということもフィンテックへの挑戦を促すものである。現在、フィンテックでは、決済、投資、融資のサービスが単一プラットフォームで提供できるため、ビジネスの利便性・迅速性が高まっている。もしも旧来のビジネスやサービスを継続していたら、デジタルプラットフォームやさらに高いテクノロジーを保有する競合相手の優位に立つことはできない。

「現在、様々な産業において多くの事業者がフィンテック使用への転換を図るようになっています。これは事業者のあらゆる側面の競争力を向上させてくれるものです。たとえば、財務コストの低減、データの収集、プロセスの確認、及びデータの分析といったことをサポートします。ここから分かるように、フィンテックはあらゆる産業の中に潜んでいるもので、どんな組織のビジネス開発にとっても重要なものとなるのです」(セーム氏)

ここではフィンテックに関する知識の一部しかご紹介できなかったが、学ぶべきことはまだまだ多くある。フィンテックにご関心があれば、ぜひセーム・タンサクン氏による解説の動画“ICHI Special Edition / feat. MarTech”(タイ語)をご覧頂きたい。


 

関連記事