AIでタイの農家の生産と販売を変える ー MIT卒の起業家が変えるタイの農業 | ピリピリ 東南アジア進出をサポート!
Thailand タイ

AIでタイの農家の生産と販売を変える ー MIT卒の起業家が変えるタイの農業

タイにおいて、農業は諸外国にも様々な農作物を輸出をしており、国を支える大きな産業です。一方で、気候変動や、収入が不安定といった問題も抱えています。こうした問題を解決するために起業したAgirtechスタートアップを紹介します。タイの農家の支援およびサポートすることを目的としたプラットフォームであるRicultです。RicultのCEO兼共同創設者であるEarn Ukrit Unhalekkaさんに、タイの農家が抱える問題をどのようにして解決していくのか、お伺いしました。
*本記事は「日本のITソリューションをタイのビジネスマンに紹介するメディアICHIで掲載された記事を翻訳して転載しております

ー まずは、Ricultについて教えてください。

Earnさん:
RicultはAIとデジタルテクノロジーを導入して、タイの農家の生産性と収入を向上させる為の農業のスタートアップです。農家から農産物を購入する工場やレストランをつなげて、より持続可能な製品を購入できるようにするためにビッグデータを利用してきました。

ー 農業に関するスタートアップを始める前は、何をされていましたか?

Earnさん:
私はアメリカの大学を卒業し、シリコンバレーでソフトウェアのエンジニアとして約10年間働きました。その後転職をして、ボストンを拠点とするコンサルティング会社のビジネスコンサルタントとして働いていました。


右:Earn Ukrit Unhalekkaさん

ー そこからスタートアップとして起業されたのはなぜですか?

Earnさん:
幼い頃から目標が設定されていたからかもしれません。 例えば、世界をリードする大学で勉強したいという目標を設定して、MITに入学しました。多くのエンジニアと同様にシリコンバレーでソフトウェアエンジニアになることを目標に掲げ、実現しました。また、アメリカ証券取引所の企業のビジネスコンサルタントを務めることも目標のひとつでした。当時は毎週のように出張をしたり必死に働いていて、これが一生やりたいことなのか、本当は何をしたいのかと思うことも多々ありました。よく考えると、自分がやりたいのは社会問題や技術革新に関わることだと気づき、イノベーションと社会的解決を融合させたビジネスをすれば、毎日楽しく仕事ができるのではないかと考えスタートアップの道を目指しました。

ー 当時、タイの農家を対象としたicultのビジネスを運営するために意識したことはなんですか? 

Earnさん:
私の目的は、社会に影響を与えることができるビジネスを行うことです。ビジネスをしたいのなら、市場規模の大きさや、経済的価値が生み出せるかどうかが大事であり、市場の抱える問題を解決できれば、事業をさらに成長させる収入を得ることができます。

そこで、解決する価値のあるタイの問題を調べ、農業、教育、公衆衛生の3つの市場に可能性を見つけました。その中で農業を選んだ理由としては2つあり、1つは私の家族はドリアンの果樹園を持ち、子供の頃から農業に慣れていること。また、もう1つは、ハイキングやトレッキングなどのアウトドアが好きなこと。テクノロジーを使って環境問題の解決に役立てることができることは嬉しいことだと感じ、Ricultをスタートさせました。

ー スタートアップビジネスに足を踏み入れる最初のステップはどうでしたか?

Earnさん:
ビジネスを行う前に、解決しようとしている市場の問題や顧客になりうる層についてを理解する必要がありました。現在使用されているさまざまな配信アプリケーションを見ると、問題を解決するのに役に立つソリューションがある場合、人々は対価を支払うことがわかりました。タイの農家がどのような問題を抱えているのか、そしてこの問題を解決するためにどのようにお金を稼ぐのかを考えて来ました。農家の1番の問題は収入が非常に少ないことです。収入が少ない原因は、主に3つあります。

1.    公正な利子のある金融ローンの審査の厳しさ
2.    自然災害によって、もたらされるリスクと被害
3.    市場価格の変動


農家はリスクが高く収入が少ない中小企業であることがわかるので、どうすればリスクを減らして収入を増やすことができるかの課題について考えました。これがRicultの開発を始めた理由です。



ー その問題を解決するためにどのようなイノベーションを利用していますか?

Earnさん:
世帯当たりの収入の低さの原因として、生産とマーケティング2つの側面が上手く機能していないことにあると考えます。生産とは、米、サトウキビ、トウモロコシなどの栽培で、生産性を高めること。 マーケティングに関しては、もっと高い値段で売るためにどうやってやるのか。農業がビジネスの一形態であるので、 農家にビジネスマインドセットをもたらすなら、彼らの収入をより良くする方法が見えるでしょう。

AIは農家を助けることができるはずだと思います。 AIを使えば、農家が農作業における、リスクを減らし、生産性を向上させることが可能です。それだけでなく、市場と生産者のマッチング支援も可能です。工場、レストラン、農家から直接農産物を購入したい輸出業者などのパートナーを把握してつなげることにより、Ricultを使って、農家から直接購入するようになります。

ー Ricultには天気予測の機能がありますが、それをどのように活用するのでしょうか? 

Earnさん:
そうです。天気予報は栽培に対して大切な情報で施肥、収穫、栽培の方法など、天気によって農家の方々は様々な計画を立てます。Ricultの天気予報は一般的なものと2つの異なる部分があります。1つめは、サービスがよりパーソナライズされていること、2つめは降雨量の情報に特化していることです。タイの農家が最も知りたいのは雨についてです。タイは常に暑い国なので、農業をする上で降雨量は非常に重要です。しかしほとんどの天気予報、特に海外では気温を中心にしたものになっています。タイの農家の念願を理解することにより、Ricultはタイに特化したアプリとして役立っています。



ー 事業の運営について少し教えていただけますか?そして、どんな問題に遭遇しましたか? どのように問題を解決したのでしょうか?

Earnさん:
スタートアップの典型的な問題には2つの部分があると思います。一つ目は、ユーザーにアプリをダウンロードさせる方法です。ほぼ100万人がダウンロードした今になるまで、1〜2年かかりました。二つ目は収入を得る方法です。アプリを有料化するのか、それとも無償で提供し広告で収入を得るのか考える必要がありました。

ー Ricultが、100万人のユーザーを得るまで、どのような手法で農家へリーチしたのでしょうか?

Earnさん:
まず、タイの農家のほとんどは高齢者であると言わざるを得ません。

Ricultの強みは、私たちが農家の視点からではなく、農業の問題を解決するために第三者視点か解決策を考えられるということです。農家の問題を解決するために、既成概念にとらわれずに考えてみましょう。イノベーション採用曲線の理論を例にとるとFacebookやTikTokが市場に登場したとき、最初に新しいことを試すのが好きな若者しかいませんでした。それを使う人が増えるにつれて、年配の人のようなグループが続くようになりました。Ricultはそれと似ているでしょう。

すなわち、我の国には1500万人の農家がいて、国の30〜40%を占めています。私たちのアプリを利用してる百万人は10%もおりませんが、高齢農家を含むすべての農家にアプリを使ってもらうことは出来ないと気づき、テクノロジーに慣れている世代や、テクノロジーを取り入れることにオープンな層だけに焦点を合わせてターゲティングした結果です。

ー アプリケーションを使用してみた後、どのような反応でしたか? 

Earnさん:
予想を超えました。 最初はダウンロード数が10万程度いけばよいほうだと思っていました。しかし、100万を超えたダウンロードの数をみて、私たちが選択した軌道は正しかったのだと確信しました。実際に農業の問題を解決できている様子を見て、非常に嬉しく励まされます。

ー 農家にも収支管理があることを聞きましたが、どのようなことですか?

Earnさん:
はい、ほとんどの人は農業が稲作、ゴム植え、サトウキビ植えだと思っていますが、農業は仕事の一つです。そのため、農業に対してはお金も重要なことです。農家の計画に集中するために収入が重要であることが私たちの焦点です。そして、もし彼らの収入を追跡することができれば、フィンテックのようなビジネスを行うことが可能で、農家が公平な価格やクレジットシステムにアクセスすることもできるようになります。

ー Ricultの独自性は何ですか?

Earnさん:
私たちの強みは、私たちが農業に参入したAI企業であるということだと思います。部外者であることで長い間業界に携わってきた人々より客観的に問題を見ることができます。もう一つの強みとして、私たちのチームにデータサイエンスと新しいAIモデルを作成出来る世界的なソフトウェアエンジニアが多くいることです。

ー 現地視察もしましたか?

Earnさん:
優れたスタートアップは顧客やユーザーベースの近くにいる必要があると私たちは信じています。毎月チームと一緒に各地域を訪れていて、今までほぼ全国を視察しました。視察の目的はお客様である農家や工場と話をし、問題を把握し、製品を開発することです。私たちは常に会社を発展させなければならないと思っています。



ー イノベーションを起こし、社会を変えるために、どのような将来の目標を持っていますか?

Earnさん:
最初は農業にしか従事していませんでしたが、私たちは農家の収入を増やし、農業をより持続可能なものにするために、サプライチェーンパートナーが必要です。Ricultは、農家だけでなく、農家から農産物を購入して海外に輸出する大規模な砂糖工場などもサポートしています。彼らがより良い生産を計画するのに役立つ情報を持つことができるようになります。現在、私たちのシステムにおける農業の総価値は、過去数年間で200億近くになりました。ですから、私たちは経済を推進する一員であると感じています。農家だけでなく、外国との競争を可能にするタイの農業経済です。

ー COVID-19のパンデミックの最中にスタートアップビジネスを始めたいと思っている人にメッセージをお願いします。

Earnさん:
まず、事業の立ち上げや運営には時間がかかることを覚悟しなければなりません。 もちろん、それには困難がありますが、先には成功もあります。そこまでには難しいかもしれませんが、努力があってやり続けたら、成功は遠くはないと思います。


転載元:https://www.jrit-ichi.com/cutting/2022/05/05/1101/
 

関連記事