AIに置き換えられる業務とは? ー タイにおけるAI導入事例と活用の現状 | ピリピリ 東南アジア進出をサポート!
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AIに置き換えられる業務とは? ー タイにおけるAI導入事例と活用の現状

*本記事は「日本のITソリューションをタイのビジネスマンに紹介するメディアICHIで掲載された記事を翻訳して転載しております

現在、AIとML(Machine Learning)はビジネスや産業の分野の一部となっており、大きな役割を持つようになっている。こうしたテクノロジーは業務プロセスを迅速且つ効率的に前進させてくれるものであるため、現在、ビジネスや産業の世界では、世界市場に遅れを取ることなく打ち勝っていくために、どのようにAIやMLを応用していけるか、関心が高まっている。


タイ産業連盟(The Federation of Thai Industry : FTI) チャムラット・サワーンサムット氏

タイ産業連盟(The Federation of Thai Industry : FTI)Director Generalのチャムラット・サワーンサムット氏(以下、チャムラット氏)は、AI及びMLテクノロジーの基本について次のように説明している。

「ご存じの通り、AIとはArtificial Intelligenceすなわち人工知能の略で、コンピュータに学習させ、能力を開発することで人間と近似する知能を持たせたものです」(チャムラット氏)

機械すなわちコンピュータに学習させて知能を持たせる方法について、チャムラット氏の追加説明によると、教える形態のもの、自己学習させる形態のものを含め様々だという。MLすなわち機械学習(Machine Learning)は、コンピュータ自体に人間と近似する知能を持たせる方法の一つといえる。

コンピュータの学習方法には、ステップ・バイ・ステップ方式に自己学習する形態とランダム形式に学習するものがある。これらはコンピュータの能力を向上させながら、データを蓄積する。学習させ続けて十分なデータを保有させ、自ら様々な決断や問題解決ができるようにするという形態の学習である。つまり、AIとMLは同時に向上していくものである。

「プラットフォームやサービスの開発者が、ある対象に関する専門のAIを導入するという場合があります。たとえば、音声、画像、文字などを計算や分類をするAIなどです。この場合、コンピュータは自己学習をします。自己学習をさせるためには、『アルゴリズム』、すなわちデータの分類を可能にさせる何かが必要です。たとえば、人、動物、自動車、他のものの画像を分類する、といったことです。これらが正しい学習プロセスとなり、より正確な業務に応用されていくこととなります」(チャムラット氏)

現在、タイ国内及び世界のビジネス・産業全般についていえば、こうしたテクノロジーが業務プロセスに多く導入されている。チャムラット氏は、人々の日常生活で身近に見られるようになった最近の事例を挙げ、次のように説明する。

「自動運転(Autonomous Driving)は、自動車が自動的に運転できるというテクノロジーですが、現在、テスラ(Tesla)など新モデルの電気自動車(EV Car)に多く導入されています。これは、人間がAIを導入した一つの興味深い事例といえます」(チャムラット氏)

チャムラット氏は、MLにもまた自動運転(Autonomous Driving)が活用されている部分があるという。MLは学習を助けるテクノロジーなのである。

「自動車が路上を走行しているとしましょう。車の前を人が横切ったり、やトラックに遭遇したりすることがありますが、私たちは前方の障害物が何かを見分けることができますね。AIやMLのテクノロジーを使えば、安全な運転をアシストすることができ、現在でもその正確性は徐々に向上しつつあることが確認されています。」(チャムラット氏)

タイ国内での事例については、工場で原材料や商品の基準を検知するスクリーニング工程、いわゆるQCがあるとチャムラット氏は言う。

水を瓶詰めする工場の場合、人がQCを行い、製造ラインから出てきた製品の基準について、色が正しいかどうか、容器が完全な状態かどうかを検査する必要がある。このような場合、通常は工場で人の労働力を使って製造ラインから出てきた商品が基準通りの正しいものかを検知している。しかしながら人の限界として、何かを長時間にわたって目視確認していると、疲労したりミスをしたりという可能性が生じてしまい、品質や基準が100%確実・正確なものでなくなってしまうことがある。そのため、工場ではAIによるサポートが導入され始めている。マシンビジョン(Machine Vision)と呼ばれるテクノロジーは、AIによりコンピュータがコンベア上を流れる商品を検知できるよう学習させたもので、商品の色、容器の損傷といった形状の正確性を検査することができ、こうした作業工程では人間の作業効率を大きく向上させてくれるものである

チャムラット氏によると、AIやML導入の長所は、大きく次の2つに分類できるという。

•    作業プロセスにおけるProductivityの向上
 Productivityとは生産性のことで、効率管理の指標となるものである。

「これまで、私たちは作業に人を使ってきました。人の作業にはもちろん様々な限界があります。たとえば、スピードや正確性の問題、その他の作業上の限界により、損失が伴うことがあります。しかし、その代わりに機械を使い、コンピュータを使うようにすれば、私たちの“Productivity”は大きく向上するのです」(チャムラット氏)

•    コスト削減
 人件費は毎年上がっている。その理由の一つはインフレ問題である。だが、機械やコンピュータの価格は、人件費とは逆に低下の傾向にある。テクノロジーがあらゆる分野の一部となり、入手しやすいものになっているためである。

現在のタイにおけるAIやMLの導入はスタート地点に過ぎないとチャムラット氏は見ている。長期的に考えて、もし組織が適応していかなければ、価格及び品質の両面において、世界市場での競争力を失ってしまう恐れがあるという。

「今後この2本のグラフが交わった時が、テクノロジーを人の労働力に代替させる投資の損益分岐点となります。その時になったら、必ず低コストが実現でき、商品価格も低減できますので、外国での競争に打ち勝つことができるようになります」(チャムラット氏)

チャムラット氏には最後に、ビジネス及び産業への、AI及びMLテクノロジー導入の要を伺った。それは、早急にAI及びMLテクノロジーの専門家を育て、増加させることである。

「テクノロジーの導入には、もちろん専門家やノウハウのある人が必要です。AIやMLの特性がどんなに興味深いものでも、私たちの求める仕事をできるようになるまでコンピュータに学習をさせるためには、まずMLからスタートし、私たちのデータを学習させなければなりません」(チャムラット氏)

たとえば、上記の製造マシンビジョンのテクノロジーは、商品のスクリーニングにおいて人間の労働力に代替させられるものである。だが、まずはData Modal(データモデル)及び構築から理解をして発達し、コンピュータが自己学習し、所定の基準を満たした材料を検査・スクリーニングできるようにしなければならない、とチャムラット氏は言う。また、自己学習ができるようになった後、AIに必要なのは、製造ラインから不良品を弾く他の機械設備との連結など、問題解決の方法を認知するためのアルゴリズムである。

「AIを理解し、ビジネスに応用できる人材の数は多くはありません。そのため、AI導入には比較的高い費用がかかります。また、この分野の開発をする人も比較的限られてしまいます」(チャムラット氏)


 

 

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