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タイでビッグデータを活用するために必要な「3つの問い」

*本記事は「日本のITソリューションをタイのビジネスマンに紹介するメディアICHIで掲載された記事を翻訳して転載しております

ビッグデータの活用は、多種多様の利益を生むものである。組織の効率化、新たな収益の構築などだ。しかし、問題は組織における人のマインドセット(Mindset)の転換であり、データ利用の長所が未だに分かっていないということもある。したがって、組織内外の効率化を図るためには、緊急にその重要性への理解を構築し、認識させることが必要である。
 
電子取引開発機構 [Electronic Transactions Development Agency : ETDA] デジタルトランスフォーメーション関連有資格者顧問 サック・セーククントット博士(以下、サック博士)は、現在、国家のデジタルIDの枠組み推進を含むAIガバナンス関連の使命を担っている。重要な業務実行計画には様々な側面のデータを必要とするものである。サック博士によると、私たちはデータが容易に作成される時代に生きているという。スマートフォンなどのデータを保存するデバイスがあり、こうしたデータを利用して大きく発展することが可能である。データ保存から利用までには多様な要素があり、その中でビッグデータという言葉が登場したのである。


電子取引開発機構 [Electronic Transactions Development Agency : ETDA] サック・セーククントット氏

かつても、組織では旧タイプの管理用データが広く使用されていた。売上高を確認したり、利益や損失を確認したりなどである。しかし、現在では、スマートフォンやSNSの登場により詳細なデータが増え、顧客が誰か、自分たちのブランドに対して顧客がどのような意見を持っているかを把握することができるようになった。

「データをビジネスにすることで多大な収益を築き、世界トップ10の巨大企業となっている会社があります。自分の組織を振り返り、データ収集をしているか、こうしたデータで何をするのか目標が設定されているかを考えてみなければなりません」(サック博士)

サック博士は、組織で使用するデータの最初の利点には2つの側面があると言う。それは組織の効率化と、組織の収益向上である。ビッグデータ実現のための重要な鍵は、主に次の3点である。

1.    何をするかという目標の設定。
2.    データチームは、自分の組織について、これらの目標に対応する態勢があるか確認しなければならない。
3.    経営者は、データを有効利用し、データを分析して活用する能力がなければならない。

 

3つの質問によるビッグデータ作成前の準備

ビッグデータの利用を希望する組織は、主に次の全3つの質問を組織に問いかけることで準備をする必要がある。

1.    Why: なぜ、組織はビッグデータを利用しなければならないのかを考える。データを何のために使用するかという目標を設定してもよい。たとえば、収益面の問題を解決したい場合、目標は「顧客数の30%増」などと設定する。

2.    What: 組織は、どのようなデータが自分たちの目標を達成するために必要か分析しなければならない。設定された目標に対応するデータは様々な形態のものがあるため、正しく選択しなければならない。

3.    How: 導入するツールについて、どのように使用するかを考える。データ分析は形式によって異なるため、データへの使用に適したツールが何であるかを組織は理解しなければならない。たとえば、過去のデータを分析したい場合と、将来起こりうることの予測をしたい場合とでは、分析に使用するツールが異なってくる。


もう一つ重要なものは、「組織内の人」である。データチームはうまく構成するようにしなければならない。多くの場合、データとはIT関連の部門の業務であると理解されがちだが、必ずしもそうとは限らない。IT関連の部門の任務とは様々なツールの管理に責任を負うことだが、実は、データチームに重要なのは”データを活用したい部門”である。 たとえば、顧客数を増加させるために組織でビッグデータを使用したい場合、重要な役割を担う部門とは、営業部やマーケティング担当者となる。

尚、サック博士によると、組織内でのビッグデータ作成には、国際標準の業務の枠組みが必要だという。これはデータガバナンス(DATA GOVERNANCE)と呼ばれるもので、データを管理・監視することだが、データに関連する方針の系統的な策定も行う。したがって、ビッグデータの作成を始めたければ、組織はまずデータガバナンスの準備をしなければならない。それにより、組織の業務が系統化し、適切な責任者が設定され、データの質が常時改善されるようになるのである。

「データガバナンスの要となるのは、データのステークホルダーによる話し合いです。組織の目標に対応するデータをどのようにするべきかを協力して考えるようにします。データガバナンスが行われなければ、ビッグデータ成功の道はありません。データガバナンスは私たちに枠組みを与えてくれるもので、組織は各自でこの枠組みを応用していかなければなりません」(サック博士)

 

ビッグデータ作成に向けた経営者のマインドセットの転換

データガバナンスを重視すること以外に、最も重要となるのは、経営者がビッグデータ作成を重視しなければならない、ということである。経営者とはデータを使用して決断する人であり、データを使用して組織を駆動するための目標を設定する人だからである。したがって、まず、経営者のマインドセットを転換させなければならない。そのためには、ビッグデータ作成に成功した組織の事例を研究することから始めてもよい。データ使用のためには学習が必要であり、それは成功した会社から学ぶことのできるものだということを理解しなければならない。

「組織のナンバーワン、ナンバーツーの人はデータオーナー(Data owners)となります。これはデータを技術的に理解しなければならないという意味ではなく、責任下のデータについて、どのようにすれば組織の目標に応じられるかを理解しなければならないということです。また、組織のデータチームは、形式と実務指針をうまく配備しなければなりません。さらに、データの使用者もデータ使用について理解し、学習する必要があります」(サック博士)

 

組織のビッグデータ実現を妨げる問題

サック博士は、ビッグデータの実現を妨げる問題とは、組織のビジネス目標の設定が不明確であることだと考えている。現在、データ分析ツールは非常に発展しており、価格も下がりし、より使いやすいよう設計がされている。したがって、起こり得る問題とは、かつてのようなツールの問題ではなく、組織の目的設定の方なのである。

また、ビッグデータ作成について従業員に理解させるということも一つの問題である。成功すれば組織にどのような利益が生まれるか、従業員の業務をどのように軽減できるか、いかなる組織においてもビッグデータ作成の利点について理解させるようにしなければならない。

さらに、ビッグデータを作成すれば短期間で成功できるに違いないという期待も問題である。この点についてサック博士によると、成功を収めるまでに少なくとも3年程はかかるという。

サック博士は、ビッグデータ作成により成功した産業の例として、銀行業を挙げる。銀行では、これまでもFinTechのような新しい金融テクノロジーが登場する毎に対応を急いできた。そして、多くの銀行でビッグデータとしてのデータ収集を行い、新商品を売り出し、現代人の行動に対応できるようにしている。

「銀行では、どうすれば顧客の行動を最大限に把握できるかという目標を既に達成しています。銀行はビックデータを保有したことで様々なトレンドが目に見えるようになり、需要に応える商品を生み出すことができたのです。データが必要な重要事項とは、どこで、いつ、誰に対して、ということだといえますが、銀行ではこの3つの情報を全て収集できています。それにより、現代人の需要に対応できているのです」(サック博士)

サック博士は、最後に次のように言う。「データは日々進化していきます。ですから、データ作成に終わりはありません。私たちは組織内にデータ使用を実現するためのメカニズムを作成し、データの質を継続的に改善していかなければなりません。最も重要なのは、初めから全てが100%成功すると期待してはいけない、ということです。まずは目標を設定し、土台を築いていかなければならないのです」(サック博士)

 

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