タイの新世代の若手経営者に聞く、宅配スタートアップを起業した理由 | ピリピリ 東南アジア進出をサポート!
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タイの新世代の若手経営者に聞く、宅配スタートアップを起業した理由

*本記事は「日本のITソリューションをタイのビジネスマンに紹介するメディアICHIで掲載された記事を翻訳して転載しております。

タイで活躍する現地スタートアップを特集する本記事。
今回は「宅配市場」です。コロナ禍により、在宅で時間を過ごす人が大幅に増加しました。それにより、コロナ禍前にも増して宅配ニーズは拡大し続けています。人は動かず、モノが動く状態です。タイも例外ではありません。

コロナ禍により、タイでもEコマースを中心に宅配需要は増加し続けています。タイのEコマース市場の2014年から2018年にかけての年平均成長率は12%となっており、Lazadaなどオンラインマーケットプレイスの利用が、その成長をけん引しています。

一方で、宅配サービスにおけるタイのプレイヤーは限られており、Thailand Post(41%)、Kerry Express(39%)の2社が市場の80%を占めています。ヤマト運輸の合弁会社など、いくつかのプレイヤーが市場には存在しますが、上位2社の牙城を崩すことは困難で、寡占産業となっています。

こうした成長著しいタイの宅配市場において、“宅配プラットフォーム”という配送希望者と配送業者を結ぶサービスを起業した新世代の若手経営者がいます。SHIPPOP株式会社のCEO兼共同創設者であるMoshi Suttikiat Chantharachairojさん(以下、Moshiさん)です。Moshiさんが起業した理由には、実家での家業の手伝いが原体験にあると言います。


Moshiさん:
起業家を目指したきっかけは、家業にあります。

子供の頃に、実家の建設業を手伝っていました。その際に、お客様と話す機会が多く、自然と販売の基礎となるスキルの練習ができました。こうした経験もあり、販売という仕事が楽しいと思えるようになりました。
その後、経済的に自立するには事業主か投資家でなければならないと紹介した本を読み、事業主になるために方法を模索するようになりました。事業家を目指すにあたり、様々なことをやりました。考えてすぐに行動して、変化を受け入れ、状況に応じて迅速に対応してきました。


右:SHIPPOP株式会社のCEO兼共同創設者であるMoshi Suttikiat Chantharachairojさん

起業したものの、最初は苦労の連続だったと話すMoshiさん。彼がSHIPPOPを成功に導くまでに、どのような考え方で取り組んできたか質問をしました。


Moshiさん:
最初に注力したのはSHIPPOPのSEOです。例えば、“輸出“を検索すると、最初のページにSHIPPOPが表示されるように努力しました。ウェブサイトも自分でプログラミングを書き、過去に習得したネットワークビジネス販売スキルも、報酬を得るための紹介に適用しました。

もちろん、スタートアップにはリスクがつきものです。始めた当初、僕はフルタイムの仕事を辞めずに、勤務時間外で立ち上げた企業に時間を費やしていました。その後、ビジネスが成功する可能性が高くなると、フルタイムの仕事を辞めました。しかし、仮に立ち上げた企業が上手くいかない場合は、また、在籍していた企業に戻ってくると人事部に伝えました。なので、たとえ失敗したとしても、会社員の生活に戻ることができます。または、フルタイムの仕事に戻りたくない場合は、他のフリーランスの仕事をすればいいと考えていました。

その後、順調にビジネスを推移していたが、コロナ禍に直面した。こうした事態にMoshiさんはどのように対処したのでしょうか。


Moshiさん:
まず、コロナ禍をどのように捉えるかによると思います。パンデミックが発生した時に、それを危機と見るか、機会と見るか、個人的には、コロナ禍はチャンスだと思いました。

なぜなら、誰もがコロナ禍以前と同じような生活を持続させる必要があるからです。最初に、多くの人々が仕事を失っていることを知っていたので、職を失った方向けに、仕事を提供するためのフランチャイズ店舗を作りました。フランチャイズ店舗で職を得ることで、人々は生計を立てられ、私も荷物を受け取るための店舗を増やすことができました。どちらもWinWinの関係だと思います。

また、宅配以外の事業でもチャンスだと思いました。特に、コロナ禍で売れているのは保険です。そのため、自社が運営する店舗でコロナウィルス関連の保険を売るようにしたところ、売り上げをさらに増やすことができました。

この経験は、オンラインショッピングの普及に対して、オフラインシが販売チャネルとして未だに健在であることを示しています。そのため、今後はオンラインで販売している製品をオフラインでも販売することも検討しています。人の行動の一部は、コロナ禍以前と同じだと思います。



こうした経験を踏まえて、Moshiさんの中でスタートアップを成功に導くためには、特に外せない要素があると確信しています。特にMoshiさんが指摘するのは、「注力する事業の選択」と「人のネットワーク」です。

Moshiさん:
「注力する事業の選択」はとても重要です。やりたい事業が20件近くありましたが、ぞのうちの多くを実際に事業としてスタートさせました。そして、どれが事業として存続可能な収益を生み出しているのかを見て、ビジネスプランを立て続けました。今後3〜5年で、どの事業から、どのくらいの売り上げが受け取られるかを確認する為です。そのうち、現在の事業(SHIPPOP)が最も収益を上げたので、僕が選んで続けることにしました。

もう1つ、スタートアップ企業を経営するうえで重要なのは、様々なステークホルダーと関係を持ってビジネスをすることです。例えば、パートナーシップです。現在、各事業は常に他社とのパートナーシップを結んでいますが、こうした関係により顧客のグループを互いに交換することが可能になります。また、優れたメンターまたは投資家がいることも重要です。最後はチームです。SHIPPOPの成功は僕だけでなく、チームのおかげでもあります。


最後に、Moshiさんに今後の展望をお伺いしました。

Moshiさん:
短期的には、スタートアップとして事業を存続させることです。一方で、長期的にはユニコーン企業になることを目指しています。そのためには、会社の時価総額を300億バーツ(1000億円)にする必要があります。ユニコーン企業になるための、今後の戦略として投資家によく話をするのは、サービスの拡大です。例えば、海外への発送、フランチャイズ、店頭持ち込みなど、必要なサービスを拡大させていきます。さらに、すべての東南アジアの国でSHIPPOPを展開し、証券取引所でIPOを目指します。





 

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