デジタルでカウンセリングをもっと身近に ー タイのスタートアップが創る新たな診察体験 | ピリピリ 東南アジア進出をサポート!
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デジタルでカウンセリングをもっと身近に ー タイのスタートアップが創る新たな診察体験

タイとってカウンセリングは気軽なものではありません。しかし、最近ではオンラインプラットフォームを使用して相談を受けることができるため、カウンセリングの敷居は下がりつつあります。

Ooca では、アプリケーションを介して精神科医と繋がり、 相談することができます。Ooca & Wall of sharingの創設者に起業の経緯や今後の展望について伺いました。


*本記事は「日本のITソリューションをタイのビジネスマンに紹介するメディアICHIで掲載された記事を翻訳して転載しております

― 最初に、Oocaについて説明いただけますか。

Eixさん:
Oocaは2017年に設立され、2018年にローンチされたスタートアップです。当時、私自身も精神科医に通っており、治療を受けるまでのプロセスが難しいと感じました。移動も必要ですし、精神科医のスケジュールも 非常にタイトで、この課題を解決するために何をすべきか考え、Ooca というアプリケーションを作成しました。

ユーザーはこのアプリを活用することで、 100人以上の厳選された精神科医や心理学者に 簡単に相談することができます。事前予約もできますが、すぐに話したいなどの要望があれば、 時間を確認し、医師または心理学者がオンラインになっている場合はであれば 、すぐに予約して相談することができます。私たちは、ビデオ通話を使って 一般の人々と法人 向けの両方にサービスを提供しています。法人 向けの場合は人事部と協力して、従業員の心とストレスをよりよくケアできるようにします。今、私たちの法人顧客はすでに40社以上と契約しております。


右:Eix Kanphatsorn Suriyasaengpetchさん

― どういったところに、タイの精神科医に受診する難しさを感じましたか?

Eixさん:
私は歯科医としてタイの国境の近くで働いていますが、仕事柄、自身でもストレスが溜まっていました。そこで、自身のメンタルヘルスのケアをしようとした時に、受診までのプロセスに不便さを感じました。例えば、精神科医とコンサルティングするなら、数週間前からの予約が必要で仕事を数日休まなければなりません。予約の日であっても、数時間待たなければならない場合もあります。このようなプロセスを簡素化することで、多くの時間を無駄にしないようにすることができると考えました。

これは、理学療法とは対照的で、 精神的な健康治療は話すことによって治療できるためです。また、次の治療までに、管理できない事が発生する可能性があったらどうしたらいいのかという不安 が上記で述べた課題を解決できるようなイノベーションを生みだすきっかけになりました。


― 歯科医から心理学ビジネスへの変更はどのように始まったのですか?

Eixさん:
私の家族は、ほとんどが医師または歯科医です。ビジネスマンはごくわずかです。最初はビジネスとは思っていなかったのです。ただ、このビジネスをはじめたら、どうやったら持続可能なものにすることができるのかと考えなければなりませんでした。やりたい気持ちだけは足りず、研究開発やマーケティングについても考えなければなりません。良いソリューションを持っていても、それを知る人がいなければ無駄になってしまいます。

それだけではなく、製品設計や価格戦略、他のビジネスとの協力、事業連鎖なども考える必要がありました。Oocaのサービスは、恩恵を受けるのは患者だけでなく、精神科医や心理学者のキャリアパスを促進することもできます。


― ずっと勉強してきた医学とは異なるビジネスでのマーケティング、 パートナー獲得について教えてください。 

Eixさん:
まずはGoogle検索を使って情報を集め、疑問の答えを見つけることから始めました。次に、コンピュータサイエンス分野を幅広くカバーするオンライン講座サイトUDACITYでオンライン講座を受講しました。テクノロジー製品を理解する上でこうした講座を受講することは非常に重要だと思っています。また、アプリケーション制作会社の方々と話をすることでキーワードなどから徐々に学んで新しい知識を得ることもできました。

非常に重要なのは課題に気づき、インターネットを検索したり、オンラインコースを受講したりしながら解決策を自ら探すことです。オンライン講座を受講したりすることだけでは答えではないかもしれませんが、同じように参加して一緒に勉強をする人々との出会いが、将来的には良いパートナーになることへと繋がるかもしれません。


― 直接病院で精神科医の診察をうけたかのようにユーザーに感じさせるために、どのようなテクノロジーを使用していますか?

Eixさん:
実際、使用されている主なテクノロジーはビデオ通話です。しかし、わずか4〜5年前は、ビデオ通話は今ほど社会やビジネスの場に普及していませんでした。その後、ビデオ通話は普及しましたが、精神科医や心理学者に積極的に患者と繋がれる新しい方法を試してもらうことは難しいものでした。なぜなら彼らはビデオ通話に慣れていないからです。このビデオ通話という新しい方法を受け入れてもらうためにも、科学的なデータが必要でした。当時、世界中で遠隔医療を扱う会社はTeladoc Health、Inc. だけでしたが、株価は好調ではありませんでした。ですから、私たちはTeladoc Health、Inc.の医師、または精神科医に新しい方法を試してみませんかと呼びかけました。 




― 現在、ビデオ通話を使用していますが、将来、Oocaはアプリケーションに革新や新技術を導入する計画はありますか?

Eixさん:
可能性はあります。仮想世界などに関連するビジネスを行いたいと考えます。しかし、こうした最新のテクノロジーを用いたサービスや考え方は一般の人々にすぐに届くものでもありません。ですが、少なくともアーリーアダプターやイノベーションのグループはいち早く反応し、問題点などを改善するための資金を調達し始めています。 将来的には、より多くの人々がバーチャルリアリティにアクセスしやすくなると私は考えています。

自分自身のケアのためにそのようなバーチャルでの方法を選択する可能性もあります。ただし、すべての場合に適しているとは限りません。 AR VRを活用して治療を行うことも考えられます。たとえば、VRを治療に組み込んだPTSDを持つ人々の研究結果は、非常に役立つ可能性があります。それは、過去を直したり、その人が戦っていることの真っ只中にいるという経験に身を置くために時間を遡ることができるようなものだからです。個人的には、新しいイノベーションの導入は可能であり、Oocaでも使われるべきであると考えています。




― 次はマーケティングの部分です。 当初、ターゲットはどのようなグループを考えていましたか? Oocaが発売され、ユーザーとなったのは当初想定していたターゲット層だったのでしょうか?

Eixさん:
最初は情報収集のため、精神科医に受診したい理由についての質問などを中心にリサーチを実施しました。20代後半から40代の女性の70%以上は精神科医に会いたいと思っていて、実際にアプリを使用しているのも同じグループ層であることが判明しました。労働をしている年齢層だけでなく、子供のグループもありました。しかし、Oocaの70%の収入は企業グループとの取引によるものであるため、最も大きなターゲット層は企業の従業員です。


― 次に、精神科医に相談することはまだ受け入れられないと感じている一部の視聴者にメンタルヘルスを推進していくにはどうしたらよいと考えていますか?

Eixさん:
自分の精神のケアに関しては重症にならない限り、おそらく精神科医に行かなかいでしょう。しかし、精神科医や心理学者に相談することは珍しいことではありません。精神科医と相談することは決してストレスに負けているからではないのです。これはただの通常のセルフケアプロセスです。

たとえば腹痛がある場合、最初に自分で薬を飲んでも回復しないようであれば、医師の診察を受ける必要があります。メンタルヘルスも例外ではありません。ストレスを感じると、ほとんどの人は両親、友人、恋人、または自分自身と話します。テレビを見たり、旅行をしたりすることで問題を解決する人もいます。ストレスを和らげるために占い師に相談する人もいます。こうした行動で良くなると感じたら、引き続き行っても構わないのです。

誰もが少なからず自分のストレスを発散するさまざまな方法を持っています。しかし、食べられない、不眠症、または過食症など、正常ではないことに気づき始めたときには、精神科医または心理学者に相談することをお勧めします。メンタルヘルスとは誰もが抱えうる問題に向き合うことであり、決して珍しいことではないのです。


― 精神問題を抱えている人だけでなく、彼らの周りの人も大事ですよね。そうした問題を抱える人に周りの人たちはどのように接すればいいかについてアドバイスはありますか?

Eixさん:
最初は理解や共感をしようとすることです。しかし、患者と同じ場所に身を置く必要はありません。患者の病気で自分自身を傷つけるまで踏み込まないでください。逆に、彼らのそばにいて、励ます言葉を提供した方が良いかと思います。落ち込んでいる人の脳内には、自分自身を悲しみの塊と見なし、周りの人に気分を害させたくない人もいます。しかし、人々がうつ病などと判断する状態は、脳内の化学物質の影響を受けているだけであり、それは治療することができます。

近くの人は共感と理解を持ってそれを見守って、友達として“ここにいる”と伝える事だけで十分だと思います。いずれにせよ、精神的な問題に苦しむ人々を、そしてその人たちを支える周りの方々を応援したく思います。何があっても、これはその人の本当の姿ではなく、病気の影響である可能性があることを理解いただけることを願います。


― 患者や受診に前向きでない家族やパートナーに対し、精神科医の治療を受けることを提案する方法はありますか?

Eixさん:
実は、それはかなり難しいことです。これは、喫煙と似ています。彼らは喫煙が体にとって悪いことを知っていますが、それでも喫煙します。同様に、私たちがこの人には多くの問題があり、精神科医に診てもらう必要があると考えても、彼らの心が受け入れないことには周りは言及できません。しかし、彼らが受診することを決心する瞬間は、彼ら自身が落ち込んで例えば家族や恋人などの大切な周囲の人に当たり散らしてしまい、彼らの人生に影響を与えたときです。

もし、その人が今の関係を大切にしていて、大切な人を失うことを望まないのであれば、精神科医でカウンセリングすることを納得させる絶好の瞬間になります。私たちは、心に問題を抱える人たちにアドバイスをすることできますが、救えることを期待してはいけません。私たちは彼らを強制することはできないのです。彼らの心の準備が整ってはじめてその瞬間は訪れるのです。


― 最後に、昨今のCovid-19時代の中でスタートアップビジネスを始めたいと思っている人たちにひとこといただけないでしょうか。

Eixさん:
確かに、前を見て向かうことはいいことですが、現状を把握して検討する必要があります。可能であれば進んでも構いません。しかし、先に進めない場合は、他のことをしたり考えたりしましょう。それは悪いことではありません。試しても成功しなかったら、それをレッスンとして学んで別のことに切り替えることが大事です。私たちはいつでもやり直すことができるのです。


 

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