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顧客理解のためのビッグデータとCustomer Data Platform(CDP)の活用方法

*本記事は「日本のITソリューションをタイのビジネスマンに紹介するメディアICHIで掲載された記事を翻訳して転載しております

現在のビジネスでは、売上高やコスト、費用といったデスティネーションデータ(Destination data)だけを分析していたら、デジタル時代の消費者行動の変化にはついていけない。したがって消費者の真のニーズを把握するためには、ビッグデータとCDPを作成することによるデータ収集が非常に重要なものとなってくる。そして、これらはビジネス拡大のチャンスももたらすものなのである。
 

Predictive Company Limited ナッタコーン・ラッタナチャイシット氏

Predictive Company LimitedのCEOであるナッタコーン・ラッタナチャイシット氏(以下、ナッタコーン氏)によると、ビッグデータ作成などのデータ収集は、企業オーナーが顧客の行動をより理解できるようにするための重要事項であるという。特に、この新型コロナウイルスの時代、消費者の商品購入や情報検索の行動はすっかり変化し、消費者は商品やサービス購入の決断をする前に以前より多くの時間を割いて情報を検索するようになっている。つまりコロナの発生は、様々な事柄のターニングポイントとなったのだ。

かつてはどんな会社でも、売上高、収入、原価といったトランザクションデータ(Transaction Data)の収集・分析を行い、年齢、性別、収入といったデモグラフィックデータ(Demographic Data)をビジネスプラン策定の決断に使用していた。しかし現在、こうしたデータだけではもう不十分である。というのは、デジタル世界においては、誰もが商品購入の選択にLINEアプリやフェイスブックなどのSNS、Googleやウェブサイト、また様々なスーパーアプリを使用するようになっているからだ。したがって、事業者はデジタル形式での顧客のデータの収集、中でも特に行動データ(Behavior Data)の収集をする必要があるのだ。
 
行動データの使用とは、行動データを収集し、顧客がどのような商品を選択しているか、何の情報を検索しているか、将来何をする傾向があるかといった事柄を調査することである。ここでビジネスチャンスを模索するためには、事業者は、情報検索の経路がどのようなものかというカスタマージャーニー(Customer journey)を理解し、分析する必要がある。

たとえば、顧客が口紅を1本買う場合、行動データとは、商品を購入する前に顧客がどんなブランドのどんなモデルの何色の口紅を比較検討したか、また、口紅を購入する前に顧客がSNSでどんな種類のコンテンツを読んだかということである。これらの行動データをビッグデータに収集すれば、分析に適した質の良いデータが得られ、この顧客が求めている商品を的確に顧客におすすめできることになる。

「私たちは、顧客が何を期待しているのかというニーズを理解しなければなりません。こうしたデータを収集した後は、AIで分析し、顧客を分類します。それにより、商品紹介プロセスがニーズと整合したものとなります。デジタル世界では、事業者は、デジタル世界における顧客の過去の様々な行動(Digital Footprint)を全て収集することが可能です。したがって、ビッグデータのような巨大なデータを保有すれば、より的確に顧客とコミュニケーションすることが可能になるのです」(ナッタコーン氏)
 


 

ビッグデータを有効活用するためには?

ナッタコーン氏によると、ビッグデータの使用を開始するにあたって重要なことは、目的を明確に設定することだという。つまり、ビジネスの目標が何かということである。

「たとえば、目標をEコマース(E-commerce)における売上向上と設定します。次のステップは、現在のEコマースの販売チャネルがどのようなものか、引き込むことのできる顧客基盤があとどれくらいあるか分析することです。ここで顧客の行動を理解していれば、各層の顧客のニーズがどのようなものか掘り下げ、的確に商品やサービスを紹介し、こうした顧客を取り込んでEコマースでの商品購入に対する良い経験(Good Experience)を築き、広告予算を追加することなく売上のシェアを広げていくことができます。この例から分かる通り、問題を把握・改善していけば、目的地すなわち設定された目標は自ずと高くなっていくものなのです」(ナッタコーン氏)

 

Customer Data Platform(CDP)とは?

ビジネスで成功するためには、ビッグデータを作成するだけでなく、Customer Data Platform(CDP)の作成も必要である。尚、CDPとは、様々な地点のデータを連結してくれるプラットフォームである。顧客はSMS、LINE、Email、コールセンターなど様々なチャネルを情報検索に使用している。CDPを作成することにより、これらのデータを取りまとめ、ビジネスオーナーが単一ビューにおいて顧客を理解できるようになるのである(Single View of Customer)。また、組織内の人が同一のデータにアクセスできれば、新たなビジネスチャンスを築くことにもつながる。



 

CDPのビジネス利用〜2つの主軸

1.    ビジネス最適化(Business Optimization)のためのCDP利用。
たとえば、収益の増加、支出の低減、より良いユーザーエクスペリエンスの構築など。

2.    新ビジネス拡大や新製品追加(Business Transformation)のためのCDP利用。
顧客の行動調査のためにCDPを利用し、顧客のニーズを把握した後、新ビジネスや商品を構築する。

「Grabのようなスーパーアプリでは、飲食業、商品配達、クレジットなど様々な側面の膨大なデータを収集しています。Grabでは取得した顧客のデータからニーズを分析し、広告販売関連のGrab Adsなど、新ビジネスを生み出しているのです。これは、データ収集を新ビジネスへの拡大に利用したほんの一例です」(ナッタコーン氏)

組織にCDPがないと、ポイント毎にデータ分析をするしかなく、顧客行動の分析が難しくなってしまう。たとえば、ウェブサイトの使用データを分析する場合、コールセンターへの電話とは分けて分析することになる。だが実際は、同一の顧客が色々なチャネルを利用して情報を検索しているかもしれない。まとめて分析することができないと、顧客の行動を真に理解することは不可能になってしまうのだ。



 

CDP作成の主な4要素

1.    データ管理(Data management): ウェブサイト、アプリ、コールセンター、その他のチャネルなど多様なプラットフォームからデータを収集し、これらのデータを全て相互に連結させること。データを分析に適した正確な質の良いものにするためのプロセスといえる。

2.    IDデータ検証/照合(ID Resolution): 各チャネルからのデータがどのように関連しているか照合すること。たとえば、アプリからのデータであるタンクAのデータを、その他のチャネルからのデータであるタンクBと合わせて処理する場合、これらのデータを一緒にすることができれば、異なるチャネルの顧客が同一人物かどうか即座に分かるのである。

3.    分析(Analysis): 顧客各人の商品購入傾向がどのようなものか、どのような情報に関心を持っているか分析すること。分析にはAI又はMachine learningが併せて用いられる。

 


4.    アクティベーション(Activation): 分析済みのデータを取得した後にデータを活用するプロセス。データは、フェイスブック、ユーチューブ、その他のチャネルといったデジタルエコシステムを通じた広告、サービス利用又は商品購入をすると思われる顧客層を開拓するためのダッシュボードの形成など、様々な形で活用することができる。

 

CDP利用の最初の一歩

Predictive Company LimitedのCEOであるナッタコーン氏によると、デジタルテクノロジーの使用を始めたければ、まず、企業を理解すること、企業の問題を理解することから始めなければならないという。それから、需要に見合ったソリューション(Solution)を導入するのである。

「テクノロジーの問題から入らないようにして下さい。まずは、何の問題を解決しようとしているのか、企業の目標を理解しなければなりません。それから、ソリューションのマッチングをします。最初に問題を理解しなければ、つまり、目的を設定しておかなければ、的確なソリューションはできませんし、投資に見合った価値は生まれません」(ナッタコーン氏)

 現在のビジネスでは、顧客が何を求めているかを理解しなければ、競争における優位性を築くことが難しい。顧客中心主義志向(Customer centric)の企業を目指すにあたり、ビッグデータ・CDPは重要な役割を担うだろう。将来、3年のうちには、全ての会社でデータの導入が増加しているはずだろう。それは、データは膨大な利益をもたらすものだからである。

 

 

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