ASEAN市場参入の波に乗り遅れるな!ー 現地で勢いのあるスタートアップ企業のご紹介 | ピリピリ 東南アジア進出をサポート!
Thailand タイ

ASEAN市場参入の波に乗り遅れるな!ー 現地で勢いのあるスタートアップ企業のご紹介

近年のASEAN市場の成長はめざましく、世界的にも注目を集めています。一方で、参入を検討しようという企業の多くから、「国ごとの特徴や現地の業界動向などの詳細がなかなかつかめない」という声を耳にします。

ピリピリを運営する株式会社ビッグビートが主催したオンラインイベント Bigbeat LIVE ASEAN vol.04の「ASEAN StartUp Pitch」では、今ASEANで勢いのある現地のスタートアップ企業5社をお招きし、ピッチ方式で講演いただきました。国も業界も異なる5社ですが、共通してITテクノロジーを駆使することで現地の課題解決と新たな価値創造を実現させています。ASEANへの参入を検討中の日本企業にとっても、ヒントや協業の可能性につながる情報が盛りだくさんです。

<登壇のスタートアップ企業一覧>
Autopair Co., Ltd.(自動車修理プラットフォーム/タイ)
Clavis Aurea(SaaS/シンガポール)
Med247 Co.,Ltd.(Health Tech/ベトナム)
SupplyCart(調達プラットフォーム/シンガポール)
ZmyHome.com(不動産プラットフォーム/タイ)


 

東南アジアの資金調達額が日本を抜いて世界4位に

2021年9月のBigbeat LIVE ASEAN vol.04( https://bigbeatlive-asean-2.com/ )の基調講演において、経済産業省でアジアDX(デジタルトランスフォーメーション)プロジェクトを率いる前田翔三さんは、資金調達額の観点から東南アジアのめざましい成長を次のようにご紹介されました。

2015年〜2019年の累計資金調達額において、東南アジアがアメリカ、中国、インドについで2.1兆円と日本を抜きました。2020年以降では更に伸びていくものと予想されます」(前田さん)


※Bigbeat LIVE ASEAN vol.02 経済産業省 前田様 講演資料より抜粋

その筆頭ともいえるシンガポールのGrab社とインドネシアのGojek社を例にとると、2015年〜2021年の6年間の総調達額は、それぞれ1兆円、5,800億円を超えています。こうした急成長を遂げる東南アジア市場には、実際にはどのような課題やニーズ、参入の可能性があるのでしょうか。

(なお、前田さんによる講演の詳細は、こちらのレポート記事をご覧ください)

 

1.「自動車修理」領域のデジタル化に成功 Autopair社(自動車修理プラットフォーム/タイ) 

Autopair社は、自動車修理の効率化を図るサービス開発をおこなうタイのスタートアップです。

タイにおける乗用車の平均寿命は12年といわれ、その多くが4年目以降の9年間にわたりメンテナンスや修理が必要になってきます。その一方で、運転者のおよそ80%が車に関しての情報や知識が十分ではないため多くの人が正規のサービスセンターではなく地域の安い車修理工場を選んでいる現状があります。

タイにおける自動車修理の市場規模は、タイ全土の中古車数約1400万台に一台あたりの車のメンテナンス・修理の年間費用の平均280米ドルをかけあわせた、「年間41億米ドル」にもなります。この巨大な数字は、自動車利用者と修理工場との間に適当なインフラが整備されていないことが大きな要因であり、Autopair社はこの課題解決に真正面から向き合っています。車の修理やメンテナンスにおける最大の問題は「車のサービスニーズを知らないこと」であり、これにより修理工場の価格や企画・透明性への疑問が生じています。




そこでAutopair社はエンドユーザー向けのウェブアプリを開発し、車のメンテナンス費用の即時見積もりや、平均市場価格との修理費用比較、近隣で対応可能な信頼できる修理工場の予約などのサービスを提供しています。現状、280以上の修理工場をデジタル化して月3,500件以上の取引実績があり、3年後には全国5,000の修理工場のデジタル化を目標としています。

<日本企業からみた参入の可能性>
タイをはじめ、ASEANの多くの国はインフラとしての車が欠かせません。その中でメンテナンスや修理に大きな市場やチャンスを見出したAutopair社の目の付け所が素晴らしいものだとわかります。

日本では自動車修理の領域は既にある程度最適化されていますが、修理やメンテの質や価格情報がクリアになれば、メーカーにとってもより長く自社製品を使っていただけ、部品供給もできるようになり、Win-Winの関係になっている点も特筆すべき点です。

修理やメンテンナンスにかかわるデータを取得するためのソフトウェアのセグメントなどは、最適化が進んでいる日本企業が協力していける領域と言えそうです。

 

2.企業のDX化支援で急成長 Clavis Aurea社(SaaS/シンガポール) 

Clavis Aurea社は、東南アジアのアセット&ファシリティサービスのリーディングカンパニーです。法人顧客の次の3つの課題解決を主な目的として事業展開をしています。
 

1.質がよく柔軟な使い方ができる設備を見つけること
2.資産運用コストを削減すること
3.資産と設備に対する投資収益率を最大化すること


600万以上の企業があるといわれている東南アジアの中で、Clavis Aurea社が現在特に注目している国と産業は、多額のFDIと現地企業投資によって急速に成長しているベトナムの金融・インターネット・投資・医療・製造・顧客・接客・教育の各産業です。



Clavis Aurea社は、ベトナム初かつ唯一の資産・施設管理サービスソフトウェアとして事業をスタートしました。テクノロジーを駆使した次の3つのサービスを提供することで、顧客の資産管理の生産性の20~35%向上、運用コストの15-30%カットに貢献しています。
 

1.コンサルティング、プロジェクト管理と統合
2.SaaSを年4回または1回払のサブスクリプション制で提供
3.IoTセンサーのスマートデバイスであるFRIDの提供


協業や資金調達の観点から、イオンモール社、Coffee House社、Golden Gate社など、小売業界のトップブランドとも提携しています。

今後は特に医療分野との連携を強め、ベトナムの大・中規模の病院へのサービス提供を長期的な視野で取り組むべく、Microsoft社、Oracle社、SAP社などの主要な先駆企業に加え、施設テクノロジーのトップブランドとも提携も始めています。

Clavis Aurea社は、資金面においてもSaaSやMarketplaceからの主な収益は市場開拓にあてており、50万米ドルの資金調達も予定しています。

<日本企業からみた参入の可能性>
ベトナムをはじめ、東南アジアでもデジタル化は加速しています。そんな中で管理担当者・経営者にとって施設の価値の見える化、会社の資産としてPCやスマートフォン・その他ハード機器の管理をどうデジタルで行っていくのかという課題は今まさに解決を図っていこうとしているところかと感じます。

Clavis Aurea社のように東南アジアの現地の方々にサービス導入いただく上では、SaaSなど現地企業が導入しやすい提供形態が求められているのではないでしょうか。

 

3.アプリ開発で医療業界に革新 Med247社(Health Tech/ベトナム) 

Med247社はベトナム有数のヘルスケアプロバイダーです。対面診療からオンライン診療までシームレスな体験を提供することで、テクノロジーを駆使した医療格差の是正に取り組んでいます。

直近の18ヶ月でMed247社の収益は大幅に増加。オンライン・オフラインをあわせて平均して1ヶ月に5,000人強の患者の診療実績があり、開発アプリは4万人以上のアクティブユーザーと49%の定着率を誇っています。さらに遠隔診療ネットワークでは前月比200%の成長率を誇っており、このような最近の成長からMed247社は「Forbes」で「アジア注目の100社」に選出されました。

ベトナムのオンライン医療はまだ成長の過渡期であり、RedSeer社の調査によると、2025年までにオンライン医療が10倍程度に成長すると予想されています。また2022年までに約230億米ドルが医療に費やされ、モバイルアプリユーザー数が6,000万人以上に達しているという情報もあります。



このように医療業界の市場規模が拡大するに伴い、医師不足問題が深刻化しています。ベトナムでは1万人あたりの医師数は7.8人と十分ではなく、45,000もの個人診療所が乱立しているため全体的に、患者の医療環境は満足いくものになっていないのが現状です。

こうした環境改善のためにMed247社では、サテライト診療所のサプライチェーンとして機能する本格的な診療所を設けました。この診療所には医師・看護師がそれぞれ1〜2名常駐しており、当社独自の診療所集中管理システムでカルテ管理もおこなっています。また、Med247社のアプリでは、オンラインユーザーが遠隔診療や遠隔診断、処方薬宅配、在宅医療サービスの予約や、コミュニティ、FAQがまとまったコンテンツなどを利用できます。さらに、成長維持のため女性中心の診療所と小児科診療所も充実させており、VietinBankや母子向けの保険会社との提携、FinTech企業との共同開発も行っています。

今後 Med247社は、KidsOnline社、MyGym社、Bibo Mart社などの幅広い親会社ネットワークやハノイ公衆衛生大学とのパートナーシップなどをもいかしつつ、病気の治療だけでなく、現地生活者の予防医療やウェルビーングの実現に向けた貢献を視野に入れているとのこと。医療をアクティブにモニタリングするためのIoTデバイスも開発しつつ、2023年までに約145の診療所、2024年までに300以上の診療所を開設し、200万人のユーザーを持つことを目標としています。

<日本企業からみた参入の可能性>
コロナパンデミックもあり、医療サービスの重要性はますます高まっており、超高齢化社会を先行している日本にとって、ベトナムの医療業界は参入するチャンスが非常に多くありそうです。

ベトナムは都市部と地方部、公的と民間かによって医療レベルや価格の格差が非常に大きく、社会問題化しています。こうした適切な方に適切なサービスが届いていない現状に対し、Med247社はオンライン診療などのテクノロジーをいかしたソリューションを提供しています。

日本のオンライン診療サービスをベトナムでローカライズ・最適化する機会はたくさんあると言えます。また、MedTechのスタートアップや医療機器の物流にかかわる企業にとっても大きなチャンスを秘めています。

 

4.「Financial Times」でASEAN企業の上位500に選出 SupplyCart社(調達プラットフォーム/シンガポール) 


SupplyCart社はマレーシア・シンガポール・香港に拠点をおく地域密着型企業で、調達技術企業として、業務のデジタル化と組込み型金融サービスによる支出管理向上のためにワークフローと調達の技術開発を行っています。

SupplyCart社が解決する問題は、十分な業務デジタル化サービスを受けられていない中小企業の課題解決です。東南アジアでは、中小企業の74%以上が新たなサービス導入にあたりコストの制約に直面しています。そのため、80%以上の企業が依然として手作業で業務を行っていること、特にサプライチェーンにおいてその傾向が顕著であるという課題があります。

また、コロナ禍の影響もあり、2020年には中小企業の34%以上で販売が減少したとの調査もあります。




SupplyCart社が提供するソフトウェアおよびプラットフォームを中小企業が導入・活用することで、ワークフローのデジタル化、プロセスのオートメーション化、サプライチェーンのデジタル化、組込み型金融やサプライチェーンファイナンスの利用が可能になります。このようなデジタル化支援によって収益最適化と成長に貢献しています。

SupplyCart社では、既にSAPやクラウド会計、Xero会計などのソリューションと提携しており、今後はSage会計、Microsoft Dynamicsなどのサービスとの提携も予定しているとのこと。

コロナ禍による需要の変化もあり近年新規ユーザー数が大幅に増加し、68業界1,000社以上の契約を結び、毎月2,000人以上のアクティブユーザーがSupplyCart社のプラットフォームを利用しています。こうした実績から「Financial Times」でもAPAC地域の上位500社の企業の1社として認められました。

今後に向けては、2022年にタイ、フィリピン、インドネシア、ベトナムへの進出を視野に入れ、さまざまなクライアントと協力し国境を越えた取引をさらに促進したいとのこと。ASEAN全体での取引規模は2027年には20兆米ドルを超えると予想されています。

<日本企業からみた参入の可能性>
SupplyCart社は、BtoBのプラットフォームとしてまずはアスクルのような非常に調達のしやすいものからスタートし、段階を踏んでサービスITの調達へと事業を展開されています。ASEANまで活動範囲が広げると、その重要性はますます高まるでしょう。

日本企業としても「SupplyCart社のプラットフォームに自社サービス・製品をのせられないか」「調達の前段階でできる自社技術で協業できないかなど、様々な切り口でのビジネスチャンスがありそうです。

 

5.「先進国の当たり前」をIT技術で実現 ZmyHome社(不動産プラットフォーム/タイ) 


ZmyHome社はタイで最も信頼のおける不動産プラットフォームであり、近年で22,000件以上の住宅を売却・賃貸実績があります。

不動産業界において、とりわけタイではプラットフォームの信頼性が非常に重要になっています。というのも、住宅販売は先進国では3ヶ月以内に完了するのに対し、タイでは平均1年もの期間がかかる現状があります。そこには先進国ではあたりまえの次の3つがタイで欠如しているという背景があります。
 

1.住宅取引価格の公開義務(ウェブの表示価格と実際の価格が相違のないようにする)
2.先進国認定仲介業者による販売価格について所有者との合意(専任媒介契約書の締結含む)
3.信頼できるプラットフォーム(定期的な更新、不正取引の排除など)




ZmyHome社は、こうしたタイの不動産業界が抱える不足を、「新たな不動産エコシステムを構築し業界を改善し大きなリターンを生む絶好の機会」と捉え直しました。

事実、タイの不動産業界のプラットフォームに関わる企業はユニコーンになる可能性が非常に高く、現在タイで不動産プラットフォームをリードする4つの企業は、2020年時点で合計540億米ドル相当の価値があり、28億ドルの収益を同年に達成しています。

ZmyHome社は、こうしたタイの不動産業界の課題解決のために価格設定ツールとマーケティング広告を開発し、所有者が価格について学び興味のある買い手に自分の住宅を直接売り込めるアプリケーション「Buyer Seeking System」を発表しました。このZmyHome社の市場規模は年間約1億米ドルに達しており、東南アジア全体を視野に入れると約6億米ドル規模になると予測されています。

さらにZmyHome社は2020年4月に自社の代理店を立ち上げ、共同仲介業を開始。コロナ禍にもかかわらず100件の成約に成功しました。

ZmyHome社はバンコクでナンバー1の不動産プラットフォームになるために、現在200万米ドルの資金調達をしています。今後は東南アジアに視野を広げ、不動産市場の変革にとりくむとのことです。

<日本企業からみた参入の可能性>
Autopair社の自動車修理の事例と同様に、日本での当たり前がタイではまだ未整備であるケースです。その意味で、日本の常識を現地に導入することで役に立つ可能性がある一例といえるでしょう。

不動産プラットフォームのサービスは、日本企業としても海外進出先の拠点選びで使う可能性もあります。マーケットがこれから発展していくASEANにおいては、不動産業界の需要はさらに高まることでしょう。

***

今回紹介した5つの企業は、どこも日系企業を含む海外企業とのパートナーシップに関心をもっています。もしご興味のある企業がありましたら、marketing@bigbeat.co.jpまでお気軽にお問い合わせください!
 

関連記事