タイの非常事態宣言は7月31日まで延長!新型コロナウイルスの経済影響とは。

【2020年7月17日】公開

新型コロナウイルスの影響により、「タイ非常事態宣言」が2020年3月26日に発令され、生活必需品を扱う店を除き大半の商業施設が営業停止となりました。 
6月30日までの予定でしたが、先日7月31日までの延長を発表(タイ政府による6月30日付けの官報において)。 

タイの規制緩和には日本同様にフェーズがあります。
7月1日からは「規制緩和第5期」として、学校等の再開、各種施設及び活動の再開は決定しており、パブ、バー、カラオケについては、上限を24時として営業再開が認められております*1。 

段階的に緩和されつつありますが、新型コロナウイルスはタイ経済にどのような影響を与えたのでしょうか。
一般社団法人 日・タイ経済協力協会 専務理事である下大澤様へのインタビューより、新型コロナウイルスによるタイ経済の変化と、製造業の今を探ります。 

    

タイの国内総生産(GDP)の成長率見通しを下方修正 

GDPとは国内総生産(Gross Domestic Product)の略で1年間に国内で新たに生産された財・サービスの価値の合計です(広辞苑より)。
タイ中央銀行は金融政策委員会(MPC)会合で、6月24日に2020年のタイの国内総生産(GDP)成長率見通しを3月時点の5.3%減から8.1%減に下方修正しています。
新型コロナウイルス感染症による観光、輸出、消費などへの影響が当初の想定を上回ると判断したためです。*2 

一方、タイ政府は新型コロナウイルスに対する経済対策を決定しており、総額は2兆5000億バーツとGDPの15%に相当します(ASEANではシンガポールに次ぐ規模)。*3 

下大澤氏によると、それでも、経済活動の停止やロックダウンによる影響が大きく出ており、例えば以下が挙げられます。 

・経済指標の落ち込み
 輸出や製造部門、民間の消費・投資等

・観光業の落ち込み
 観光業はGDPの2割近くを占める主要産業なうえ、観光客は中国人が1/3を占めていたこともあり影響が大きい

・サプライチェーンに打撃
 中国からの部材の輸入が途絶える 

外国人の入国を原則的に禁じており、主要産業の一つである観光業は特に深刻な打撃を受けています。
タイの産業は、中国からの輸入依存を脱却するために競争力を維持した形での産業集積形成と産業高度化が課題(例:デジタル化の加速による人材育成)なのです、と語ります。 
 

タイの部門別GDP:割合No.1の製造業は 

タイの主要産業は製造業で、そのなかでもGDPに占める割合として高いのが自動車産業(7%)となります。 


出典:「THAILAND INVESTMENT REVIEW Vol. 29 | No.2 | February 2019

年間200万台近く生産する、世界でも有数の自動車生産国です。 
タイ工業連盟(以下、FTI)によると、新型コロナウイルスの影響が出る前は自動車生産台数は「国内向け」「輸出向け」が約100万台ずつと半々で推移しておりました。 


出典:JETRO「2018年の自動車生産台数、国内向け、輸出向けともに増加」(ビジネス短信 2928396861d041ff)(2020年7月6日閲覧) 

今日では、バンコク周辺の工業団地に日系メーカーをはじめ、世界各国の完成車メーカーが生産拠点を展開しています。 

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タイ国内の販売台数において日系メーカーが高い販売シェアを有していることです。
トヨタ自動車単独で 30%、日系メーカー全体では 90%前後の圧倒的なシェアがあり、街中を走る車のエンブレムは日本人にとって身近なものが多いです。

新型コロナウイルスの拡大により、(中略)自動車需要の減少を受け、タイでも完成車メーカーが工場の生産ラインを一時的に停止する生産調整に踏み切りました。
出典:「タイにおける自動車産業の概況~新型コロナウイルス感染拡大の影響を踏まえて~一般調査報告書」(バンコク産業情報センター、2020年6月1日)

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FTIは3月に2020年通期の生産見通しを期初の200万台から190万台に下方修正していましたが、今回の発表では、新型コロナウイルスの影響が9月まで長引けば、前年比半減の100万台(国内向け50万台、輸出向け50万台)に落ち込む恐れもあるとし、さらなる下方修正を検討するとしました。*4 

しかしながら「日系自動車メーカーは、5月中旬頃に生産を再開しており、現状は4月…2万5千台▲84%、5月…5万6千台▲69%(前年同月比)と国内販売、輸出ともに改善傾向にあります」と、下大澤氏は最近の動向を語ります。
 

タイへの入国管理の緩和 

「日本人駐在員のタイへの入国待ちは9千人とも言われています。しかし、政府が指定した隔離施設の数にも限りがあります。」(下大澤氏) 

外務省が7月2日に発表した「新型コロナウイルス(日本からの渡航者・日本人に対する各国・地域の入国制限措置及び入国後の行動制限)」にて、「タイ」の入国制限の詳細が掲載されています。 

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6月29日、政府は以下のとおり外国人の入国制限の一部緩和を発表した(翌30日に正式決定、7月1日から実施。)。 
国籍を問わず、次の者について入国を許可する(自己負担で政府指定施設での14日間の自己隔離を行うことが条件。)。
①労働許可書所持者の配偶者及び子弟、②永住者、③タイ国籍保有者の両親、配偶者及び子弟、④タイ国内で医療サービスを受ける外国人及びその介助者、⑤留学生及びその両親、⑥タイに駐在する外交官、外国政府職員、国際機関職員等及びその両親、配偶者及び子弟。
なお、外国人の入国は、タイ人帰国のための臨時便・特別便等への同乗でのみ可能となる(国際定期商用便の運行は再開しない。)。
 出典:「新型コロナウイルス(日本からの渡航者・日本人に対する各国・地域の入国制限措置及び入国後の行動制限)」(外務省、令和2年7月3日(午前6時更新))

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まとめ 

タイでも、新型コロナウイルスの影響による規制は続いております。
一方で徐々に緩和されているのは日本と同様です。
新型コロナウイルスの影響下で、ビジネスモデルは変化を続け、いま、まさにその過渡期といえます。 

下大澤氏は、
「中国からの部材輸入が占める割合が意外に多かったのです。
中国の日系企業はタイよりもむしろベトナムにオペレーションをシフトチェンジしようと考える傾向があります。
今後、タイではリモート・ロボット・自動化などに関わるセクターが一層活発化すると予想します。
新型コロナウイルスの影響で失業率は上がりつつある中でも、IT人材だけは不足しています」
とタイの変化と課題について、力強く語りました。 

【参考】
*1 :在タイ日本国大使館「新型コロナウイルスに関するお知らせ(非常事態宣言の延長及び規制緩和の発表について)」(2020年7月3日閲覧) 

*2 :newsclip.be「GDP見通し8.1%減 タイ中銀が下方修正」(2020年7月3日閲覧) 

*3 :日本経済新聞「タイ、6兆円の経済対策第3弾 GDPの1割」(2020年7月3日閲覧) 

*4 :JETRO「第1四半期の自動車生産台数は大幅に減少、通期見通しの引き下げ検討も」(ビジネス短信 4add4ad462914f4b)(2020年7月6日閲覧)


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