AIによる課題解決を世界へ ― AI inside 社がタイを選んだ理由 【後編】 | ピリピリ 東南アジア進出をサポート!
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AIによる課題解決を世界へ ― AI inside 社がタイを選んだ理由 【後編】

 近年、日本のスタートアップ企業の海外進出が続々と進んできています。国としてもスタートアップ企業に注目をしており、経済産業省では世界で通用するスタートアップ企業の育成支援プログラム「J-Startup」を提供しています。そうしたスタートアップ企業の中で、創業から数年で国内AI-OCR市場トップシェアに立ち、東南アジアのタイで事業展開を始めた企業があります。それが「AI inside 株式会社」(以下、AI inside 社)です。 
 
AI inside 社は、2015年8月の創業以来、誰もが簡単かつ低コストにAIをつくり、活用することができるAIプラットフォームを開発・提供しています。AI技術のスタートアップは数ある中で、なぜAI inside 社は急成長を続けているのでしょうか。なぜ今、海外展開をはじめ、東南アジアのタイへの進出を決めたのでしょうか。そこには、AI inside 社が創業当時から大切にしているひとつのミッションが背景にありました。今回、VP of Global Sales Unitの中谷健さんからお話を伺います。(前編はこちら

 

飛躍的な成長の鍵は「パートナー戦略」

― SaaSの製品やサービスというと、一般的には直販から始めて、ある程度スケールが出たところでパートナー販売に向かうパターンが多いように思います。一方、AI inside 社は、「パートナー戦略」を早い段階から推進されている点が、他社にはない特色として注目を集めています。実際に、タイでもこのような「パートナー戦略」を軸とした事業展開をお考えなのでしょうか。
 
中谷さん:
当社は創業から2〜3年という速さで、日本のAI-OCR市場シェアの約64%を占める事業拡大をしました。


AI inside 株式会社 VP of Global Sales Unit 中谷健さん

これを実現した一つの理由として、サービス立ち上げの早期から直販とパートナー販売の両輪で事業を展開したことが挙げられます。

特に「DX Suite」は、アナログデータをデジタルデータに変換できるAI-OCRを誰もが直感的に使えるシンプルなプロダクトです。パソコンで行うバックオフィス業務を自動化できる業務効率化ツールであるRPA(Robotic Process Automation)や、統合基幹業務システム:ERP(Enterprise Resource Planning)、会計システム等と組み合わせて企業のDX推進に貢献しているケースが多く、これらシステムの導入支援を手がけるパートナー様と共同で提案を行う機会も多いため、早期のパートナー販売が実現したと言えます。「DX Suite」はタイでも同様の使われ方が想定されるため、早期のパートナー販売は有効と考えます。

また、AI-OCRは先行者利益の高い市場だと捉えています。AIは使われるほどデータ量が増え、精度が向上するため、より高いクオリティのサービスを提供できるようになります。ですから、まずは先行して市場に入ること、良いサイクルに早く持っていくことを目指して、タイへの事業展開でもパートナー戦略を重要視しています。

パートナー様のアセットを活用させていただくことが、当社のミッション「世界中の人・物にAIを届け豊かな未来社会に貢献する」をいち早く達成することに繋がり、より多くの社会課題の解決に貢献するとも考えています。

 

Scale Beyond――行動指針に裏打ちされた「並外れた成長」

ーパートナー戦略の根底にも「社会課題の解決」があるのですね。 

中谷さん:
当社は社会課題ドリブンの会社です。「世界中のあらゆる社会課題を解決したい、社会課題に向き合っている人の力になりたい」。この想いがベースです。

そのように考えたときに、当社だけでは課題発見およびソリューション開発・提供のためのリソースが限られています。現地や各業界の事情をより深く認識しているパートナー様と対話や連携をしながらソリューションを共に創っていくことで、より多くの課題をより本質的に解決ができると考えています。こうした知見や実績を積み重ねて、パートナー様と共に成長を目指します。

この戦略を「パートナーグロース」と社内では呼んでいます。パートナーの成長や成功あっての価値創造ですから。

AI inside の「パートナーグロース」の詳細はこちらをご覧ください。
https://note.inside.ai/n/naa0633d06fc5 


― パートナー企業の課題解決も御社の成長につながるのですね。

中谷さん:
はい。パートナー様と連携したほうが、より早く・大きく成長できます。こうしたマインドは、AI inside で掲げている7つの行動指針の一つ「Scale Beyond」(私たちは現状の最適化ではなく並外れた成長を遂げる方法を追求し、ユーザやチームメイトと境界を越えて連携しながらより大きなインパクトを生み出します)に則ったものです。

 

出典:ビジョン達成に向けたカルチャー作りへ、行動規範と働き方・福利厚生を新たに https://note.inside.ai/n/n82dabd2dad51 

 

「販売」ではなく「課題解決」のための共創を

― 言語も文化も異なるタイでのビジネス展開は日本以上に難しいのではないかと想像しています。なにか意識されたり工夫されていることはありますか。

中谷さん:
当社のサービスはあくまでも「課題解決ありき」のため、日本で通用したものを単にタイで販売してください、というだけにとどまるつもりはありません。タイで生じている課題をヒアリングし、その課題を解決するためのソリューションを形にする必要があります。

ですから、パートナー様には「このように販売してください」という伝え方はしません。代わりに、パートナー様の成長を共に描きながら、「一緒にソリューションを創っていきましょう」と対話をしています。


―「一緒にソリューションを創る」といっても、パートナー企業からの理解や協力は得られるものでしょうか。

中谷さん:
我々のパートナー様は、SIerやITコンサルが中心です。彼らはERPやRPAの導入を行っており、当社のプロダクトと相性が良く、連携することでパートナー様が提供するサービスの価値を向上します。つまり、共にパートナー様のソリューションをつくることが、パートナー様にとっての事業拡大につながります。こうしたメリットを感じていただけています。

また、AI-OCRは、請求書のようなどの会社にも共通して発生するドキュメントのデジタルデータ化を効率化します。営業対象が膨大にある点も魅力に感じていただけているように思います。
  

― ビジネスモデルの観点でも、パートナー企業にとって協働するメリットが多いのですね。

中谷さん:
はい。パートナー様を開拓するにあたり、パートナー様にとってのメリットをしっかり訴求することを意識しています。例えば、「DX Suite」は手書き文字の読取が強いので、この強みをいかしながら他のプロダクトと差別化をする。このような工夫は、タイに限らず日本でも重視しています。

 

「お客様が自走できるプロダクト」への昇華をめざして

― 最後に、今後に向けた展望をお聞かせください。

中谷さん:
日本で成功している事例をそのまま海外で実践するだけで成功するビジネスモデルと、そうでないケースがあると思ってます。特に、国によって大きく違いがある文化や法規制に関わるようなサービスは、日本の成功例をそのまま輸出してもほぼうまくいかないと考えています。

一方、当社が提供しているのは書類を読み取ってデジタル化するAI-OCRです。このニーズや仕様は万国共通であり、そのままの機能を輸出しても世界展開できるものだと確信しています。

タイには多くの日系企業が進出していますが、実際にローカルまで入り込めている企業は多くはありません。言い換えれば、現地の日系企業と取引するだけでもビジネスとして成立するポテンシャルをタイという国は秘めているのです。

ただ、我々のミッションにあるのは「世界中のあらゆる社会課題の解決」という視点です。ローカル企業にもちゃんと刺さるプロダクトであるべきだと思っております。

これからもパートナー様と協働しながらプロダクトの価値を高めていくことで、将来的にはパートナー様・エンドユーザー様だけで自走できるプロダクトの提供を目指しています。誰もが直感的に使えて、サポート不要という領域までプロダクトを昇華させていきたいですね。
 

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