特集|日本とタイのビジネスの発展を支える 日・タイ経済協力協会とは

【2020年7月20日】公開

東南アジアのなかでも、観光立国としての印象が強いタイ。
日本でも旅行サイトで「人気旅行先」の上位を占め、世界的にもタイを訪れる外国人観光客の数は年々増え続けています。(2019年時点で3,980万人)

国連世界観光機関(UNWTO)が発表した「国際観光客到着数」トップ10のデータでは、世界上位10ヶ国のなかで9位(2018年集計時点)で、東南アジア地域では唯一のランクインを果たしています。 

このように、世界からも注目されているタイですが、ビジネス面では日系企業も多く進出しており、その数は5,444社(タイ日系企業進出動向調査2017年)とされています。
タイの主要産業のひとつは製造業で、そのなかでもGDPに占める割合として高いのが自動車産業(7%)ゴム・プラスティック産業(7%)加工・機械設備産業(6%)石油関連産業(6%)などとなります。 

今回は、日タイビジネスの友好関係を保つ取り組みを行っている 日・タイ経済協力協会(JTECS)の活動に注目。
同協会の専務理事を務めている下大澤 祐二 氏へのインタビューをもとに、日タイのビジネス構築を最適化していくためのヒントを探っていきます。 
 

日・タイ経済協力協会(JTECS)概要 

一般社団法人  日・タイ経済協力協会(以下、JTECS)は、1972年7月に設立された団体で「タイ及びその近隣国との経済協力を推進し、経済・技術の発展に貢献するとともに、日本との友好増進に寄与する」ことを目的としています。

設立当初より、日本とタイの架け橋として相互理解の促進はもちろん、産業構造上、補完関係にあるタイの経済発展に重要な科学技術知識の普及活動や、そのための人材育成に取り組んでいます。
主な事業は 、タイ・バンコクにある泰日経済技術振興協会(以下、TPA)および泰日工業大学(以下、TNI)の活動支援と、会員向けサービスになります。

TPA/TNIは、いずれもタイ人の元日本留学生と元研修生によって設立されたユニークな組織です。
TPAの活動内容は、タイ国内での社会人教育事業が中心となり、主に、日本の技術書や日本語教材等の翻訳出版・販売、工場等の計測機器の校正、語学学校の運営、研修セミナーを行ったりするなど、日系企業も含めたタイ産業界の発展に大きく寄与しています。

TNIは、「日本のものづくり」を理解した上で、日本の製造メーカーで活躍できる人材を育てるために設立された専門大学として、実践的なカリキュラムを組んでタイ現地の学生たちへの教育活動を行っています。
(JTECS設立当時の経済協力モデル) 
注)ASCA : 財団法人アジア学生文化協会  AOTS:財団法人海外技術者研修協会 

下大澤氏によると、JTECSが設立された1970年代初頭は、タイを始めとする東南アジアにおける日本経済のプレゼンスが急速に高まり、タイ国内で日貨排斥運動が盛んになり、日タイ関係が悪化していた時期だったといいます。

そうした状況を良くするために、当時の通産省と経団連等の全面協力を得て、「人づくり」というコンセプトのもと、 JTECSを設立。
その後すぐにタイ側で設立されたTPAを通じて、「当時のひも付きといわれた経済協力とは異なり、本当にタイのためになる仕事をという新経済協力モデルがスタートしました」と下大澤氏。 


一般社団法人 日タイ経済協力協会/専務理事・下大澤 祐二 氏  

以降、JTECSでは、アジア文化会館(東京都文京区)にタイ人の研修生や留学生などを受け入れ、日本の産業技術を学べる人材育成の機会の提供を行っています。 
 

日・タイ経済協力協会(JTECS)の具体的な取り組み 

JTECSが行っている事業のなかで注目したいのが、前述したTPAとの共同事業である「タイへの技術普及、支援業務」です。

例えば、タイの製造メーカー(自動車、鉄鋼、石油化学分野等)の技術者や管理者を日本に招聘し、実際に日本の製造メーカー数社を訪問し、技術や実践的な経営管理の事例を学んでもらうことで、日本の産業技術への理解を深めてもらう活動を支援しています。
さらに、タイで販路開拓を検討している日系企業に向けて、タイローカル企業とのビジネス交流会も開催。タイと日本、双方のビジネスメリットを重視した活動を行っているのです。 


日本とタイ企業のビジネス交流会の様子(写真提供:一般社団法人 日・タイ経済協力協会) 

こうした取り組みはタイの持続可能な産業発展を目的としており、JTECSはTPAと連携して、日本人の専門家たちをタイ現地へ派遣し、タイのローカル部品サプライヤーなどへ向けたセミナーも実施。
タイ現地で人材を育成し、タイローカルの社員たちへ直接知識を伝えることで、新しい知識を実践に移しやすい仕組みづくりを行っています。 
また、専門家の派遣だけではなく、翻訳・書籍化も行っており、書籍にとして蓄積された知識をタイ現地へ広める活動も行っています。 

JTECSの注目すべきもう一つの活動は、先に紹介した泰日工業大学(TNI)との取り組みです。 

日系企業が多く存在するタイでは、日本人と共に働ける人材の育成が望まれており、なかでも製造業分野の需要は高いため、TNIでは「日本のものづくり」を理解した上で、即戦力として企業で活躍できる人材を育てることが最大の目的となっています。 

このカリキュラムで重要なのは、「実践的な日本のものづくりを体感・習得する」こと。
TNIの講師陣による実践教育が行われ、製造業で最も重要な「品質管理」はもちろん、効率的な生産管理、新製品サービス開発、さらにはビジネスモデルの確立方法まで、総合的な知識を身につけられる内容となっています。 


泰日工業大学・キャンパスの様子 

こうした取り組みを通して、日系企業で働くようになったタイ人技術者たちは、とても熱心に業務に取り組むため、日本的な仕事の進め方にもよく馴染み活躍している、と下大澤氏はいいます。 

このように、地道な活動を通してタイと日本をつないできたJTECSの取り組みは、タイへ進出した企業のビジネスを支えている以上に、これからタイへ進出する日本企業にとっても、重要な活動なのではないでしょうか。

タイへ進出しても、現地のスタッフとのコミュニケーションの難しさや文化の違いでビジネスが上手くいかないケースもありますので、タイと日本、お互いの理解を深めた上で共に働いていける環境をつくることは、必要不可欠といえます。
 

海外進出・ビジネス展開で大切なこととは 

今回、JTECSの活動に関して深掘りしてみえてきたことは、企業が海外進出し、現地に根付いていくプロセスのなかで重要なのは「教育」そして、知識を伝えるだけではなく「実践」「体験」を通して身につけることで日本の企業文化や技術を理解してもらい、ビジネス関係を構築することの大切さでした。

タイ現地従業員への研修や、技術書を通した知識の伝授だけでなく、「専門大学」を設けることで、未来の働き手を育てていくシステムは、日本企業によるタイビジネス進出を成功させ、根付かせていくための一つ有効な支援手段なのではないでしょうか。


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