東南アジアの中でも毎年およそ6%のGDP成長率を更新するベトナムは日系企業からの注目が年々高まり、政治、経済、文化、人を通して重要な関係性を築いている国のひとつです。
2023年9月21日に日本とベトナムは外交関係樹立50周年を迎えるなど、これからも輸出入でさらに強い関係が築かれることが大いに期待されています。
2019年7月現在、日本からベトナムへの進出企業数は1,848社※1。
キヤノン、パナソニック、ホンダ、トヨタ、ヤマハ、富士通、ブリヂストン、富士ゼロックス、ロート製薬、湘南美容外科、資生堂、花王、イオン、ファミリーマートなど幅広いカテゴリの日系企業が進出しています。
日系企業のベトナム進出は、1990年から始まりました。
このきっかけとなったのはドイモイ政策です。
政策のひとつに「国際協力への参加を進める」というものがありました。
それまで社会主義国家として政府主導の計画経済を貫いてきたベトナムも、経済成長が周辺国とくらべて遅れていることに危機感をもち、社会主義体制を取りながらも、市場経済を導入するという決断をしたという背景があります。
進出が可能になった1990年から、大手商社の日商岩井(現・双日)と住友商事の2社による日系企業向けの工業団地建設が始まり、大手製造業の進出を後押ししました。2000年以降になると、製造業と結びつきが強い保険・金融・ICT企業などのサービス業の進出が始まり、近年では中小規模の製造業やサービス業が進出しています。
また、オフショアの開発拠点としてもベトナムは大きな役割を果たしています。
日本のオンラインサービスのシステム構築をベトナムで行っていたり、開発拠点をベトナムに構えたりする企業も増えています。
流通大手のイオンやファミリーマートも進出しており、2018年には高島屋がホーチミンの中心部にオープンしました。
ただ、日系進出企業の業種の比率をみると、企業数ベースで47%が製造業・工場となっており、依然として大きなウェイトを占めています。
日系企業がベトナムへ進出してきた理由のひとつに、中国の人件費高騰が予想されていたことがあげられます。
2010年から2018年の8年間で、中国の最低賃金は2倍にまで上昇しました※2。
一方、ベトナムの製造業・作業員の基本給(月額)は227ドルで、中国の493ドルの半分以下です。
しかし、ベトナムでも2013年に最低賃金が大幅に引き上げられました。
それ以来、2019年現在まで6%前後の増加率で最低賃金の上昇が続いています※3。
そのため、2018年におこなわれた日系企業への調査では、「ベトナムへの投資リスク・経営上の問題点」という質問に対し、「人件費の高騰」と答えた企業がもっとも多く、一番の懸念材料になっています※4。
経済成長が著しいということは、同時に人件費も毎年上がっていくことを示唆しており、そのような急激な変化も考慮したうえで、進出を検討することが重要です。
海外でのビジネスを円滑に進めるには、何よりもまず、現地のニーズや状況を把握するための情報収集から始めるのが基本です。
ここでは代表的な情報源をご紹介します。
① JCCH ホーチミン日本商工会議所(https://jcchvn.org/) / JCCID ダナン日本商工会議所( https://poste-vn.com/jccid-danang.html )へ登録
商工会議所の会員になると、所属する業種やエリアによって部会が定められ、同業種あるいは同エリア(工業団地)の企業とのつながりができやすくなります。
また、会員名簿にいつでもログインすることができ、自社のサービス内容や、営業内容を配信して、PRの機会を得ることができます。
② ベトナムのニュースを配信しているベトジョー(https://www.viet-jo.com/)
ベトナムで働いている人は必ず知っているベトジョー。
ベトナムのニュースを毎日配信しているニュースサイトです。
サイト上には純広告枠が設けられており、ベトナム在住の日本人向けに情報を発信したい企業が活用しています。
③ ベトナムスケッチ(http://www.vietnam-sketch.com/)
ベトナムの現地情報を発信しているウェブマガジン。
日本人向けのフリーペーパーも発行しており、日本食レストランやホテルに置いてあるため、多くの日本人が目にする雑誌です。
雑誌及びウェブマガジンに設けられた広告枠で自社のアピールをすることが可能です。
④Vetter (https://wkvetter.com/)
Sunrise Advertising Solutions Co Ltdが運営する現地在住の日本人ビジネスマン向けのメディア。ビジネスから飲食店の情報まで、幅広く扱っています。
⑤VIETEXPERT (https://vietexpert.jp/)
Giai Breakthrough Co Ltdが運営する現地在住の日本人ビジネスマン向けのウェブサイト。メディアとしてコンテンツの発信だけでなく、進出日系企業同士のマッチング機能も有しているため、進出に関する相談先を探す際にも活用できます。
⑥ Fact-Dep (https://fact-depot.com/)
現地企業サプライヤーと製造企業をつなぐプラットフォームです。
現地企業から調達したい製品や部品をみつけて、一括調達できるというマッチングサービスです。
たとえば、現地に販路がない企業でも、輸入代理店を見つけてこのサイト上で販売することも可能です。
本格的な進出前に、ニーズの調査目的で活用することも可能です。
⑦ Vnexpress(https://vnexpress.net/)
ベトナムで最も有名なニュースメディアでビジネス情報を幅広く扱っているメディアです。
一般的にホワイトカラー層はこのサイトを閲覧しているため、vnexpressに情報を掲載するだけでベトナムのビジネスパーソンにリーチできる重要な媒体です。
TPPや日本・ベトナム経済連携協定を機に、今後もベトナム進出のチャンスが増えることが期待されます。
しかし、ベトナムへ進出している日系企業において、「原材料・部品の調達先」のうち、「現地」の割合は2018年で36.3%※4にとどまっています。
徐々に現地化が進んでいるものの、まだ現地調達が十分とはいえないのが実情です。
今後は、ベトナムに進出しているアジア系の外資系企業なども含めて、さらに現地企業との取引を増やし、現地調達比率をあげて、効率の良い事業運営をはかっていくことでしょう。
また、これまでは、日系企業に売上高に占める輸出額の割合をたずねると、100%と回答する企業が多くありました。
しかし、徐々に輸出の占める割合は下がる傾向にあります。特に注目すべきは、製造業でもベトナム国内での販売が増えているという点です。
これは、ベトナム国内向けの需要が期待できることを示しています。
ベトナムでは急速な経済成長とともに、今後も、製造業、非製造業ともに、内需も含めたビジネスチャンスが拡大することが予測されます。
ぜひ、ベトナムの情報をいち早くキャッチして、現地へ進出するタイミングを逃さないようにしていただければと思います。
参照:
※1:外務省 - 海外進出日系企業拠点数調査
※2: 三菱UFJ銀行 - 中国主要都市の最低賃金推移(※2019年9月更新)
※3: JETRO - 2019年の最低賃金決まる、平均引き上げ率5.3%
※4: JETRO - ベトナム進出日系企業の7割が事業拡大方針、内需獲得に向けた動きも