タイ人の英語は通用しない!?Edtechスタートアップが変える「タイの英語学習」 | ピリピリ 東南アジア進出をサポート!
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タイ人の英語は通用しない!?Edtechスタートアップが変える「タイの英語学習」

東南アジアのBtoBマーケティング最前線をお届けする「ピリピリ」では、タイで活躍する現地スタートアップの今を特集する企画をスタートしました。

初回はEdTech分野です。タイで英語と中国語の2カ国語を習得できるオンライン学習プラットフォームを展開されている「Globish
なぜ、オンライン学習プラットフォームを展開されているのか、タイの方々の英語教育の状況などをお伺いいたしました。

*本記事は、Bigbeat Bangkokにて開催しているイベント「ICHI Talk」内で話された内容を意訳・再編集したものになります。タイ語でのイベントレポートはこちら
 


 

タイ人の英語は通用しない!?国際社会でタイ人が活躍するための課題

タイでは2011年より英語教育が義務化され、小学校の時から第2外国語として学習することになりました。
英語が話すことができるタイ人が増えている一方で、2021年の英語能力指数(EF EPI)によると112か国中100位(ベトナムは66位)、アジアでの順位でも24か国中22位(ベトナムは12位)と未だに低いランキングとなっています。


EF EPI(English Proficiency Index)
引用:https://www.efjapan.co.jp/epi/regions/asia/thailand/

タイ語自体が難しく英語の習得に時間がかかる、タイの公用語ではまだ英語は採用されていない、家庭内の経済状況によるなどいろいろな要因があるようですが、国際社会においてタイ語のみで世界水準の高い技術や知識を習得することができないため、英語力を高めることがもはや必要不可欠となっています。

そんな状況下で、2014年よりタイにてオンライン学習プラットフォームを始めた Globishの共同創設者であるJuice Chuencheewan Wongsaereeさん。事業を始めようと思ったきっかけは、学生時代の原体験からでした。

Juiceさん:
個人的には、私は英語を学ぶのが好きな人間でした。大学に入学後、国際ビジネスを学びましたが、思ったほど英語でのコミュニケーションが取れませんでした。そこで改めて英語を勉強しようとするも、大きな教育機関ではコストは非常に高く、数十万かかるので、多くのタイのビジネスパーソンは高額な授業料を支払うことができません。これは、私たちタイ人がいつも抱えている問題です。

これを解決したいと思っていた矢先、18歳のときに世界最大の学生団体の会長のTroy  Takarn Ananthothaiという共同創設者に出会いました。当時、外国人のボランティアをタイの農村部に行かせて英語の教育を行なっていたのですが、外国人のボランティアに比べて、タイの英語教師は英語が話せていないということに気づきました。
ボランティアの期間が終わった後、この問題をどう解決するかを考えていた時、日本でオンライン学習は非常に普及しているということを知りました。
その話をしていく中で、タイでもその手法が通用するのではないかという結論に至り、Troyとこのビジネスをはじめました。それがGlobishの出発点です。

 

タイ人に受け入れられる「Globish」への葛藤

学生時代から試行錯誤しつつ、大学卒業後にGlobishを創業。創業したはいいものの、資金繰りやサービス開発など右も左も分からないながら進めてきていた「Globish」。彼らがどんな方々に受け入れられようとしているのか、を聞きました。

Juice:
私たちは、「収入が少なく、高額な英語の授業料を払う余裕がない人たちを救いたい!」という思いでスタートしました。
ですから、当時のコンセプトは「タイで一番安く学べる英語学習」でした。


Globish Topページ

価格は25分あたり80バーツ(日本円で約300円程度*2022年4月現在)で提供していました。そのため、英語を教える講師の方の給料も安かったです。
サービスを展開し始めると外資の競合が参入し苦戦を強いられたため、そもそものコンセプトを見直す必要が出てきました。
世界水準で高い技術や知識を得られるタイ人を増やすためには、サービス提供側である講師が安い給料のままだとサービスの質に関わるかもしれないと気づきました。
そこで、今度は「タイで最高の英語学習」に変更し事業計画も再度作り直しました。

サービス提供の対象も25歳の若手就労者から40歳以上の幹部レベルまでとし、特に仕事で英語を使わざるを得ないという方々に焦点を当てました。
具体的には、英語を上達させてサービスレベルを向上させたいファーストフードレストランの従業員の方々を最初のターゲットとしました。
その対象にインタビューをしたところ、必要に迫られて英語を学ぶ必要があるという気持ちがヒアリングできました。また、彼らはシフト制で働く必要があり、教育機関に出向いて英語を勉強する時間が取れないという点も見つけることができました。そこに彼らの課題があったのです。ただ単純に英語を安く学べますというメッセージではなく、彼らがなぜ英語を学びたいのかを考え提案していくことが重要だ、ということに気づくことができました。

事業計画を素早く変更しながら、自身が成し遂げたい世界へ突き進んできているJuiceさん。
資金調達の観点で投資家への理解や資金調達までの道のりもお話しいただきました。

Juice:
まだ右も左も分からない状態で、創業後すぐにピッチングイベントに参加しました。新卒の時ですね。その時に投資家からいくら投資してほしいのか、お金をどう使うのかなどを尋ねられました。私自身、まだ詳しく定まっていなかったため、計画を財務観点から立てることからスタートでした。メンターとなる投資家にも出会いアドバイスを受けました。
それは、「実現したいことが社会貢献には最適だが、長く続かない可能性があるため、スタートアップ としてビジネスに変えてください」ということでした。
その観点で、改めてビジネスとして計画をたて、お金の調達と運用計画を作り、タイで著名な投資家の方々へのプレゼンテーションをする機会に招待され、実施しました。
結果として、それが最初の投資の瞬間です。

現在はビジネスの成長性や収益性を複数年計画で立てプレゼンをするというフェーズになりました。
 

コロナ禍で増えたオンライン学習。「Globish」が選ばれるための変化とは

2020年より広がったCOVID-19の影響で、オンラインの学習が増え、同様のオンライン学習ビジネスが増加しているタイの教育市場。
そんな中で「Globish」はこの機会をどのように捉え、今後どのようにサービスを改良していくのかをお聞きしました。

Juice:
オンラインで学習する機会も増え、オフラインで提供していた企業がオンラインに参入するなど、競合も増加傾向にありますが、私たちの根本は変えていません。
対象者側の状況が大きく変化したわけですから、それを「改めて理解する」ことが大切です。
例えば、人々が在宅になっているわけですから、24時間いつでも英語を学べる環境を作る必要があります。そして、すでに私たちはプラットフォームとして構築しています。マンツーマン・小グループ・大グループなどの授業形態、学生向けのコンテンツなども充実しているため、非常に学びやすい環境は整えられています。



Globish サービスページ

ただこのまま何もしないというわけではなく、継続的に改良をしていきたいと思います。
在宅が増えたため、オンライン学習にうんざりをしているという悪影響も少なからずありますのでここも適応していく必要があり、プラットフォームとして改善を図っていきます。

そのほかで言えば、例えば、メタバースというキーワードも出てきました。英語学習をメタバースという空間で提供するとどうなるのか、どんな仕組みがいるのかなども研究対象です。
メタバースで提供することによって、オンラインでの英語の学習効率も上がるかもしれないという期待をしています。

新たなトレンドのキャッチアップにも余念がないJuiceさん。オンライン学習が増えていく中で新たなテクノロジーとの調和をどのように作っていくのかは非常に興味深い点です。
最後に「Globish」の今後の展開をお聞きしました。

Juice:
短期的には、一般の方々の英語が生活の必須スキルとして通用するレベルに押し上げていきたいです。これは、小学校の教育レベルからも改善を図っていく必要があると思いますので、学校への展開も視野に入れています。そして、長期的には、誰もが無料で勉強できるようになってほしいですね。
英語を学ぶハードルを下げ、自分で成長したい人たちが気軽に英語を学び、仕事を見つけられるような環境を提供していきたいと思います。

取材を終えて、Juiceさんの言葉には熱と力強さがあり、学校教育の変革や英語習得に向けたハードルの高さとそこへの挑戦に向けた高い意欲を感じました。

日本人と同様に、自国の言葉を非常に大切にすると言われるタイ人の英語習得。
まだまだこれからではありながら、こうしたスタートアップ が勢いよく展開されているタイの教育市場にこれからも目が離せません。

 

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